さて、われわれを乗せた掃海艇「いずしま」は無事出港し、
第1掃海隊司令がレクチャーを行う間、訓練海域に到達しました。
配られた資料によると、出港が0800、訓練開始は0900となっています。
「いずしま」に入るなり撮った士官室の写真。
相変わらず子供部屋みたいな木の温もりを感じさせるインテリアですね。
先般行われたレクチャーのなかで、第1掃海隊司令が、
「この『いずしま』は木でできているのですが、そのせいか、
鋼鉄の護衛艦などより乗っていて不思議と疲れないんですね」
と面白いことをおっしゃっていました。
地面の振動が伝わるのならともかく、海の上に漂っているのに
人間の体に伝わる感触が違うとは・・・・。
船体が小さいので動揺が大きく、それで「キツイ」という海自隊員の話を
前回取り上げたのですが、動揺のことがなければ、掃海隊員は
こちらの仕様の方が「体に優しい」「楽」と捉えているようなのです。
また、木のフネのメリットは意外なところにもあって、後で運用長とお話しした時に、
「冬でも護衛艦に比べると水が暖かいんですよ。
米を研ぐ時には本当に助かります」
という証言もいただきました。
手でお米を研ぐのは比較的少人数の掃海艇だけで、護衛艦であれば
米研ぎ器兼用炊飯器を使うのではないか?と思ったのですが、
この方が護衛艦の炊事作業をされていたころにはなかったのかもしれません。
さて、レクチャーの後、一同は甲板に上がって取材活動開始しました。
まず最初に行われるのは係維掃海です。
右舷に固定されている白い魚雷の形のものは係維具で、
オロペサ型経緯掃海具といいます。
これから行うのは図の上で説明されている掃海。
オロペサ型では白い部分は「掃海浮標」つまり「浮き」で、これを投下して引っ張り、
錘から出た糸の先にふわふわと浮かんでいる機雷の糸を、
掃海具に取り付けられたカッターで切断し、切り離します。
こうしてみると結構大きなものですね。
このオロペサ型掃海具は、「すがしま」型掃海艇のMSC-Mine Sweeper Coastal」
では両舷から展開されるのが常ですが、今回の訓練では、
「こうしています」ということを見せるためなので、
説明図のように二つの掃海具を引っ張るのではなく、「片方だけ」の曳航となります。
オレンジの旗など、必要な道具がハッチから出されています。
「いずしま」型は後甲板が大きくないのですが、こういう道具を
収納しておくスペースは階下にたっぷりと取られています。
水を湛えられたポリバケツがありますが、これは
使用したカッターなどを洗浄するためのものでしょうか。
ポリバケツの前には白いカッターが糸に結びつけられて置いてあります。
このカッターが、上の説明図における赤と緑の三角で表されるもので、
実は「経緯掃海具」とは、小さなこの部品を指して言います。
見ていたら「いずしま」のEOD、水中処分員がウェットスーツで登場。
背中には「爆発物処理班」と書いてあり、物々しさを感じます。
ピンクのメガホンの人は、笑顔でミカさんと歓談中。
掃海具のフロートには目立つ蛍光グリーンの旗が取り付けられました。
お気づきかと思いますが、いつの間にか作業する隊員が全員テッパチとカポックを付けています。
赤いヘルメットをつけるときは「危険作業」のときであると聞いたことがありますが、
機雷戦になると、途端に全員がこのスタイルに早変わりします。
「緑の旗オッケー!」(かどうかは知りませんが)
甲板で実際に作業する乗員だけでなく、このときには
艦橋で操舵する隊員たちも全員がテッパチとカポックを着用しています。
理由はもちろん・・・・万が一の爆発に備えてなんですね。
昔、朝鮮戦争の掃海のときに、爆破の瞬間艇内にいて殉職した隊員がいたことから、
(具体的にはどういう状況だったかというと、爆破そのものに巻き込まれたのではなく、
爆破の際室内の構造物に体を打ち付けられて、というものだったらしい)
作業に当たるときには、必ず艦橋以外は外に出ることになっているそうです。
フロートは後甲板中央に位置するワイヤリールに係留し曳航されます。
ワイヤの繰り出しチェック中?
