句集「妣の国」

2012年06月05日 | 健康・病気

奥坂まやの第3句集「妣の国(ははのくに)」(ふらんす堂刊)
を著者にいただいてから今日まで、私は何度も句集を読み返してきた。
わからない句、感じる句、いろいろありました。
私が気に入った俳句を次に書きます。


  ゆふがほはいつも待ちくたびれてゐる

  柘榴の実渡す一個の未知として
  まつすぐに此の世に垂れてからすうり

  十二月コップに水の直立す
  わが自我のごとき鉄塔雪降り来る
  白き血しろくかがやき年迎え
  いつさいの音のはてなり雪ふるおと
  からあげ揚ぐる音潑溂と寒に入る
  寒中やポスト慇懃無礼に赤し
  裸木として晴天に拮抗す

  滑走路ますぐにさびし卒業す
  るるるると先の世の音風車
  くりいむぱん春らんまんのかたちなる

  ゆふがほの用心深きひらきやう

  ずぶ濡れの電車が着きぬ曼珠沙華
  ぎんなんの稜(かど)小賢しき尖りやう
  鶏頭花聖なる愚者のごと立てる
  いちじく裂く六条御息所の恋

  剝きたての蕪愛慾の白さなり
  姿見へ激しく豆を打ちにけり

  海湛へ地球は孤独さくら貝
  ふゆざくらみんながとほりすぎてゆく
  ひらがなを書き散らしかげろふに棲む

  いきいきとノート真白し夏初
  月光に愛されて滝ますぐなり
  もも色のほのと水母の生殖器
  見たことはなし草臥れてゐる蟻を
  炎暑なり吊玉葱はにこにこと

奥坂まやの句が好きになりました。
ものごとを見る視線がするどく、そして正しい。

九想話のブックマークに「鳥獣の一句」を置きました。
取り上げた句に対する文章がいい。

コメント
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