春先だけでなく、年間を通して花粉症が発症する可能性のあることは、広く認知されてきた。エステーでは、同社のオフィシャルサイトにある「空気チャンネル」で『凶悪化しやすい秋花粉に注意すべきこれだけの理由』を公開しているので紹介したい。また、埼玉大学の王青躍准教授は、さらに「秋から冬にかけて、花粉のアレルゲンが凶悪化する条件がそろっている」と指摘する。
■スギ花粉症患者は高い確率で秋も花粉症になる?
花粉症の原因は、スギだけではない。スギやヒノキなど樹木の花粉のほか、イネ、ヨモギ、ブタクサなど草の花粉もアレルギーを引き起こす。スギ花粉症患者のうち、およそ70%の人がヒノキ花粉でもアレルギー症状を起こすことがわかっている。スギとヒノキの花粉アレルゲンとなるタンパク質の構造がよく似ているからだ(共通抗原性)。同じ理由で、スギ花粉症患者のうち50%の人がイネやヨモギでも、同じく50%がブタクサ、オオブタクサでも発症する可能性があるという。さらに、スギ花粉症は春だけのものだと考えるのは大きな間違い。実は、スギ花粉は秋にも飛散する。2~3月に十分成長できなかった花粉が、雄花の中に残り、それらが「熟成」して秋にも飛ぶのだという。
自動車の排気ガスやPM2.5など大気汚染物質が花粉と結びつくと、花粉の粒子が壊れる。内部に隠れていたアレルゲン物質が外に放出され、人間が吸い込みやすくなる。また、アレルゲン物質も壊れて小さくなるため、人間の呼吸器系の奥に入り込みやすくなり、血液に入って花粉症を重傷化するという。
気温が下がると、化石燃料をたくさん使うので、その分大気汚染物質がたくさん発生する。さらに11~12月は、大陸から飛来するPM2.5も非常に多くなる。PM2.5の数値だけ見れば、春先や真夏にも上昇するが、問題はその中身で、化石燃焼から排出された黒い煙の中には、人体に悪影響の大きい重金属や芳香族炭化水素などが含まれる。つまり、花粉のアレルゲンを凶悪化させる物質でもあるのだ。
おまけに、この季節は大気が安定し「逆転層」という特殊な気象条件になることがある。通常は、暖かい空気の上に冷たい空気が流れているが、その上下が逆転した状態。冷たい空気の上に、暖かい空気がふとんのようにかぶさっていく。空気が入れ替わらず、地表付近に汚れた空気がたまり、花粉症を悪化させることが懸念されている。