人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

2016年のアニメ ベスト10

2016-12-29 14:53:00 | アニメ
 
TVアニメの2016年の極私的ランキングを発表します。
今回のテーマは「大人の鑑賞に堪える作品」「ドラマからTVの主役を奪い得る作品」


第一位 『昭和元禄落語心中』




昭和元禄落語心中・・・素晴らし過ぎる大人のアニメ

大人の鑑賞に耐えうる作品の筆頭は『昭和元禄落語心中』。基準は家内が夢中になって観たかどうか。

第二位 『僕だけがいない街』



これは原作をほめるべきかも知れませんが、アニメの出来も非常に良かった。これも家内が「アレの続きはまだなの?」と聞いて来る作品でした。


第3位 『響けユーフォニアム2』


 

家内が「ちょっと、アニメなんか観ないで!!消してよね」と言わない作品でした。『聲の形』もそうですが、京アニは「実写ドラマの次の座」を確実に狙っていると思います。


アニメの完成度という点からはベスト1です。『聲の形』の山田尚子がシリーズ演出を担当していますが、今のアニメってここまで表現できるのかと感嘆することしきり。彼女の特徴である「足の演出」も堪能できます。フレームワークも上手い。とにかく「考え抜かれた演出」。これに対抗出来るのは「のんのんびより」の川面真也監督か?

前期の評論ですが、参考までに。

今季アニメベスト・・・今回は「ベスト回」でお送りします。



第4位 『Relife』



『Rekife』・・・坪口 昌恭のサントラが凄い

これも家内が「ねえ、続きアップれてる?」と聞いてきた作品。小粒ですが、面白かった。

第5位 『灼熱の卓球少女』



何故か家内が「卓球なら一緒に観ても良いよ」と言ってくれた作品。てか、メチャクチャ好きそうでした。

倉田英之がシリーズ構成ですが、久々に彼の脚本が冴えていた。「何が良いの?」と聞かれると困るのだけれど、脚本の「呼吸」みたいな所という曖昧な答えしか私には浮かばない。ともすると、単なるオタクアニメになってしまう内容を、家内ですら「ドキドキする」作品に仕上げてします手腕は流石としか言いようが無い。とくに第6話の「ともだち」なんて、倉田らしい脚本だと思う。久々に『かみちゅ』を思い出した。

このアニメ、影の立役者は音楽。OP,EDも素晴らしいが、劇中BGMのテクノが各シーンにピッタリハマって最高です。サントラ出たら買います。


第6位 『モブサイコ100』



夏アニメベスト・・・『モブサイコ100%』の一択

家内がピクリとも反応しない・・・いえ、出来ない素晴らしい作品でした。


第7位 『装神少女まとい』



願いの為に戦う『装神少女まとい』・・・女の子の戦う理由

11話だけは家内も真剣に観てました。「神回」ランクはかなり高い。

作品としては非常にオーソドックスですが、全体の構成が非常に良かった。シリーズ構成と脚本は黒田洋介ですが、何だか「脚本の教科書」を観ている様でした。「ショッキングなシーン」や「あざとい演出」を入れなくても作品は十分に面白く出来る事を証明しています。実は父娘の繊細な愛情を描く良作なので、本当は夕方や日曜日の朝に放映して欲しい作品。

これもサントラ欲しい。


第8位 『亜人』



横で観ていも家内に完全無視されてた作品ですが、2期はかなり面白かった。フルCGアニメの不気味さにも慣れました。


第9位 『終末のイゼッタ』



入りは良かったのだけど・・・メイドちゃんが出て来てからは志が低くなってしまったというか、序盤にあった凛とした雰囲気が抜け落ちてしまいました。

『マクロスF』の吉野弘幸のシリーズ構成・脚本ですが、『ヘビーオブジェクト』ではプラスに働いた彼の脚本ですが、渡辺高志監督のエッジに救われていた感じもします。『終末のイゼッタ』
は監督の弱さが脚本の不味さをアカラサマにしてしまいました。どこかで観たような演出を継ぎはぎした感じになってしまう。ただ、ストーリーや設定、キャラクターは魅力的だったので、実は「ジブリでこの作品を観てみたい」とものすごく思ってしまいました・・。


第10位 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』



「ガンダム」である事が最大のマイナス。もう、サンライズはガンダムから距離を取らないと、せっかくの「 岡田 + 長井コンビ 」が勿体無い。この二人でもガンダムの呪縛は強い様ですね。特に2期はストーリーが妙にガンダムっぽくなってしまった。第31話「無音の戦争」は素晴らし内容でしたが・・・。

もう少し何かが突き抜けたら最高の作品になり得るのですが、ミカヅキの感情の無さが・・・問題か?


