
話を小説に戻しますと、登場人物の名前がキモイですね。警視庁生活安全総務課管理官牛袋サト、謎のじいさん駿河博士、御茶ノ水署では上から読んでも下から読んでも「斉木斉(さいきひとし)」と合図のゴホンために付けられたような「五本松小百合」。斉木斉は斉藤斉でもよかったのでは。物語の半分以上がその斉木と梢田威のやりとり。梢田はタイミングと言うか間が悪く、言いたいことを言えないもどかしい感じがよく出てました。一方で斉木は抜け目ないですね。もらいタバコの他、お茶代や昼食代を部下に集(たか)るなどもってのほかです。そう思わせるほどキャラがしっかりと確立され、そのキャラがぶれないところにこの小説の核があるような気がしました。
人物相関関係図では、牛袋サトが駿河博士にぞっこんで、駿河は学生ホストの内海紀一郎に色目使い。こちらの関係にもキモさがありました。また小説中疑問に思ったことは、五本松の覚せい剤隠し。フィクションとはいえ誤解を招きますよ。終始捜査令状を取らなかったことにも蟠(わだかま)りが残りました。ペット・クリニックやレンタルボックスはナイスアイディアですが、登場人物の中から犯人をあげるとしたらサプライズはないかも。