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1年遅れのフィーバー・・・最後の饗宴?

2016-12-20 07:12:00 | 時事/金融危機
 

■ FRBが1年ぶりに利上げ ■

トランプ・ラリーに引きずられる形でFRBが1年ぶりに利上げを決定しました。といっても0.25%の利上げで。FF金利は0.50~0.75%の範囲。一方で来年の利上げ回数予測は3回とし、これは市場が予測した2回よりも多い。

ダウは利上げ回数予測に反応して下がりましたが、為替はドル高に。日本株はダウにつられて下がるはずが、為替の円安の影響で下落しませんでした。

■ 中国が米国債を売っている ■

気掛かりなのは米国債の金利上昇。これはトランプ・ラリーに先行して発生しています。原因の一つは中国の米国債売却。元安を止めるためにドル売りの為に外貨準備を取り崩していると解説されています。

■ グランドローテーション? ■

債権から株式やその他のリスク資産への資金移動が起きており、しばらく起きていなかったグランドローテーションが起きているとの解説も。リスクオンのムードになっていると。

私的にはこの解説は的確では無く、債権金利が底を打って、債権市場から皆逃げ出し始めたというのが実情では無いのか?行き場を失った資金が、株式市場などに流れ、後付けの理由として「トランプラリー」なる言葉が出て来て、皆なんとなくそれに釣られているだけ。

■ 1年前に起こるべき事が今起きている ■

本来ならFRBは昨年12月に利上げを行った後に年内中に2回ぐらい利上げをしたかったはず。そうなれば、現在の様な米国への資金還流はもっと早く起きていた訳で、今頃は米国内がバブルになっていた可能性が高い。

ところが、FRBは新興国経済やブレイクジットの影響を加味して利上げをズルズルと先延ばしてきた。これによって世界経済は1年延命したと私は考えています。

■ 普通、バブルは2~3年程膨らみ続けるが・・・ ■

多くの市場参加者はバブルはトランプラリー以降膨らみ始めたと認識しています。バブルは通常は2~3年程膨らみ続けますから、FRBはその間金利を0.25%ずつ引き上げてゆきます。米景気とインフレ率の進み具合にもよりますが、過去のバブル時にはFRBは毎月0.25%ずつ金利を引き上げています。年3回の金利引き上げ予測は、過去と比較するとスローペースです。

金融緩和による過剰流動性は既に存在していますから、仮に米国内でバブルが始まると、FRBの金利引き上げペースは市場が予測していた年2回や、FRBの予測の年3回を超える可能性も高い。

■ バブルが認識され難い債権市場 ■

金利上昇ペースが予想よりも早まれば、低すぎる債権金利を嫌気して、債権の投げ売りが始まります。これ、債権価格が下がるという事。

逆の見方をすれば、今まで債権市場は異常な高値で買われていた事に他なりません。高値で買われる事で金利が下がる債権市場のバブルは世間一般にはバブルとは認識され難い。

世間ではトランプラリーによってバブルがスタートしたと認識していますが、私は債権市場はとっくにバブルになっていたと考えています。その崩壊が始まった。

■ 株式市場などとは比較にならない巨大な債権市場が崩壊する時 ■

債権市場は株式市場など比較にならない程巨大です。社債を始め、住宅債権、国債など、誰かの借金が債権市場でファイナンスされています。

さらに、それらの債権が様々に加工され、デリバティブ市場に出回っています。ドイツ銀行が保有するデリバティブ残高はドイツのGDPの20倍にも達しています。現在はその一部が不良債権化する可能性がありますが、債権市場が下落を始めると、不良債権が増えてゆきます。

これはドイツ銀行に限った事ではありません。世界のほとんどの金融機関で債権価格が下がると損失が雪だるま式に膨らみ始め、債務超過に陥る金融機関が増え始めます。


■ 金利上昇の限界はどこにあるのか ■


FRBが来年の利上げの回数を3回とした事は、市場に対するフォワードガイダンス的な意味合いを持っています。「金利引き上げは緩やかですよ」とアナウンスする事で、債権市場の混乱を発生させない様にしています。

一方、市場は利上げを2回と見ていたので、多少動揺しています。それでも年3回の利上げなら大した影響は無いと判断します。

ここで問題なのは米国債金利です。米10年債金利は12月15日の利上げ発表で2.59%でピークを打った後、緩やかに下落に転じています。とりあえずは一気に3%を突破する勢いは今の所ありません。

ただ、トランプ政権が発足して、財政の拡大を本格化させると、米物価が上昇し始めます。一方、財源確保の為に国債を増発すれば金利上昇圧力となります。ここら辺の車輪が回り始めると、米国債金利がジリジリと上昇を始め、FRBの利上げペースに影響を与えます。

どこかの時点で債権市場に動揺が走り始める訳ですが、私は米10年債金利3%というのが一つの節目では無いかと妄想しています。2013年12月に一瞬タッチしていますが、FRBが利上げをしたタイミングです。

その時は日銀が追加緩和を発表した後で円安が進行した為に日本の資金が大量に米国債に流れました。

トランプ政権が一層のドル高を容認する様ならば、海外の資金で米国債金利はしばらく抑制されそうですが・・トランプがドル安に舵を切るならば、米国債金利がポンと上昇するはずです。ここら辺、市場との心理戦となります。

いずれにしても「債権市場は既にバブル」という事だけ気をつる必要がありそうです。