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看護師の所得が下がる・・・TPPを利用した医療改革

2013-04-02 04:41:00 | 時事/金融危機
 

■ 少子高齢化で崩壊する日本の医療・福祉政策 ■





http://sara1.net/pension.html

日本は少子高齢化で福祉や医療が崩壊します。


上のグラフを見れば一目瞭然ですが、受益者である高齢者が増え、
負担者である若者が減るのですから、破綻は確実です。
この傾向は今後さらに加速して行きます。

政府の支出の多くも福祉部門が占めています。
公共事業が削減された原因は、有効な公共事業が減った事よりも、
福祉の負担が増えた為に、公共事業に回すお金が無くなったというのが主な原因です。
「コンクリートから人へ」は回りくどい言い回しで、
「コンクリートに払う金は無い」というのが実態でした。

■ 病院や介護医療施設は人件費の塊 ■

日本は皆保険制度という素晴しいシステムがあるので、
世界で最も安い医療サービスを受けられる国と言われています。

しかし、その一方で病院の経営は何処も火の車です。
友人の医者と話すと、その実態が良く分かります。
国がどんどん保険点数を下げるので、
医療を行なえば行なう程、赤字が拡大するのです。

少し前までは人工透析だけは儲かる部門でした。
病院が透析施設を拡大した途端に、
透析の保険点数が下げられ、儲けが出なくなったと嘆いていました。

参考までに
http://www.nininkai.com/housyu.htm

病院は人件費の塊です。
医師の給与は安くはありません。
又、看護師などのスタッフの数も多く必要です。

現在、看護師も派遣看護師というのが増えています。
正規雇用よりも病院側の負担が少なく、
さらに、人員の調整がし易いというメリットがあります。

しかし、たとえ派遣であっても看護師の給与は安くはありません。
専門性が高いので、良い人材を確保する為には、
どこの病院でも、看護師の給与をあまり下げる事が出来ません。

