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一粒のタイル2

平和をつくる者は幸いです。その人たちは神の子どもと呼ばれるからです。(マタイ5:9)

連載42 ヨハネ4章のもう一つの読み方・その3(続編28)

2025-06-16 06:20:27 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(28)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

ヨハネ4章のもう一つの読み方・その3
 ジュンが言った。
「新約の時代の弟子たちが町へ買い物に出掛けて(ヨハネ4:8)舞台から退場したことで時代は【新約→→旧約】の場面転換をしたんだね。だとしたら、弟子たちが町から戻って来た時(ヨハネ4:27)に、時代は逆向きの【旧約→→新約】の場面転換をして元に戻ったのかな?」

ヨハネ4:27 そのとき、弟子たちが戻って来て、イエスが女の人と話しておられるのを見て驚いた。

 エリが言った。
「そういうことになるよね。舞台はサマリアのままだから、戻った後の時代もピリポがサマリア伝道をした使徒8章の時代のままなのかな?」
 ノンが言った。
「そうなんだろうね。この弟子たちが町から戻って来てからのヨハネ4章のイエス様のことばも、ものすごく興味深いよ。」

ヨハネ4:35 「あなたがたは、『まだ四か月あって、それから刈り入れだ』と言ってはいませんか。しかし、あなたがたに言います。目を上げて畑を見なさい。色づいて、刈り入れるばかりになっています。
36 すでに、刈る者は報酬を受け、永遠のいのちに至る実を集めています。それは蒔く者と刈る者がともに喜ぶためです。
37 ですから、『一人が種を蒔き、ほかの者が刈り入れるということばはまことです。
38 わたしはあなたがたを、自分たちが労苦したのでないものを刈り入れるために遣わしました。ほかの者たちが労苦し、あなたがたがその労苦の実にあずかっているのです。」

 ノンは続けた。
刈り入れるという言葉が何度も使われているでしょ?たくさん出て来るから、妙に気になるんだよね。これも使徒8章のピリポのサマリア伝道と関係があるのかな?」
「あっ、そうか!」
 使徒8章を読んでいたジュンが言った。また新たな発見をしたようだ。
「この刈り入れるって、聖霊を受けることと関係があるんじゃないかな?」
 ノンとエリが前のめりになった。
「エッ?」
「どうして?」
 ジュンが続けた。
「使徒8章には、ペテロとヨハネもサマリアに向かったことが書かれているよ。イエス様は、このことを弟子たちに言っているんじゃないかな?」

ヨハネ8:12 人々は、ピリポが神の国とイエス・キリストの名について宣べ伝えたことを信じて、男も女もバプテスマを受けた。
13 シモン自身も信じてバプテスマを受けると、いつもピリポにつき従って、しるしと大いなる奇跡が行われるのを見ては驚いていた。
14 エルサレムにいる使徒たちは、サマリアの人々が神のことばを受け入れたと聞いて、ペテロとヨハネを彼らのところに遣わした。
15 二人は下って行って、彼らが聖霊を受けるように祈った。
16 彼らは主イエスの名によってバプテスマを受けていただけで、聖霊はまだ、彼らのうちのだれにも下っていなかったからであった。
17 そこで二人が彼らの上に手を置くと、彼らは聖霊を受けた

 ノンが言った。
「なるほど、聖霊を受けて初めて刈り入れたことになるんだね。」
 エリも言った。
「ヨハネ4:37の『一人が種を蒔き、ほかの者が刈り入れる』は、ピリポが種を蒔きペテロとヨハネが刈り入れるということなんだろうね。」
 ジュンも続けた。
「ヨハネ4:42の『もう私たちは、あなたが話したことによって信じているのではありません。自分で聞いて、この方が本当に世の救い主だと分かったのです。』も、サマリア人たちが聖霊を受けたことを裏づけているね。聖霊を受けるとイエス様が内に入って一人一人に語り掛けて下さるから自分で聞いて、イエス様のことが分かるようになるんだね。」

ヨハネ4:39 さて、その町の多くのサマリア人が、「あの方は、私がしたことをすべて私に話した」と証言した女のことばによって、イエスを信じた。
40 それで、サマリア人たちはイエスのところに来て、自分たちのところに滞在してほしいと願った。そこでイエスは、二日間そこに滞在された。
41 そして、さらに多くの人々が、イエスのことばによって信じた。
42 彼らはその女に言った。「もう私たちは、あなたが話したことによって信じているのではありません。自分で聞いて、この方が本当に世の救い主だと分かったのです。

