九州大学山岳部 ブログ 「QUAC blog」

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2022年度 夏定着合宿 剱岳周辺

2022年10月11日 | 夏合宿

こんにちは。3年Sです。早いもので、夏合宿から2か月が経とうとしています。定着合宿分のブログ作成を仰せつかったため、頑張って思い出しながら書き起こしていこうと思います。記憶力が低下してきているのを痛感する今日この頃です。

 

諸々色々散々ありまして、今回の夏合宿参加者は3年4名、2年1名、1年1名の計6名となりました。本来予定されていたのは何名だったでしょうか。少なくとも倍はいたと思います。諸般の事情でひとり、またひとりと合宿に参加できないメンバーが増えていき、最終的に昨年度とほぼ変わらないメンツになってしまいました。来年どうするんでしょうね。次期主将くん、頑張ってください。

 

多くの隊員が参加予定であったこと、集中講義の時期と重なってしまったこと等から、今年は隊を分けて時間差で入山しました。まずは8月12日、先発隊の3年隊員3名が福岡を出発しました。富山駅に到着するとサプライズが!現3年が昨年一昨年と大変お世話になった某OBが、差し入れを持ってわざわざ富山駅まで駆けつけてくださいました!現在は関東にお住まいため、もうまず会うことはできないと思っていたので、とても嬉しかったです。本当にありがとうございました。…あんな早朝にどうやって来てくださったのか謎です。多分時間もお金もかかっていると思います。優しすぎる。

 

美女平発のバスから称名滝がばっちり見えたため、これは室堂の景色も期待できるのでは?と思いましたが、到着してみるとあいにくの曇天。まあこんなもんだろう、という滑り出しです。昨年とロッカーの位置が変わっていたことなどから準備にやや手間取り、室堂到着から2時間後、満を持して真砂沢CSに向け出発、T隊員をはじめとして3人全員それなりの歩荷量でえっちらおっちら剣御前小屋まで歩きました。結局私がペースを落としていましたね。本当にすみません。昨年は迷惑をかけすぎて申し訳ないと思おうと思うと必要謝罪量がカンストして人間壊れるので申し訳ないと感じない状態になっていましたが、今年は普通に申し訳ないと思えました。成長です。わあ。1年ぶりの雪渓歩きはとても楽しかったです。非常に涼しく快適でした。昨年今年と、最も暑い時期を涼しい場所で過ごしてきているので、来年の下界の暑さが怖いです。真砂沢CSにテントを張り、翌朝の2時起きに備えて早めに就寝しました。

 

翌朝3時、Cフェースに向けて出発しました。息を切らしながら長次郎谷を登っていきます。上部に差し掛かったところで雪渓の一部崩壊が認められたため、右岸に巻いて進みました。この雪渓崩壊、今思うとこの後始まる雪渓崩壊祭りを示唆していたのでしょう。嫌な予感はしつつも、特に問題なくCフェース取り付きに到着しました。この日も前日と同様に朝からどんよりとした天気が続いていましたが、取り付きに着いたあたりで雨が降り始めてしまいました。悩んだ結果、Cフェースの登攀を諦め、八峰上半のスタート地点である5・6のコルおよびAフェースの取り付きの偵察をして引き返すことに決定。5・6のコルに到着したタイミングで少しガスが晴れ、池ノ平小屋が姿を見せてくれました!山荘の美しさは剱のチャームポイントの一つです。美しい緑の中に赤い屋根が点々と腰を据えている景色をみると、上りのつらさをすっかり忘れてしまいます。偵察を済ませた後、5・6のコルのザレ場を下り、12時頃に帰幕しました。迂回や偵察に思いの外時間がかかったため、行動時間は割と長めの一日でした。翌日も2時起きのため、この日も急いで就寝しました。

 