病院が儲からないというのには幾つかの理由があります。

1)診療補修が引き下げられた
2)医師の給与が高い
3)看護師の給与が高い
4)最新の医療機器への設備投資額が高い

今後、国の財政が逼迫すれば、診療報酬は益々引き下げられます。
現在でも経営破綻する医療施設は後を絶ちません。

■ 介護の分野は、給与が安く離職率が高い ■  

介護の分野も人件費の占める割合の高い分野です。
医療と異なり、介護への予算配分は少ないので、
介護職員の給与は高くはありません。

一方で、介護の現場は肉体労働とも言えるキツイ職場です。
腰を痛めて、離職するスタッフが多い聞きます。

就職難で多くの若者が介護スタッフとして働いていあますが、
安い給与と、過酷な労働環境から、
早々に職場を去る若者が後を絶ちません。

しかし、財政難の折、介護スタッフの所得は決して上がる事はありません。

■ 海外の安い労働力を導入したい厚生労働省 ■

医療福祉の現場の最大のコストは人件費です。
厚生労働省は将来的に人件費を削減しなければ
医療福祉が崩壊する事を理解しています。

海外に目を転じれば、フィリピン人の看護師が大人気です。
フィリピン政府は日本政府にフィリピン人の看護師の受け入れを要求しています。

しかし、看護師会の抵抗が強いので、
形だけ研修生を受け入れていますが、
看護師試験を日本語で実施して、
事実上、海外からの看護師の流入をブロックしています。

しかし、将来的には、医療費の削減の要求から、
外国人看護師の導入は不可欠と、厚生労働省は考えているはずです。

■ TPPの外圧で、外国人看護師や介護師を受け入れを狙う ■

TPPは労働分野の自由化も推進されます。

現在のTPPにはインドネシアやフィリピンは加盟していませんが、
将来的にこれらの国が加盟すれば、
看護師や介護師の労働市場の解放を日本に要求する事は必至です。

ISD条項で、介護師や看護師の採用試験を英語にしろと要求するかも知れません。

厚生労働省は表向きは抵抗しますが、
結局、外圧に負けて外国人の看護師や介護師を受け入れる事になるでしょう。

■ 混合診療や自費診療の拡大 ■

一方でアメリカの製薬会社や保険会社も
TPPによって腕まくりで日本に乗り込んで来ます。
彼らは「混合診療」の実施を要求して来るでしょう。

現在の日本の医療制度では、保険診療と自費診療を同時に受ける事は出来ません。
これを解禁すれば、保険適用外の新薬の投与が容易になります。

「混合診療」が解禁されれば、アメリカ発の最新の医療の普及が加速します。
但し、コストはそれなりに掛かるので、個人の医療保健がこれをカバーする事になり、
アメリカの医療保健会社が日本で活躍する事になります。

■ 二極化する医療 ■

安い外国人スタッフの受け入れと、混合診療の解禁によって、
日本の医療は「安い医療」と「高い医療」に二極化されます。

保険診療で受けられる医療は、安い医療にシフトして行きます。
一方で、自費診療で受けられる医療は高額化して行きます。

こうして日本の医療や介護は、庶民向けと金持向けに分かれて行きます。

看護師や介護師の所得も、二極化が進むでしょう。
普通の技能の看護師は、外国人同様の安い給与の職業になり、
一部の優秀な看護師は、ブランド病院で高額の所得を得る事になるでしょう。

■ 女子の大学進学で看護科が大人気 ■

就職難を反映して、大学受験をする女子の間では看護科が一番人気です。

しかし、彼女達は、将来看護師の給与が下がるとは夢にも思っていません。
看護師の職場は、夜勤があったり、医療事故を起こさない様に神経を使ったり、
さらにはワガママな患者を相手にしたりと
色々と大変な職場です。

このような職場で、現在より給与が下がれば、
現状の介護の現場の様に、離職する看護師が増える事が予想されます。
現在での離職率の高い看護師が、さらに不足する事になれば、
海外の看護師の導入が加速して行きます。

医療ミスを防ぐ為に、カルテは英語で書かれ、
医療現場の公用語が英語になって行く可能性も否定出来ません。
英語の話せない日本人看護師が、現場から排除される可能性もあるのです。

まあ、極端な仮定ではありますが、
日本の財政を考えれば、あながち有り得ない話でもありません。

尤も、フィリピン人看護師と聞いて、妄想を膨らめる御仁も少なからず・・・・オット!




<追記>


■ 医者や看護師は激務である事は承知しています ■

「のりさん」にご意見を頂きました。
ちょっと言葉が足りなかったと反省しております。

下のコメントらんでご指摘の様に、
医者の仕事は激務です。
特に、勤務医は激務の割りには薄給です。

開業が難しくなっているので、
誰でも開業医になれる時代も終わりました。

看護師も神経を使い激務なのは医者と同様です。

私は医者や看護師の現在の給料が高すぎると言っているのでは無く、
日本の皆保険制度は現在の負担率で現在の医療サービスを継続すると
病院経営が成り立たなくなる事を、多くの国民が知るべきだと考えます。

「それでも勤務医だってベンツに乗っているじゃないか」と言われるかも知れませんが、
そのぐらいのメリットが無ければ、努力して医者に成る人は居なくなります。

現在は医療訴訟が簡単に起される時代です。
医者は、いつ誰から訴えられるか分からないというストレスに曝されています。
勤務医などは、多分、医療訴訟保険に加入していますが、
この保険料も安くは無いはずです。


■ 負担の増加か、質の低下を我慢しなければ、病院が破綻する時代 ■

私達の保険料が倍以上に値上がりするか、
税金が現在の倍以上になるかしなければ、
健康保険システムも、福祉制度も崩壊は確実でしょう。

家内は助産師なので、病院の経営状態も日頃から聞かされています。
以前家内が勤務していた病院の、経営改善提案資料なども、
良く家内に作らされていました。

そういった医療現場の必死の努力がありながらも、
少子高齢化という日本の避けがたい構造変化は、
医療や福祉の基盤を根底から崩壊させてしまうと憂慮しています。

「病院は儲かっている」という時代は、既に終わってしまたのです。

■ 「医療は安い」という私達の意識にも問題がある ■

本当は「安易に病院に掛かる」という私達自身の考え方にも問題はあります。
普段から健康に注意して、運動に心掛けるなど、
「創健」という発想に転換しなければ、成人病患者は増え続け、医療費を圧迫します。


