短編童話「風と空と山」
ゴウゴウゴウゴウと風が空で唸っていました。ほかにどんな言葉も持ち合わせがないということなのでしょうか。ただただ同じようにいつまでもいつまでもゴウゴウゴウゴウと空の声と風の声が響いていました。風だけではそんな声は出せないのです、そこに空がないとそんな声は出て来ないのです。だから、これは二人の声なのでありました。風の気持ちを汲み取ってあげるために、空も労を厭わずに、音が出るように声が出るように、気持ちが表現できるように、してあげているのでした。1月の寒そうな山々がそこへ立って聞いていました。折角空と風が自分を表現しているのならそれを聞いてあげる者もいなければなりません。山がその役目を引き受けたのでした。この世にはそういう風にちゃんと役目役目が生まれて来るようになっていました。そうやって互いに相手も立てながら立てながら暮らしているのでありました。