翌朝3時、八ツ峰上半を目指し出発しました。長次郎の出合に到着したところで、昨日は見当たらなかった雪渓の崩壊を発見。大きな穴がぽっかりと開いてしまっています。びっくり。右岸を伝って何とか崩壊地点上部にたどり着くものの、平蔵谷の様子が分からないこと、天候が悪化したこと等から、この日のアタックは断念。大雨の中剣沢小屋まで移動し、福岡にいる後発隊と連絡を取りました。ここで、恐れていた事態が発生してしまいます。後発隊として入山予定だった某1年隊員が急遽不参加になってしまったのです。また一人参加者が減ってしまった…。3人のテンションが一気に下がります。さらに隊員が減ったこともショックですが、来られなくなってしまった彼が晴れ男であったことがダメージを増幅させます。我々にとって、彼の晴れ男パワーは自分達三年の雨男(女)パワーを吹き飛ばす唯一の希望でした。彼が来ないのならば、今後もどんよりとした天気が続くのではないか…?等と考えてしまいます。ちなみにこの予感は完全に的中します。あーあ。本当に3年連中の天気運どうなってるんですかね。よくよく考えてみると、山岳部に入部してからまだまぶしい雪渓というものを一度も見たことがありません。サングラスが装備表に入っている意味とは何なのか。過去の行動記録にある晴天続きは捏造なのではないか。先輩方に毒づきながら剣沢雪渓を下り、翌日の2時起きに備えて就寝しました。

 

翌16日、この日は後発隊2年1名と1年1名の入山日です。2人は初室堂のため、3年3人が室堂まで下山し迎えに行きました。2人は来られなくなった隊員の分の協同装備を全て持ってきてくれていました。福岡からこれだけの大荷物を持ってくるのは相当大変だったと思います。ありがとう。お疲れ様。一時間で歩荷分けを済ませ、真砂沢CSに向け出発しました。2+α人分の装備を5人で分けて持ったため、この日の歩荷量は少なめです。剣沢雪渓に差し掛かったあたりで豪雨に遭遇してしまいました。…慣れたもんです。入山組2人はとてもセンスが良く、すぐに雪渓に慣れてすたすたと歩いていました。真砂沢CSに到着後、濡れて冷えてしまった体を温めるため、全員で一つのテントに集まりレモネードを飲みました。疲れた体にクエン酸が染み渡ります。室堂で確認した天気予報を基に明日の沈殿を決定し(デフォ)、濡れた衣服を乾かしながら就寝しました。

 

ここで今合宿の食事について少し。九重新歓合宿での炊飯失敗という苦い経験を踏まえて、水を米の倍の高さ入れること、ちゃんと弱火にすることを終始徹底した結果、連日米炊きに大成功!毎晩毎晩おいしいお米が食べることができました。食事係は安心と信頼のTシェフが担当していたため、カレーやシチューも絶品です。特に沈殿日のスパイスカレーは最高で、とても山とは思えないクオリティー。豚足、軟骨、鶏ささみと肉の種類も豊富で、毎日夕飯が楽しみで仕方ありませんでした。今合宿から導入したレモネードは、安いしうまいし疲れが取れると大絶賛。来年以降はスタメンにして良いと思います。不参加の某1年隊員や先述のOBの方に頂いた(多分高い)ドライフルーツは沈殿のお供にぴったり。直前で不参加になった隊員複数名分の食糧が余っていたため、最終日付近には鶏ささみ入りオニオンスープが提供されました。鳥のしっかりとしたうまみと薄くスライスされた玉ねぎの甘みが極上のハーモニーを奏でます。ため息が出るほどのおいしさ。通常長期合宿中は下山したらあれが食べたい、これが食べたいという話で盛り上がるのですが、目の前の食事が旨すぎるためそこまで盛り上がりませんでした。実際、下山日の室堂での食事も昨年と比較すると感動が薄かった気がします。いやあ、本当に素晴らしかったです。唯一の失敗はパッキングで傷ついた玉ねぎの催涙作用が半端なかったことです。玉ねぎカットチームの犠牲の上に成立した、今年度夏合宿の食事についてお伝えしました。

 