私事で恐縮ですが、個人事業主は健康保険の会社負担な無いので、
一般の会社員の倍近い健康保険料を支払っています。
これが、さらに倍になったら、生活を相当圧迫します。

ところが、私などは、健康保険を使った事がありません。
ここ2年は、病院へは、見舞い以外には行った事がありません。
(子供達はスポーツの怪我でちょくちょく使いますが)

では、私達の保険代は何処へ行ってしまうのだろうと身の回りを見回すと、
自分のオヤジが足しげく病院に通って、
数え切れない程の種類の薬を飲んでいます。

ああ、俺の健康保険はオヤジが使っていたんだと妙に納得しますが、
一方で、若い頃から酒やタバコで不節制をしながら、
あそこが悪い、ここが悪いと言うオヤジに腹が立つのも事実です。

何十年後は我が身になる事を分かっていながらも、
そうは成りたくないなと、健康にだけは気を遣います。

スポーツジムにもお金を出して通いますし、
いつでもフルマラソンを楽に走れる体力を維持しています。
そうで無ければ、自営業者は恐くて続けられません。

■ 税負担や保険料の負担を意識させない税の申告の方法にも問題は多い ■

自営業になって、サラリーマン時代と一番変化したのは、
税や保険料の負担に目が行く様になった事です。

サラリーマン時代は自分の所得税や住民税、
健康保険料が幾らかなど気にしませんでした。

ましてや、厚生年金や健康保険の半額近くを
会社が負担している事など、知りもしませんでした。

皆さんの給与明細の健康保険料のほぼ倍額が、
実際の皆さんの負担する健康保険料なのです。
(会社負担と言っても、元を正せば皆さんの労働で生まれたお金です)

その保険料が高いのか、安いのかはそれぞれの判断によりますが
日本の皆保険システムが世界で最も優れたシステムの一つである事に
疑いを持つ日本人は少ないと思います。

ただ、それが維持出来ない事が明確な以上、
私達は何らかの我慢か、妥協を迫られる事になります。

医療サービスの質の低下は誰も望まないはずです。
ナースコールを押した時、30分以上誰も来ないのを我慢するのか、
外国人の看護師であっても、直ぐ来てくれることで妥協するのか、
どちらが良いかは、私ならば後者を選択します。

極限られた一部の富裕の人達だけが、
自腹を切って、至れり尽くせりの医療サービスを受けられるのは当然の事です。

■ 「負の選択」が出来ない民主主義 ■

民主主義において、国民は「負担の増加」を決して選択しません。
これは日本に限った事では無く、世界共通の傾向と言えます。

結局これが民主主義の限界であり、
政治家や官僚は、民主主義の根幹を踏みにじる形で、
国家を運営するしか、方法が無いのかも知れません。

日本の官僚や政治家は「外圧」を利用して改革を実行します。

負担に対する意識の高い北欧諸国は、
日本などとは別次元に進んでいるのかも知れません。
あるいは、一種の民主社会主義的システムが、
最も国民の幸福を実現しやすいのかも知れません。


アメリカ型の民主主義を過剰に進めた先には
必ず民主主義システムは崩壊が訪れるハズです。


私の本音を言うならば、民主主義のその先を早く見て見たい。
しかし、その過程で起こりうる惨劇を思うと、
容易にそれを望む事が、一概に良い事とも思えません。


アベノミクスで一夜の夢を見て、
その結果のガラガラポンならば、国民も納得出来るのかも知れません。
しかし、どうやら、アベノミクスは春の夜の夢と消えそうな気配・・・。