第11位 『田中くんはいつもけだるげ』 



音の魔術師 「川面真也」・・・『田中くんはいつもけだるげ』

面白いのですが、『のんのんびより』と比べてしまうと・・・。


第12位 『Re ゼロから始める異世界生活』




これ入れないと怒られる気がして

第13位 『コンクリート・レボルティオ』



第二期なので控え目な評価とします。去年褒めているので。
評価の難しい作品ですが、こういう作品が作られる事に意味が有る。


第14位 『ばくおん』



忘れないように、こっそり入れておこう。


第15位 『暗殺教室』



岸誠二という監督を知った作品として、備忘録的にランクイン。



映画に圧倒されてしまった感の強い2016年のTVアニメ。「圧倒的な作品」が存在しないので、ドングリの背比べで沢山選んでしまいました。






アニメ業界の皆さま、本年も楽しませていただき、ありがとうございました。

『君の名は。』のメガヒットで、アニメに対する世間の評価も変わりつつありますが、それだけに「粗製乱造」で業界が疲弊してしまう事を心配しています。

来年も素晴らしい作品に出合える事を期待しています!!






例年通り、アニメ記事で終わりを告げる「人力でGO」
皆さま、今年もお付き合い頂き、ありがとうございました。

どうか、良いお年をお迎え下さい。



<追記> 下に「今年のアニメ映画ベスト」も掲載中です。そちらも是非!!


アニメよ今年もありがとう・・・2016アニメ映画ベスト

2016-12-29 12:50:00 | アニメ
 

2016年もあとわずかとなりました。
年末恒例のアニメ・ランキングですが、順位の発表です。
今年は劇場アニメにメガヒットが生まれた年なので、先ずはそちらから。

■ 日本アニメのレベルの高さが一般に認識された2016年 ■

今年は『シン・ゴジラ』『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』と4本もの特撮やアニメの大ヒット映画が誕生した年として語り継がれる年となりました。


今までは「オタク」や「若者」のカルチャーとされていたアニメ。特にお金を出して観るアニメ映画はジブリやディズニーというブランド以外は、実写映画よりも格下、或いは幼稚だと世間は考えていました。

しかし、『シン・ゴジラ』がポリティカル・フィクションとして現実の世界の一端を見せつけ、『君の名は。』はエンタテーメント作品としてのアニメのポテンシャルの高さを興業収益という形で証明しました。

『聲の形』は一般の認知度は薄いものの、この作品を十回以上観た若者が少なからず存在する事から、漫画やアニメというジャンルが優れた小説同様に、人の人生観に大きく影響を与え得る事を立証しました。

そして『この世界の片隅に』によって、日本の実写映画が映像表現としてアニメに大きく後れを取っている事が明確になりました。

「アニメは、もはや実写映画よりも優れている」・・私は以前よりこう主張して来ましたが、ジブリ作品の様な「お子様向け」以外の作品が実写映画の興行収入を超えた事で、映像業界における新たなヒエラルギーが構築された年として2016年はエポックな年となるでしょう。


第1位 『聲の形』



多くのアニメの評論家が今年のベスト1に『この世界の片隅に』を推すと思われるので、私はあえて『聲の形』を選びました。実際にこの作品は4回、『この世界・・』は3回、『君の名は。』は2回、『シンゴジラ』は1回、映画館で観ました。この回数が私の各映画への思い入れの深さをそのまま反映していると思います。