ちなみに、このデッキには報道陣のカメラがずらっと並んで撮っていたので、
わたしは彼らの後ろからカメラを出して撮りあとでトリミングしました。
報道陣の後ろには第1掃海隊司令が立って説明をしてくれています。
司令が切断器の説明をすると、下では今から付けるカッターを持ち上げ・・、
わかりやすいようにこちらに向けて見せてくれました。
緑の部分はどうやら「羽」に過ぎず、機雷の糸をカットするのは
ちょうど隊員が右手で抑えている部分の「刃」ではないかと思われますが、
それにしてもこんなニッチな部分で糸をうまく切ることができるのでしょうか。
カッターの深さを沈降器で安定させているとはいえ、
うまくワイヤだけを切るのには相当な熟練の技術を要するのではないかと思うのですが。
さて、作業の準備が整ったところで、作業に当たる隊員が集まってきました。
もう一度報道陣に向けてカッターを見せてくれました。
ん?なんかさっきのカッターと大きさが違うぞ。
説明が聞こえなかったのでこの事情は分からず(T_T)
ちゃんと置く場所が決まっていて、決して甲板に転がしっぱなしにはしません。
こういうものも紐が結び付けられ、固定がされています。
掃海長の作業指示を受けるために全員がこうやって整列する模様。
今この写真に写っているのは17名ですから、写っていない人数も含め
「いずしま」の乗員の半数がこの作業に当たるということになります。
掃海長の話が終わり、いよいよ作業開始。
皆が持ち場に向かいます。
さて、そこで船尾の「お立ち台」みたいなところに立ったピンクのメガホンの人。
おそらくここは全体の作業進行を見張る役目の人が立つのだと思いますが、
後で聞いたところ、この隊員さんは別のフネ(たしか掃海母艦)への
転勤が決まっていて、最後の訓練となるので「立たせてもらった」そうです。
掃海艇最後の訓練になる者にちょっとした花を持たせるという配慮だったのでしょうか。
小さな組織である掃海艇ならではの人間らしい「情実」采配、
さすがは「一家」を標榜する家庭的な職場だけのことはあります。
さて、いよいよ掃海浮標が海面に降ろされます。
フロートを降ろす前に曳航するワイヤーをなんかしています。
どこから出してきたのか、フロートを押すための”さすまた”登場。
このさすまたについて、とりあえずぐぐってみたところ、世のなかには
「さすまた専門店」なるものが存在していましたorz
HPのポスターが実に斬新だ・・・(汗)
「さすまた」を漢字で書くとなんと「刺股」。
なんとも禍々しい漢字を書くものだと思いますが、これ武器なんですね。
「できるだけ大勢(の人数)で行ってください」って、ということは
大勢のためさすまたを備えておけ(どこに?)とでもいうのか・・・。
それはともかく、さすまた専門店で買ったのかどうかは知りませんが、
掃海艇にはさすまたが装備してあるということだ。_φ( ̄ー ̄ )
ところで、わたしたちがこの光景を見ていてあっとおどろいたのは、
画面左下ですよ。
いつの間にか、おるでー!亀爺が^^
「うーん・・・・相変わらずですなあ」
とりあえずこれもクレーンを使ったりする危険作業だと思うんですが、
我が道を行きまくるおじさんならば、
退かぬ!媚びぬ!省みぬ!
ってとこですか。
クレーンが掃海浮標を持ち上げ、固定具から浮き上がりました。
しかし、それにしても(怒)
どうしてたかがフロートをそんなに近くで撮らなくてはならんのかおじさん。
こうやって上階から取ればさすまたとか(笑)クレーンの全体像とか、
作業の様子がよくわかるというのに・・・・。
それにだね(怒)
万が一そのさすまたの人が出動する事態になった場合、あなたは
自分が邪魔になるかもしれないとちらりとでも考えたことはあるかね?
クレーン稼働の号令がかかり、ゆっくりと浮標は海上に出されていきます。
浮標だからきっと中身はなく、何トンもあるものではないでしょうが、
それでも慎重に動かすのは当然です。
わたしの位置からは海中に投下される瞬間は撮れませんでしたが、
とりあえず浮標は無事に海の上に放されました。
今日が最後の「お立ち台」勤務である隊員さん、かっこいいぞ。
フロートは船の後方に見えています。
あれあれ、船の真後ろを付いてきていた浮標がなぜか左舷側にやってきました。
それにしても、係維掃海というのは短いワイヤでおこなうものだな、
とこの写真を見て思った方はありませんか?
これは訓練を展示しているので特にそうだということでしたが、
レクチャーの時、わたしが質問の時間に
「係維掃海の時、掃海具の切り離す機雷と掃海艇の距離はどれくらいですか」
と聞いたところ、本番もそんなに距離のあるものではないそうです。
いかに掃海艇といえども近くでワイヤを切り離すのは危険ではないのか、
と思っての質問でしたが、どうやらその心配はなさそうで、
「切り離した後は銃などで掃討して処理します」
ということでした。
なんか変なものが浮標の前に浮かんできたぞ。
これは、この図で言うところのOtterだと思われます。
オッターって・・・カワウソですよね?
ミカさんの知り合いのEODの自衛官はスキンヘッドで
(別件でこのブログに偶然登場したこともあり)
「ウェットスーツを着ていたらまるでカワウソ」
だということですが、なんたる偶然か。
じゃなくて、こちらのカワウソはどうも役目的に
カッターを水中に安定させるためのものではないかな?
海自の用語集によるとこれは「展開器」だそうですが、この役目はいわば
水中凧であり、曳航にともなって生じる水流を受けて揚力を発生することで、
掃海索をノの字型(片舷展開の場合)あるいは八の字型(両舷展開の場合)
に、左右数百メートルにわたって展開するためのものだそうです。
さて、係維掃海具の引き上げが次いで行われたのですが、
そこでまたわたしは件のおじさんの行動にイラつかされることになります。
続く!
安全とかそういうのを考えないんですかね…万が一の時はただじゃすまないと思うのですが。下手したら国会での政争の具にされかねない気がします。
隣りに小学校の校長室にある不審者取り押さえよう用のような棒を持った人がいますが、変な行動に移ったらあれで取り押さえるとか。。。(なわけ無いですよね、柄も長すぎるし)。