ふふっふ。ふふっふふ。
両者の思惑が一致するということもあれば、一致しないということもある。一致したら嬉しくなる。
大塚文彦先生に、わたしは高校1年生のときに出遭った。島崎藤村に酷似しておられた。鼻の脇には小さな黒い疣があった。当時、もう50代後半ではなかっただろうか。
わたしは相愛の仲だったと思っている。先生と僕は気心が通っていたと推測する。推測に過ぎないのだが。
先生の国語の授業が大好きだった。その頃は現代文と古文と漢文に授業が分かれていた。先生は現代文を担当されていた。わたしは先生の煽(おだ)てに乗って、ノリノリに乗っている少年だった。つまり、ワクワクして聞いていたのだ。先生の講義がこころに鐘を成らしていたのだ。わたしは先生が提示する現代文の楽しさを楽しんだ。
先生が生徒たちに質問される。そして最後の辺りで、私の名前が呼ばれる。「で、きみはどう思うかね?」と聞かれる。わたしは全体を締め括る。先生は「それでよろしい。君の考えは正しい」と肯いて下さる。
わたしは内心で有頂天になる。なにしろ大好きな先生が肯定して下さったのだ、わたしの意見に。
☆
会いたい。大塚文彦先生に会いたい。高校1年のときに出遭った。出遭いは1年で終わった。わたしをいささかなりとも文学へ目覚めさせてくれた。彼はわたしの尊い恩師である。
会っても、しかし、わたしはただもじもじしているだけだろうけど。
会ってまた現代文の講義を聴きたい。うっとりとなって聞きたい。
何かの行動をするわけではないのだが。