 ノンは感動していた。
「なるほど~。これは実際は使徒の時代のことだから、ヨハネ4章でサマリア人たちが会ったイエス様は地上生涯のイエス様ではなく、一人一人の内に入って聖霊を通して語り掛けているイエス様なんだね。」
 エリも感動に浸っていた。
「ここに登場しているイエス様は、十字架に掛かる前の地上生涯のイエス様だと思いがちだけど、実は復活後に天に帰ったイエス様だったんだね。天のイエス様が聖霊を通して一人一人の内に語り掛けて下さっているんだね。ヨハネの福音書って、本当にすごいな~。」

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連載41 ヨハネ4章のもう一つの読み方・その2(続編27)

2025-06-02 06:43:04 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(27)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

ヨハネ4章のもう一つの読み方・その2
 ジュンはうっとりしていた。
「もう何度も言っているけど、ヨハネの福音書って、本当に面白いね。でも、ちょっと気になるんだけど、7節は列王記のエリヤの時代ってことだったよね?」

ヨハネ4:7 一人のサマリアの女が、水を汲みに来た。イエスは彼女に、「わたしに水を飲ませてください」と言われた。

「ヨハネ1章1~6節は新約の時代で、7節で急に舞台は旧約の時代に入れ替わるのかな?」
 ここで、エリが面白いことを言った。
「もしかしたら、次の8節が場面転換の役割を担っているのではないかな?」

ヨハネ4:8 弟子たちは食物を買いに、町へ出かけていた。

「以前からワタシは、この8節には何となく違和感を覚えていたんだ。なぜ、ここで弟子たちが町へ買い物に行ったことが書かれているのか、ちょっと引っ掛かっていたんだよね。でも、分かった気がするよ。」
「何が分かったの?」
「分かった?」
 ジュンとノンも興味津々だ。エリは続けた。
「イエス様は神様だから、旧約の時代へも使徒の時代へも自由に行き来できるんだよ。でも、弟子たちは神様じゃないでしょ。弟子たちは一つの時代にしか居られないんだ。今の場合、ヨハネ4章1~6節で弟子たちは使徒の時代にいるから、イエス様が列王記のエリヤの時代に居る間は弟子たちは舞台から退場して町へ買い物に行ってもらった。そういうことじゃないかな。」
 ジュンのテンションが再び上がった。
「すごい!ホントにそうだね!よく気付いたね、エリ。」
 ノンもエリをほめたたえた。
「僕も感動しているよ。すごいよ、エリ。8節の『弟子たちは食物を買いに、町へ出かけていた』には、そんな意味が込められていたなんて。本当にヨハネの福音書は面白すぎるね。」
 エリもうれしそうだ。
「ありがとう。」

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連載40 ヨハネ4章のもう一つの読み方・その1(続編26)

2025-06-01 13:23:02 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(26)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

ヨハネ4章のもう一つの読み方・その1
「きょうのワタシたちのこれまでの話では、ヨハネ4章は旧約聖書の列王記の預言者エリヤの時代と重ねられている、ということになっていたよね。」
 エリが言うと、ジュンがすぐに反応した。
「うん。イエス様がサマリアの女に水を所望した場面は、エリヤがツァレファテのやもめに水を所望した場面と重ねられているということだったね。」

ヨハネ4:7 一人のサマリアの女が、水を汲みに来た。イエスは彼女に、「わたしに水を飲ませてください」と言われた。

列王記第一17:10 彼はツァレファテへ出て行った。その町の門に着くと、ちょうどそこに、薪を拾い集めている一人のやもめがいた。そこで、エリヤは彼女に声をかけて言った。「水差しにほんの少しの水を持って来て、私に飲ませてください。」

 エリはうなずき、そしてノンに尋ねた。
「うん。そうだとするとノン、このヨハネ4章には、さらに使徒たちの時代も重なっているということ?」
 ノンは答えた。
「その筈だよ。皆で一緒に読み解いてみようよ。まず4章1節。」

ヨハネ4:1 パリサイ人たちは、イエスがヨハネよりも多くの弟子を作ってバプテスマを授けている、と伝え聞いた。それを知るとイエスは、

「この記述は、変だよね。マタイ・マルコ・ルカの福音書にはイエス様がバプテスマを授けていたことなど一言も書いてないよ。」
 ノンが言うとジュンは2節も変だと指摘した。

