♪ 牛よ、辛かろ。いまひと辛抱よ。辛抱する木に、金がなる ♪
南部牛追い歌から。
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牛は田圃にいる。田圃を耕している。牛の体が湯気を上げている。へとへと喘ぐ口から涎が垂れ下がっている。朝から夕方までずっと鋤を引いた。日が山の端に沈んでいく。もうすぐだよ。もう終わりだよ。お百姓が、後ろから牛に声を掛ける。
牛よ、辛かろう、もう一辛抱だよ。さあ、日が暮れるよ。お前のおかげで田が見事に耕せたよ。
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昔は、牛も、お百姓も、辛抱辛抱の暮らしをしていた。辛抱は牛を造る人を造る。こころがそれで通い合った。辛抱そのもの、辛抱の暮らしそのものが、金ぴかに光って輝いていたのだろう。