WIND AND SOUND

日々雑感 季節の風と音… by TAKAMI

ある日の諍い…他

2011-11-08 | 実父


11/8

このところ、食欲が少しずつ落ちてきている父は、行っても元気がなく、口数も少なく、無表情なことが多くなってきた。

先日のこと。

食事は、おかゆだけしか食べられず、それも、ベッドを起こすと、尾てい骨がすぐに痛くなるので、1杯のおかゆを途中で2回もベッドを倒して休みながら。
食後のお薬は、小さなすり鉢で「つぶつぶ」を磨り潰して砕いて、スプーンで3回に分けて飲む。
その後、歯磨きタイムで、歯磨きスポンジとティッシュにお湯を入れたコップを沿えて用意する。

…などの一連の儀式のようなことの繰り返しをお手伝いする。

父は、食事が終わって、ほんの少し元気がでたのか、暫く横になっているうちに
「よし。さあ起きよう。トイレに行くけん、起こして」
…といい始めた。
以前はよく言っていたことだけど、最近はずっと言わなくなって、もう父は「起きて歩く」ことを諦めたのか、もしかしたら忘れつつあるのだろうかと思っていた。

「えーっ、トイレいきたいん? 看護師さん呼んであげるよ」
「呼ばんでええ。自分で行ける」
「私、お父さんのこと、よう支えてあげれんもん、転んで怪我でもしたら大変やもん」
「支えんでもええ、自分で行くけん、早うそこのベッドの枠を外して」

言い出したら聞かないので、とりあえずベッドの枠をひとつ外す。
ベッドの枠は、自分で外せないように、本人には見えないように紐で縛ってある。
父は片足を下に降ろして、仰向けでいざるようにしてベッドから降りようとしている。
枠を外しても、寝返りもできない父は、自分ではとてもベッドから降りることはできないのだからと思ったのだけど、
本当に渾身の力をこめてずるずると動いているのを見て、怖くなってきた。

「お父さん、トイレに行きたいんだったら、看護師さんを呼ぼうよ。
私はお父さんを支えてトイレまで連れていってあげられんし、
いつもは、看護師さんにおむつを取り替えて貰いよるんやろう?
それに、この服も、私、脱がせてあげられん。
これを脱がないと、おしっこもできないし、看護師さんでないと脱がせられんよ。」

いろいろと、このままでトイレに行くのは無理だと説得しようと言ったけど、

「全く、アンタは役にたたんのー。役にたたんのは構わん、言うとおりにしたらええんや。
服を脱がんでもトイレはできる。男性と女性は違うんや。
理屈ばっかり言うな。癇に障る。」

父はベッドから降りれば自分で行けるし、介護服など脱がなくてもトイレはできると言い張る。
なんとか、父の気持ちを落ちつかせたいけど、言えば言うほど頑固になって、
ベッドの下にスリッパがあるので、それを用意するだけでいい、あとは自分でできるとか、
私が父の意にそぐわないことを言うと、眉間に皺を寄せて顔を歪めて、本当にイライラした、この上なく不機嫌な顔をする。

この顔、見慣れてきちゃったなあ。
この顔を、父の思い出に残したくないなあ、、、
前歯がなくて、にこにこ笑っている父の顔をたくさんインプットしておきたいんだがなあ…

普段は、殆ど父に反対したり反論はしないけれど、ちょっとでも「それは無理だよ」と、
理詰めで諭されるのが、父は癇に障るんだ。
わかってるけど、大怪我をしたら…とか、そんな場面でどうやって父を落ち着かせたらいいのか戸惑い、
私も「お父さんは自分でトイレに行くのは無理!」と説得してしまう。
なんちゅう頑固オヤジじゃ!と、内心私もイライラしてついつい声もきつくなっている。

…結局父は「もうええ! 何も言うな、何もするな、ほっといてくれ」

ということで、いざこざに疲れ果てて、暫くうとうとして、落ち着きを取り戻した。
そこで…
「アンタやけん、まあしょうがないけど、これが○○さん(パートナー、ヒロコさんの苗字)やったら大喧嘩するとこやった」
というのだ(-_-;)

ヒロコさんには、もっと理不尽な我儘、ブチまけまくっているんだな、、、
大喧嘩だなんて…ヒロコさんは、面と向かって反抗しないし、喧嘩になんかなるわけない。
お父さんが一方的に我儘で怒鳴り散らしてるんでしょ、、、、



でも、父の超絶イライラが収まって、仲直り?できてよかった。
最後には心をこめて手を握って帰ってきた。


介護服というのは、自分で脱ぎ着できないようになっている。
父は、認知も進みつつあるし、自分で点滴を外してしまったこともあり、これを着ることを義務付けられている。
点滴も外れている今も介護服を着るのは、自分で脱いでおむつを外したり、自力で用便しようとして、衣服などを汚さないだめなのだ。

私は、介護服のボタンの外し方は知っているけれど知らないふりをしている。
いったん外したら、父は絶対にそのままにしておけと言い張るに決まっているので、
そこを無理やりボタンをかけることを想像したらとんでもないので…
そうでなくても、いろいろトラブルで、レッスンに間に合わないことも何度かあった。
すべて看護師さんとヒロコさんにお任せしている。
…結局逃げの体勢なんだな。

なので、背中が痒いというときは、首から手をつっこんで、めっちゃ不自然な体勢で気が済むまでガリガリ掻いてあげるので、私は腰が痛い(^_^;)
「介護は、腰!」と、エキスパートkaedeちゃんが仰ってますが、
ホントに、身体の向きや位置を変えるだけでも、全体重を腰で支えてやらなきゃいけないので、「介護は腰が要!!」と実感します。


また別の日、おかゆ以外食べられなくなってしまった父に、大根おろしはどうだろう…と思って、聞いたところ、大好物とのこと。
やったー!とばかり、採れたて泥つき大根のおろしたてを持っていった。
「ああ、ええ匂いやなあ…」といって、口に運んだところ、辛すぎてダメだった(T_T)

これなら食べられるかな…という、好物の梅干も、山芋も、果物も、だんだん食べられなくなってきている。


ふと、高村光太郎の「レモン哀歌」を思い出した。
今でも暗唱できます、、、

でも、まだそんな時期じゃない。
それでも、ひと匙でも、無理やりじゃなくて、「ああ、美味しい」と思って食べられるものをあげたい。


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