それで採算が合っている。
差し引きゼロになっている。
苦労をしているというのが引き算。
苦労を癒してくれているものがいるというのが足し算。
これで収支が合う。
どんどん減って行くという嗟嘆を、どんどん埋めて行ってくれるものがある。
癒やしが溢れている。
大空がある。広々とした大空がある。深い大空がある。高い大空がある。
大空がわたしを癒してくれている。
ああだ、こうだとつまらないことばかりを考えて、小さく凋（しぼ）みそうになって行く己を、大空が見て、ふくらませふくらませしている。
おお、おお、おおおお、おお。いきなりお日様がさんさんと差し込んで来た。
明るい。眩い。どこにもここにも光が溢れている。
隣の家の屋根瓦がきらきら光っている。
山里は静かだ。
静かな山里にいて、差し込んでくる光を眺めている。
ぼんやりしているだけで、他にはなんにもしていない。
外に出て、畑で、小葱を摘んだ。籠一杯に。
お昼はカツ丼。ここにその小葱を少し加えてもらった。
葱の匂いがぷんとした。
おいしくいただいた。
☆
有り難いことだなあ。植物は､人間のお腹に入って、人間の活力となる。
そういう役目をしてくれている。
そういう役目をしてくれる植物といっしょにこの地上に生きている。
それで、我々人間が日々を生きていくことができる。
☆
みんなの助けを得ているんだ。
「人間をしているおれの方が偉い」なんかは言えないなあ。
日頃大きな顔をしているけど、傲慢になっちゃいけないよなあ。
なるようにしかならぬ。
なるようにしかならぬものを、どうにかしようと企んで、いじくる。いじくってもどうにもならぬ。
それが分かる。そこで諦念が起きる。
手を放す。
委任の心になる。
いいんだよいいんだよ。われわれがどうしようとこうしようと、大宇宙は健康そのものなんだから。盤石なんだから。
安定した基盤の上で、我々は不動の揺るぎない生活をしているんだから。
などと思って、落ち着く。やっとやっと落ち着く。
☆
しようがないなあ。この繰り返し。毎日この繰り返し。
雨音で目が覚めた。
ぽっつりぽっつり。
障子戸の向こうの闇夜を、落ちている。
たいした降りではなさそうだ。
まだ真夜中の2時にもなっていない。
また寝るか。
