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スタンフォード "ザ・ディッシュ”を歩く〜シリコンバレー

2018-12-14 | アメリカ

大久野島で散々うさぎの話をしたので、今日は思い切って気分を変えて
リスと遭遇したアメリカの思い出話をします。

え?全く気分が変わっとらんって?


リスといえば当ブログ的にはもうおなじみ、シリコンバレーの
スタンフォード大学近くにあるスタンフォード・ディッシュです。

正式名称は「The  Dish」。

スタンフォード大学横の小高い丘(標高46m)で、
1961年にスタンフォード大学のリサーチセンターが開設しました。

Dishとはレイディオ・テレスコープ、日本語で言うところの電波望遠鏡のアンテナを
英語ではお皿に見立ててこのように称するのです。

当時4億5千万の費用をかけて作られたものですが、この金額は
アメリカ空軍の出資によってまかなわれたということです。

元々の設置目的は大気圏の化学組成を調査するというものでしたが、
のちにザ・ディッシュは宇宙ロケットや衛星などとの通信用になりました。

そして現在も米国政府の管理下で学術や研究の目的のために使用されています。

NASAの衛星と通信を行っていた時はおそらく非公開だったと思うのですが、
現在、ディッシュのあるこの一帯には3.5マイル(5.6km )のトレイルがあります。

小道以外には立ち入ることもできませんし、バーベキューもピクニックも禁止、
犬の散歩も厳禁ですが、毎日1500〜1800人は訪れる人気のコースとなっています。

さて、その1500人の一人となるべくやってきたディッシュ入り口。

電柱には、いなくなった黒猫を見つけてくれた方には
賞金を出しますという飼い主の切実な訴えが貼られていました。

7月22日からいなくなってこの時すでに2ヶ月経過しています。
どこかの家で保護されているといいのですが・・・。

午後の予定に備えて歩き出したのは、8時ちょうどぐらいでした。

シリコンバレーは9月下旬でも昼間は猛烈に暑いので、
歩くのは朝方がいいと思うのですが、やはり夏休みが終わったので
よそから来ている人が大幅に減ったということなのでしょう。

それと、残念だったのはリスがあまりいなかったことです。

何年か前に初めてきた時には足元がリスだらけで感動したものですが、
今回門の周りには1匹もおらず、延々と歩いていってやっと一匹目に遭遇しました。

10月近くなってすでに冬眠期にでも入ったのかな?と思ったのですが、
後でしらべるとカリフォルニアジリスは、冬がそう寒くない地域では
冬眠せず結構一年中活発に活動しているということでした。

単にまだ彼らの食事時間には早かったのかもしれません。

「ディッシュ」が近づいてきました。

ちなみにこの中は公園ではないので、設置されているのは道だけ。
ピクニックテーブルもベンチも、もちろんトイレもありません。

トイレといえばこの付近は日本のようにコンビニもレストランもない住宅街で、
もしその必要性にかられたらみんなどうしているんだろうと心配になります。

しかしディッシュ側は研究施設を公開してやっているだけでそんなもん知らんがな、
という態度なので、今後もそういう設備の設置は行われないでしょう。

ディッシュが近づいてきて初めて2匹目のリス発見。
本当に今年は変な感じです。

給水設備なのかわかりませんが、白い土管に
ちょこんと後ろ姿が見えました。

手前にいたリスはこちらを見ると向きを変え・・・、

白い土管に向かって走っていきます。

友達のいる土管の淵に駆け上りました。

気のせいかこちらを見ているような・・・。
この辺りのリスはとにかく警戒心が強く、カメラを向けるだけで
何事かを察知して逃げてしまいます。

上空からは定期的に肉食の猛禽類が狙っていますし、
アライグマ、キツネ、イタチ、蛇などに捕食されるので、
敵に囲まれて生活しているとこうなるでしょう。

尻尾を友達のとくっつけると安心感があるのかも・・。

標高46mの円形コースは、右左どちらからいっても必ず一回か二回、
「心臓破りの坂」が待ち受けています。

その一つがこれ。
とはいえ、普通に歩いているぶんには心臓が破れることもありません。

何度もここにきていますが、霧がかかっているのは初めて見ました。

霧は大抵の山より低いところに筋のように立ちこめることもあります。

というわけで、ディッシュの前を通り過ぎるところまでやってきました。
ここでだいたいコースの半分くらいです。

ここから一旦下り、また坂を登っていきますが、この日は
コースにも霧が立ち込めていました。
8月に歩くのとはやはり気温もかなり違います。

ところで、この直後、向かいからやってきたおばあちゃま二人のうち
一人がわたしを呼び止め、

「ちょっと、あなたそんな大きなレンズ持ってるんだからあれ撮ってみて」

とおばちゃん特有の唐突さで命令してきました。

言われるがまま撮った電信柱の上。
肉眼では風速計や風向計と見分けがつかなかったのですが、
シャッターを押して、モニターを彼女に見せると、

「あら、そんなに拡大できるのね。
じゃ一番大きくして。
いいえ、それじゃなくてもっと右を見せてちょうだい」

画面に鷹が写っていることを確認した彼女は、連れに

「だからいったでしょ?あれは鳥だって」

と嬉しそうに宣言しました。

「もう一回ちゃんと撮ってみます。
それにしても良い目してらっしゃいますね」

と振り返って声をかけると、

「そうなのよー」

本当に肉眼ではわたしの2.0の視力でも見えなかったんですよ?