後発隊入山日から3日後、ようやっと待ちに待った晴天がやってきました!先発隊にとっては1週間待ち望んだ晴天です。長かった!この日は前日に入山した3年隊員Yを含めた6名全員で、源次郎尾根から剱岳山頂に向かいます。昨年度も同様のルートから剱岳山頂を踏んだのですが、その道のりは波乱万丈。3年連中は復讐に燃えています。執念を込めた、徹底した偵察が功を奏し、サクッと上り始めます。初めの大岩は問題なくクリアし、迎えた二つ目の核心。後続のパーティーの方に追い越していただきながらなんとか突破しました。途中、鹿児島大山岳部出身のガイドの方にアドバイスをいただきました。ありがとうございました。その後は真っ青な空の下、ひたすら気持ちのいい尾根歩きが続きます。初参加の隊員の中には高度感を感じた人もいたようですが、特にペースダウンすることもなく順調に進みました。広がる景色のまあ美しいこと。ここに来るために高いお金を払って山に来ていると言っても過言ではありません。幸せをかみしめながら歩いていると、右か左か真ん中か、進めそうな道が複数ある個所に遭遇しました。…人海戦術だ!3年隊員が一斉にそれぞれの道を進み正解を探しだします。上級生が多いといいですね。どことなくウルトラクイズを感じさせるその行動のおかげで、タイムロスなく当該ポイントをクリア。行動全体を通して道迷い、タイムロス共にほぼありませんでした。3年の3人、ありがとうございました。特にトラブルなく懸垂下降ポイントを通過し、2999m、剱岳山頂に到着しました!!初参加の隊員の皆さん、初登頂おめでとうございます!!北アルプスの山々が一望できる最高のコンディション。いぇい!!帰幕するその瞬間まで復讐は続くため、絶景と他の登山客の方々との別れを惜しみつつ30分経たないうちに山頂を後にしました。別山尾根を通過し、真砂沢CSに無事帰幕。復讐成功です。みんなおめでとう!レモネードを飲んでほっと一息つきました。例によって翌日は大雨であることが判明していたため、ゆとりを持って就寝しました。

 

源次郎尾根の翌々日、動ける程度の曇天であったため、偵察隊と雪訓隊に分かれて行動を開始しました。ここでまたしてもハプニング発生。前日の大雨のために剣沢雪渓(源次郎取り付き~長次郎谷間)に大きな穴が開いてしまっていました。びっくり。剣沢雪渓に崩壊があったという記録は部内にはあまり無かったため、かなり驚きました。リスクが高いと判断し、テントを剣沢CSに移すことに決定。さくっと雪訓を済ませて帰幕し、真砂沢ロッジの心平さんに挨拶をしてその日のうちに剣沢CSまで荷揚げしました。日数が残っていたので歩荷量があると覚悟していましたが、そこまで重くはありませんでした。たくさん持ってくれた人、ありがとう。警備隊の方々がテープを貼ってくださっていました。いつもありがとうございます。もう少し経験を積んで、自分達で崩壊具合から通れる道を判断できるようになりたいです。翌日は天気が安定するとの予報(レア)から、3年隊員3人で八ツ峰上半、1年2年3年隊員1人ずつの3人でCフェース登攀に行くことに決定し、早めに就寝しました。

 

