岐阜県美濃加茂市のプール水浄化設備導入をめぐる贈収賄事件で、事前収賄容疑などで逮捕された市長の藤井浩人容疑者(29)が、贈賄側の愛知県の業者に「(選挙のための)金が無い」と漏らしていたことが、捜査関係者などへの取材で分かった。愛知、岐阜両県警は、業者が藤井容疑者の選挙資金不足に付け込み、設備導入で便宜を図ってもらおうと賄賂を贈ったとみている。
贈賄容疑などで逮捕されたのは、名古屋市北区の地下水供給設備販売会社「水源」社長の中林正善容疑者(43)=愛知県春日井市。
美濃加茂市では、渡辺直由前市長が昨年4月19日、病気を理由に辞意を表明。藤井容疑者はその直後、同年6月の市長選出馬を決意したとされる。捜査関係者などによると、藤井容疑者はそのころ、中林容疑者に「金が無い」と漏らしていた。藤井容疑者は、前市長の後援会の支援を受けたものの、自分の組織的な支持基盤はなく、市長選立候補に必要な供託金100万円など、必要な選挙資金集めに困っていたとみられる。
藤井市長を支援する50代の男性は「(藤井市長は)政治活動の資金は、いつも『厳しい』と言っていた。借金があるとも聞いた」と話す。
中林容疑者は昨年4月下旬、知人男性から数十万円を借りたほか、市長選告示前の同年5月ごろにも周囲に「(藤井容疑者を)応援してるので、選挙で金がいる」と話し、別の知人男性から数十万円単位で複数回、金を借りていた。藤井容疑者の選挙支援のためとみられ、同年5月7日に藤井容疑者が出馬表明した後は、経営する会社の取引先ともあまり連絡を取らないほど、選挙応援に力を入れていたという。
また、藤井、中林両容疑者が、美濃加茂市内の中学校に設置した浄化設備をモデルケースに、全国の自治体に設備導入を売り込む計画を立てていたことも分かった。中林容疑者の会社が全国の自治体に営業を掛け、美濃加茂市が問い合わせ窓口を担う予定だったという。
中林容疑者が全国の100以上の自治体に美濃加茂市での実証実験を紹介。元従業員らによると、反響メールをプリントし「(藤井市長に)これを見せる」と意気込んでいた。
両県警によると、藤井容疑者は昨年4月上旬と下旬、市への働き掛けと導入を進める約束をした見返りとして、美濃加茂市と名古屋市の飲食店で、中林容疑者からそれぞれ10万円と20万円を受け取ったとされる。藤井容疑者は「事実無根」と否認。中林容疑者は容疑を認めている。