杭ごとに1匹ずつリスが乗っていたこともあるこの一帯にも
全くその姿はなく、ようやく見つけた1匹。
むしろこんな時にこんなところに一匹でいるリスって一体?

地面に平行に伸びた木の幹で腕立てのようなエクササイズを
実行している女の人。

先ほども言ったようにコースから逸れることは禁じられていますが、
彼女はためらうことなくスタスタと脇道に入っていったので驚きました。

ところでうちの近所の公園で毎朝木の枝にぶら下がってエクササイズしている
おばさんがいるんですが、いつか枝が折れるんじゃないかと思って見てます。

公園もあるんだからそこの鉄棒にぶら下がれよ。

朽ち木と電信柱とディッシュ。
基本ディッシュの中は道路以外いっさい手をつけず自然のままです。

今回、そこここに巣を張っていたのがクモ。
レース編みのような綺麗な巣に思わず目を奪われました。

よく見ると蜘蛛の糸はくまなく朝露がビーズのように連なって、
まるで精緻な首飾りのようです。

水色の軀をしたクモの美しさとともに自然の芸術を見た気がしました。

ここまで来るとあとは下りだけです。
スタンフォード大学のフーバータワーが右手に見えています。

かつてのリス地帯には山鳩が餌を探して歩いているだけ。

と思ったら、最後にやっと見つけた呑気なリスさん。
猛烈にお食事中です。

片手で草の茎を抑えてもう片方の手で実を刮げて口に入れています。

この麦のような草の実は彼らの大好物なのでしょう。
カリフォルニアジリスも他の齧歯類と同じく、
ほほ袋にできるだけ溜め込んで巣に持って帰り貯蔵する性質を持ちます。

両手で一生懸命口に食べ物を入れる様子はいつまで見ていても飽きません。

出口まであと少しという時、目の前をリスが横切りました。

 

草地にたどり着いてホッと一息。

というわけで、ちょうど1時間半かけて門まで帰ってきました。

スタンフォード・ディッシュは9月から2月までは6時半にオープンし、
夜7時半に閉門します。
wikiによると冬場の閉門は以前は17時だったようですが、

「それでは仕事が終わってから運動できない!」

みたいなクレームが出たのかもしれません。

しかし、冬場、夜の7時にここに入るのはかなり勇気がいると思う・・・。

この写真にも「警告」としてマウンテンライオンが出ます、
というポスターがありますが、
これは正確にいうと、

「マウンテンライオンがどこかにいるはず

というお知らせなんだそうです。

実はここでマウンテンライオンが実際に目撃されたことは一度もなく、
2011年、マウンテンライオンが通った形跡が見られた
という程度のことだそうですから、たまたま迷い込んだ個体が
残した痕跡に過ぎないのかもしれないし、っていうか、
それは何か他の動物の間違いだったのでは?とも考えられます。

ちなみに、マウンテンライオンというと別種のようですが、
実はピューマのことです。

ピューマか・・・確かにピューマと出くわしたら怖いよね。

今年も一周走破(歩き、だけど)を果たした「ザ・ディッシュ」、
リスの姿もこの「草ソムリエ」みたいな子が見納めとなりました。

「うーん・・・陽を浴びた草の香り、コクのあるボディ、いい仕事してますねえ」


ちなみにカリフォルニアジリスの寿命は6年だそうです。
みなさん、また会いに来るからねー!

 

 

 



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2 Comments

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怖くないですか (Unknown)
2018-12-15 06:58:00
常に観光客がまわりにいるサンフランシスコのような場所ならそうでもないですが、ここはあまりまわりに人はいなさそうです。

縁起でもないですが、森?に引きずり込まれて、撃たれでもしたら、誰にも知られることはなさそうな気がします。

シリコンバレーと太平洋の間はずっとこんな感じの丘?山?が続き、歩けるように整備された道も多いのですが、一人で歩いたことはありません。怖いんです。

アメリカは銃器の携帯が許されているので、気を付けて下さい。縁起でもないことを済みません。
返信する
案外大丈夫です (エリス中尉)
2018-12-15 08:51:20
unknownさんもサンフランシスコの砲台を見に行かれたことがあるそうですが、
ディッシュはあそこよりもっと人の往来が多く、しかも研究施設なのでしょっちゅう車がパトロールしています。
しかも、トレイル沿いには全く茂みや森のような死角がなく、
この写真の時のように早朝でも1分以内に人が向かいからやって来ますし、
ゲートには監視カメラもあるので犯罪は起こりにくいかと思います。

ただ、この近くにある別の自然公園は平日ここほど人がおらず、
それこそ引き摺り込まれそうな森や足を踏み外したら崖を真っ逆さま、
(しかも一人だと誰にも気づいてもらえない)マウンテンライオンもおり〼、
という状態で、流石に怖かったのでそれっきり二度と行っていません。
アメリカに限らず、そこが「なんとなく危険」「なんとなく怖い」という感覚は
実際にその場にいるとそれこそ何となく感じられるもので、
そのカンをわたしは決して無視しないようにしています。

ここがスタンフォード敷地内でほとんど住民しかこないというのも
安心材料の一つかもしれません。
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