翌朝早朝、それぞれの目的地に向けてまだ暗いうちから剣沢CSを出発しました。出発からしばらくは崩壊がありつつも上れる状態の雪渓が続いていましたが、長次郎谷の上部に差し掛かったところで、進むか戻るかの判断が求められる程度の崩壊に遭遇します。Cフェース隊はここで撤退の判断を下し帰幕しました。一方の八ツ峰はそのまま進むことにしました。トランシーバーで密に交信を取りつつ進んでいきます。ザイルを使って何とか突破し、予定より遅れて5・6のコルに到着し、登攀を開始しました。高度感はありましたが、手足がしっかりしていたため危険と感じる箇所はありませんでした。晴れ渡る空の下、気持ちのいい稜線歩きと懸垂下降が続きます。滅多に来られない所に来られている興奮と景色の美しさとで幸福感はMAXです。楽しく進んでいたのですが、2回目の懸垂下降が終わったタイミングで急激に天候が悪化してしまいます。ガスで周りが見えなくなった結果、Ⅷ峰の懸垂下降ポイントを見失ってしまいました。悩んだ結果、登り始めの地点に戻って巻道を通ることにしました。かなりタイムロスが発生してしまいました。下級生を連れていたらもっと時間がかかっていたかもしれません。反省したいです。雨がぱらつく中、ようやく北方稜線にたどり着きます。ここで明らかな道を見つけ、少し不安が低減しました。全く本峰が見えない中でコンパスの示す方向へ進んでいると、雲間から光が見えてきました。本峰まであと5分といったあたりで、なんと太陽が登場!…え?…今?…ツンデレだなあ全く!!!さっき晴れてくれよ、という思いはありましたが、晴れてくれただけで万々歳です。山頂からの絶景を見て完全に機嫌が回復した3人はスピーディーに別山尾根を下り切りました。別山尾根の途中で落とし物のサコッシュを見つけたため剱山荘に届けに行ったところ、たまたま落とし物の持ち主が宿泊されていて20分ほど話し込みました。感謝の言葉をいただき、心が温かくなりました。人との出会いは山での楽しみの一つです。人助けはいいものですね。(追記:後日お礼としてビールの詰め合わせが届きました!お気遣いいただきありがとうございました!打ち上げでおいしくいただきました。)テントに帰るとCフェース隊がほかほかご飯とスパイスカレーを準備してくれていました。感動で泣きそうになりました。本当にありがとう。カレーのにおいをかぐだけで、心と体が穏やかに、まろやかに、まともになっていく感覚があります。家に帰ってきてごはんがある、というのはここまで尊いものなのか、としみじみと感じました。

 

翌朝、爆睡する八ツ峰隊を置いてCフェース隊は立山縦走に出発。終始ガスっていて気温も低く大変だったそうです。雄山の神社や山小屋でインスタントコーヒーや豆乳チャイティーなどを楽しんだとか。自分が昨年行った時もやたら寒く、小屋の存在に救われた記憶があります。沈殿組が二度寝を終えたら既に帰幕していました。はやい。三人とも頼りになります。翌日下山することを決め、歩荷量削減のため色々食べて就寝しました。

 

そして迎えた最終日。5時に剣沢CSを出発し、曇天の中、室堂に向かいます。剣御前小屋直前で、なんと雷鳥の親子に遭遇!ようやく会えた剱のアイドルと写真を撮りました。雷鳥沢CSから剣御前小屋までの傾斜が急なので忘れがちですが、雷鳥沢CSから室堂も実は上っているんですよね。登山靴でなくとも散策可能な場所になっていますが、侮れません。大きなトラブルなく、室堂ターミナルに無事到着!全行程終了です。お疲れ様でした!荷物の整理をしてみくりが池温泉へ向かった時に、奇跡が起きます。さて、どんな奇跡でしょう。皆さん分かりますでしょうか?正解は、晴れる、です。風呂に行こうとした途端、源次郎並みに晴れました。…知ってた!!!下山してから晴れるんだよね!!!去年もそうだった!!!風呂に入ってご飯を食べて少しゆっくりした後、三々五々室堂を離れました。

 

以上、2022年夏定着合宿の様子を6000文字使ってお伝えしました。雨や雪渓崩壊に悩まされはしましたが、総じてとても楽しい合宿でした。一年生があまり参加できなかったこととCフェース登攀が果たせなかったことが心残りです。来年スケジュールが合えばぜひ参加したいです。みなさん、本当にお疲れさまでした。最後に、熊丸先生をはじめとするOBの皆様のご尽力に感謝いたします。今後の冬合宿、春合宿も頑張ってまいりますので、引き続きご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。本合宿後に行われた北アルプス全山縦走合宿及び南アルプス縦走合宿の様子もブログに上がる予定です。ご期待ください。

 

以上!

以下写真

 


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