人は「善」でありたいと願うが・・・『聲の形』 

「赦し」を許せない人々・・・『聲の形』

「風景に語らせる」新海誠と、「画面に語らせる」山田尚子・・・現代アニメの実力

『聲の形』聖地巡礼・・・登場人物の息使いが感じられる街

『この世界の片隅に。』と『聲の形』を比べた時、その方向性が正反対である事は見逃されがちです。作品の舞台が過去か現代かというだけでなく、作品の内容が「誰もが否定できない(納得する)内容」か「少なからぬ人達を不快にする内容」かの違いが大きい。

『この世界の片隅に。』の戦時下で必死に生きるすずちゃんを観て「なんだ、あのボケーっとした女は!!」と言い放ったのは庵野監督だそうですが、世間的にはすずちゃんを否定する人は皆無でしょう。いえ、否定できない下地が戦後日本には出来あがっているのです。そういった意味においては『この世界の片隅に。』は批判を心配する事無く、作品世界のクォリティーを上げる事だけに専念できる作品で、それが最大限に発揮された作品です。

一方、『聲の形』は「身体障害者へのイジメ」をテーマとしているだけに、作品や制作サイドが世間の批判の的になるリスクすらある。さらには、登場人物の心の葛藤が赤裸々に表現させるために、エンタテーメントとしては始めから成り立たない作品です。そんな「マイナス」を承知しながらも、エンタテーメント作品を得意とする京都アニメーションがこの作品に挑んだ事を私は高く評価します。(PA. WORKSの得意分野ですが)

この評価を獲得する事が難しい作品に京都アニは若手のエースの山田尚子を充てる事で会社の未来を彼女に託した。

この会社の未来とは「アニメが実写を超えて、一般の共感を得られるジャンルになり得るのか」という問題では無いかと・・・。

30代以下の年代層はアニメだから、実写だからと作品を区別する事はしません。面白ければどちらでも良いと考えています。これが良い事かと言えば、必ずしもそうではありません。適当なアニメを作ってもある程度の支持が得られる状況が続くと、アニメは現在のTVドラマの様にツマラナイ物になってしまいます。

量産されるツマラナイTVドラマや、同じく量産される無価値のアニメや、全く進歩を止めてしまった実写映画と同じ道を歩まない為に京都アニと山田尚子が選んだ道は「徹底した表現への拘り」だと思います。

デザインの仕事をしている「どうして○○でないといけないの?」と他者にも自分にも問われる事の繰り返しです。ただ通常の仕事では、時間の制約の中で、何と無く理由を付けて片付けてしまうことが多い。

『聲の形』で山田尚子は、「どうしてこのシーンはこのカットで無いといけないのか・・・。どうして、この音で無いといけないのか・・・。」という問いかけを、ひたすら繰り返している様に感じます。ベテランの作家ならば、経験によって簡単に見つかる答えも、若手にはなかなか見つけられません。時には間違った選択もする。そういった逡巡や間違いもすべてひっくるめて、この作品はひたすらに何かを問いかけ続ける。

「どうして将也はこう言ってしまうのか」「どうして硝子はこういう行動をするのか」・・・原作の中である程度決着していると思われた事も、再度問い直されてゆきます。

この丁寧な、丁寧な積み重ねは、ある種の「刺」として観客の心に引っ掛かります。それを不快と感じる人も多い。

しかし、その「刺」をしっかりと認識して、そこに今までとこれからの自分を見つけようとした子供達も沢山居るでしょう。彼らは自分自身に心の中で語りかけ、そしてネットで誰かに伝えようとします。彼らの伝えたい事は「この映画が素晴らしい」という事では無く、「この映画を観て自分の中にどういう変化や気付きが生じたか」という事です。

『この世界の片隅に』も確かに「語りたくなる」作品ですが、その多くはアニメ技法としての完成度や、戦時下の生活に対する共感です。あまりすずさんの内面をどうの・・・という事を語る人は居ません。そもそもすずちゃんは「不思議ちゃん」という設定で、さらには「りん」ちゃんとの一件を完全に排除しているので、すずちゃんの葛藤は周到に取り払われています。

