The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

Sherlock : The Abominable Bride 感想と検証 : (4)

2016-02-01 | The Abominable Bride
― The Abominable Bride : 『忌まわしき花嫁』感想と検証 (4) ―



続きです。


今回一番のネタバレしておりますのでお含みおき下さいませ。


エメリアらしき姿を追った2人が屋敷に踏み込んだ時には既にユースタス卿が殺されてしまって
いたのですが、ジョンの後ろにはエメリアの幽霊(?)が・・・だんだんホラーになって来ました。
そしてレストレードも駆けつけ ユースタス卿の遺体を検分すると謎のメモが。
”Miss me ?” と書かれています。 ここで出ました! やっぱりモリアーティーの影が?
ここでのセリフ、”to eliminate the impossible ・…and observe what remains・・・(自分の
脳を使え、不可能なものを除外しろ。この場合は幽霊だ。 そしてし残った物が真実だ) は 
”The Sign of Four” 『四つの署名』の有名な語録である ”When you have eliminated the
impossible whatever remains, however impossible, must be the truth”
(不可能な物を除外し
残った物が何であれそれが真実だ)からの引用で、このフレーズは ”The Hounds of the
Baskervilles”
でも引用されていました。

この ”Miss me ?" は ”His Last Vow” の最後に出て来たメッセージなので、現代と19世紀が
混線しているのかと感じます。と言うか、シャーロックの頭の中が混乱して来ているのかしら?と
感じ始めます。

モリアーティーがリコレッティ事件とどの様に関連してくるのか、益々複雑になってくるのですが、
いずれにしてもこのメモを見てからシャーロックは自制心を失い混乱します。


そしてディオゲネスクラブを訪れると、何故かマイクロフトがこのメモを持っています。
「ライヘンバッハで死んだ筈だ」と混乱するシャーロックですが、マイクロフトの部屋にも
ライヘンバッハの滝の絵が飾られています。


↑ 左がディオゲネスクラブにあるライヘンバッハの滝の絵。 右が ”Reichenbach Fall"の時の絵。(同じです)


ライヘンバッハの滝ではモリアーティの死体は見つからなかったが、万一生きているのであれば
復讐の為シャーロックを訪れるだろう。待って居ると言うシャーロック。

221Bでは2日間飲まず食わずで瞑想にふけります。




↑ グラナダ版『犯人は二人』でホームズが瞑想している手の形が同じです(これも以前載せましたけど)。

この時マインドパレスの中では・・・目の前にリコレッティ―事件を報じる新聞記事の紙片が
飛び交っています。次々手に取り確認するシャーロック。



この場面の作りが何時もながら素晴らしいのですねぇ。
そして、遂にコカインを手に取るシャーロックです。



そこにいよいよモリアーティ登場なのですが、今回のモリアーティはこれまで以上に過剰なほど不気味で
薄気味悪さが際立ちます。







2人の対決になるのですが、滝に落下して死んだ筈なのが 現代版での銃を咥えて自殺した事に変化
しているのは シャーロックのマインドパレスが混乱してきているせいなのか、同じ様に銃を咥えて
自殺したエメリアからの連想という事なのかしら?
兎に角ここでのシーンはホラーに加え、スプラッター風にもなっています。

そして モリアーティの ”Because it's not the fall that kills you. It's not the fall.
It's the landing”
 (君を殺すのは飛び降りじゃないんだよ。着地だ)
このセリフは シャーロックがビルから飛び降りた時の事を言っている様なのですが、ワタクシの
勝手な解釈は、やはり本来のライヘンバッハでの対決に鑑み ”the fall” は”滝を指し、(滝を
落ちて死ぬのではなく、地上で死ぬんだ)にもかけている様に思います。
”滝”を指す場合 本来は複数形 ”falls” にするべきなので 違うかもしれませんが・・・・・。

いずれにしても、この時点でも又シャーロックのマインドパレスが混乱している様に思えます。 
がたがた部屋が揺れ始め、そのままジェット機の着陸シーン ”landing”へと続く画面構成は何時も
ながら素晴らしい画面転換だと感じます。



結局この時点で、”His Last Vow” の最後のシーン、”Miss me?" を知って呼び戻され着陸する
までの数分間のシャーロックのマインドパレス内での出来事(夢)であった事が判明します。
機長の顔を見たシャーロックが驚きます。レディー・カーマイケルにそっくりでした。





何故 “Miss me ?” からエメリア・リコレッティ―事件に飛んでしまったのかと考えると、
モリアーティーが生きているかも知れないと言う恐怖にも似た疑惑 → この事からマインドパレスの
奥底に潜んでいた モリアーティと同じ様に銃を咥えて自殺した不可解なエメリア・リコレッティ―の
事件を呼び覚ましてしまった → その為には自分自身が事件現場に赴かなければならない → マインドパ
レスの中でのヴィクトリア朝のシャーロック・・・と言う流れになったのでしょう。

ここで考えるのですが、ヴィクトリア朝での描写がシャーロックのマインドパレス内の出来事である
とすれば、新聞の切り抜きを探したり、モリアーティーとの部屋での対決が又マインドパレスの出来事
ですから、二重のマインドパレスになっているのですね。
シャーロックのマインドパレスは”多層構造” になっている事が分かります。
”His Last Vow” でメアリーに銃撃されて昏睡状態に陥った時のマインドパレスでもモリアーティーは
階段を下った下層階(心の一番奥底)に居ましたし。
ただ、今回のマインドパレスは今までの『記憶術』としてよりも、シャーロックの深層心理の現れ、描写
なのだと思われます。
今回何故ヴィクトリア朝なのかについても「マインドパレス」を使う事によって 19世紀と21世紀を繋げた
と言う手法は成程なぁと感心させられますね。
夢、深層心理の現れなので 所々現代の出来事と19世紀の出来事が入り乱れたりするのも納得したりしました。
深層心理という観点で思い返してみると、冒頭の場面で ”An old one, very old. Have to go deep inside
myself”
 (古い、古い事件だ。自分の心の奥深くに入って行かなければ)。と言っているし、馬車の中では 
”Deep waters, I shall have to go deeper still" (深い、深い謎だ。僕ももっと深く潜らなくては。)と
言っていました。
最初にこの点をしっかり理解出来ていたらもっと早い段階で今回のテーマが把握出来たのだろうと思いました。
因みに ”deep waters” は正典 ”The Speckled Band” 『まだらの紐』にあるホームズの言葉
”These are very deep waters” 「かなり深い水域がありますね」の引用だと思います。


話が前後してしまいますが、突然思い出したのでここに書いて置きますが、今回も又”ジョンの椅子” 
に関しての話題が出てきます。
S3でも何度か”ジョンが座っていない椅子”に関するセリフがあり、ジョンの居ないシャーロックの寂しさ
が表されていますが、フト思い出してみたら このテーマは正典 ”The Empty House” 『空き家の冒険』
に書かれていた ”・・・I could have seen my old friend Watson in the other chair which he has
so often adorned.
 (我が旧友のワトソンが非常にしばしば美観を添えていたもう一つの椅子に座っている
のを見られたらいいのに・・・・)に由来していますね。
BBC版で何度か出て来た ”ジョンの椅子”は離れてしまったジョンに対するシャーロックの寂しさ、
心もとなさを表す象徴として描かれているので、椅子のシーンを観る度胸が痛みます。



又長くなりそうなので次に続けます。




・・・・・to be continued です。



← Sherlock : The Abominable Bride 感想と検証 : (3)
→ Sherlock : The Abominable Bride 感想と検証 : (5) 





コメントを投稿