『聲の形』を私が今年のベスト1のアニメ映画として選ぶ理由は「観た人の人生に影響を与える」という点に尽きるかと。これは原作者に与えられる栄誉かも知れませんが、映像化に当たり、この難しいテーマをある程度エンタテーメントとして成立させた吉田玲子や山田尚子の努力も称賛に値するものだと確信しています。

「○十回目を観に行きます。もう近くでは上映していないので片道3時間電車に乗って行きます」なんて書き込みがTwitterある映画って・・・私は記憶に無い。




第2位 『この世界の片隅に』



『この世界の片隅に』...ジブリの時代は終わった

『この世界の片隅に』・・・戦争の中でも人は生きている

アニメ史や映像史としては今年ベスト1として揺るぎの無い作品ですが、あえて2位にした理由は誰もが1位に推すであろうから、私としては健闘した『聲の形』を推したい。

50回観ろと言われても何ら苦痛を感じない映画ですが、原作を読むと、こちらも又素晴らしい。漫画の表現様式の多用性に驚きます。一方で、それを破たん無く映像にまとめた片淵監督の手腕には脱帽。

とにかく「すずさんがそこに居る」という感覚がハンパ無くて、「体温を感じるアニメ」として高畑勲の作り上げた表現の、その先に到達しています。

この作品の最大の見せどころは「情報量」でしょう。とにかく2時間の間のエピソード数は圧倒的で、それをポンポンとテンポ良く進めて破たんが無い。さらに、描写の情報量も多く、動き一つ一つにハっとさせられる事が多い。

そして、戦争や兵器の情報量も多い。爆弾って機体を離れるとああやって落ちて行くのか・・・なんて事だけ観ていても十分に観賞に耐えうる。さらには、当時の街の再現の情報量や、戦時下の生活の情報量も多い。

「ああ、アニメって、ここまで密度を高めると、こんなとんでも無いリアリティーを生み出すのか」という驚きに満ちた作品です。「どうだ、このCG、リアルだろう」という方向性がいかにツマラナイものかを実感させられます。



第3位 『君の名は。』



今年の最高傑作確定!! 新海誠『君の名は。』・・・細田守を消化した新海誠

「良い映画」と「悪い映画」・・・私的映画感

『君の名は。』聖地巡礼・・・堀と白壁の街、飛騨古川+


今年、この作品が無ければアニメの今後は違うものになっるでしょう。それ程のインパクトのある作品でした。観終わった後、大ヒットを確信しましたが、まさか・・・その後の『聲の形』と『この世界の片隅に』が、これを上回る出来だったとは、当時としては予想も出来ず・・。

とにかく、「エンタテーメント作品として良く出来ている」という一言に尽きます。「入れ替わり」というイベントの描き方、一転して「喪失」のインパクト。さらに、「喪失」を回避する為の展開の手に汗を握る感じ。さらには雄弁に語る雄大な景色、RADWIMPSの曲のハマリ具合。

どれを取ってもこの映画の完成度は非常に高い。
一方で、中身が無い・・・。
だからヒットした。


悪口の様に聞こえるかも知れませんが、「大勢の人に支持される」為には、中身が無い方が成功する良い例なのかも知れません。エンタテーメントを楽しみに来た観客に、あまり重たいテーマは好まれません。


第4位 『シン・ゴジラ』

今度のゴジラは固定砲台だ!!・・・『シンゴジラ』




あまり否定的な事だけ書くとアレなので・・・肯定的な内容も・・・。

『シン・ゴジラ』は「怪獣映画」というジャンルからゴジラを解放した功績は大きい。「ゴジラ=自然災害」と定義する事で、視聴者は「ゴジラ=東日本大震災」として作品世界をリアルに感じる事が出来ました。

そして、繰り広げられる政治劇を当時の民主党政権の混乱と重ねて見る事で「ゴジラ=ポリティカル・フィクション」として「新たな気づき」の気かっけを得た方も多かったのは。だから、かなり年齢層の上の男性がゴジラを支持しました。これは従来の「ゴジラ=怪獣映画への郷愁」という支持とは全く異なる、「今の時代のゴジラ」の誕生の瞬間でした。