ヨハネ4:2 ──バプテスマを授けていたのはイエスご自身ではなく、弟子たちであったのだが──

「この2節も、おかしいよね。弟子たちがバプテスマを授けていたこともマタイ・マルコ・ルカは書いていないよ。」
 エリがうなずきながら言った。
「うん、うん。確かに変だね。すると、やっぱりここには使徒の時代のことが書かれているということになるんだね。使徒の時代には、弟子たちは確かにバプテスマを授けていたからね。イエス様は聖霊という形で弟子たちの中にいたから、ヨハネは2節で『バプテスマを授けていたのはイエスご自身ではなく』という表現を用いたんだろうね。」
 ジュンが興奮しながら言った。
「そうか!そうか!イエス様は聖霊の形で弟子たちの中にいたから、ヨハネはまず1節で『イエスが・・・バプテスマを授けている』と書いたんだね。面白いね~!」
 ノンが続けた。
「うん。だから、3~5節もやはり使徒の時代のこと、ということなんだろうね。」

ヨハネ4:3 ユダヤを去って、再びガリラヤへ向かわれた。
4 しかし、サマリアを通って行かなければならなかった。
5 それでイエスは、ヤコブがその子ヨセフに与えた地所に近い、スカルというサマリアおられた。時はおよそ第六の時であった。

「イエス様はサマリアに来られたんだけど、使徒の働きでサマリアの場面が出て来るのは使徒8章だよ。」

使徒8:1 サウロは、ステパノを殺すことに賛成していた。その日、エルサレムの教会に対する激しい迫害が起こり、使徒たち以外はみな、ユダヤとサマリアの諸地方に散らされた。
2 敬虔な人たちはステパノを葬り、彼のためにたいへん悲しんだ。
3 サウロは家から家に押し入って、教会を荒らし、男も女も引きずり出して、牢に入れた。
4 散らされた人たちは、みことばの福音を伝えながら巡り歩いた。
5 ピリポはサマリアの町に下って行き、人々にキリストを宣べ伝えた。

 ジュンの興奮がさらに増し加わった。
「そうか!そうか!そうか!そうなんだね!ヨハネ4:1の『イエスがヨハネよりも多くの弟子を作ってバプテスマを授けている』というのは、ペンテコステの日以降に多くの人々がバプテスマを受けて教会が急成長したことを指すんだね!それがユダヤ人たちの反発を招いてステパノが殺されて、弟子たちが散らされてサマリアなどの地方へ出て行くことにつながったんだね。」
 いつもは冷静なエリも興奮気味に言った。
「そうか!エルサレムから散らされてサマリアで伝道したピリポは聖霊を受けていたから、ピリポの中にはイエス様がいたんだね!だからヨハネは4章でイエス様がサマリアに行ったと書いたんだね!」
 ノンも熱くなった。
「そうか~!ヨハネ4:6に『イエスは旅の疲れから』とあるのは、背後にステパノ殉教と教会への迫害があったからかもしれないね。やむなくエルサレムを離れなければならなかったのだから、元気というわけにはいかない、そういうことじゃないかな。」

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連載39 イエスを信じる=聖霊を受ける(続編25)

2025-05-25 06:22:54 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(25)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

イエスを信じる=聖霊を受ける
 さて、ノンはまた新たな発見をしたようだ。
「ヨハネ2章の11節に『弟子たちはイエスを信じた』とあるでしょ。それから、23節にも『多くの人々がイエスの行われたしるしを見て、その名を信じた』と記しているでしょ。」

ヨハネ2:11 イエスはこれを最初のしるしとしてガリラヤのカナで行い、ご自分の栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた

ヨハネ2:23 過越の祭りの祝いの間、イエスがエルサレムにおられたとき、多くの人々がイエスの行われたしるしを見て、その名を信じた

「ヨハネ2章がペンテコステの日の出来事と重なっているとしたら、『イエスを信じる=聖霊を受ける』ということになるんじゃないかな?」
 ジュンが聞いた。
「どうして?」
「使徒の働きには聖霊が注がれた順番が記されているでしょ。聖霊は先ずガリラヤ人に注がれて、次にユダヤに、それからサマリア人に、そして最後に異邦人に注がれたんだよね。」

【ガリラヤ人】
使徒2:1 五旬節の日になって、皆が同じ場所に集まっていた。
2 すると天から突然、激しい風が吹いて来たような響きが起こり、彼らが座っていた家全体に響き渡った。
3 また、炎のような舌が分かれて現れ、一人ひとりの上にとどまった。
4 すると皆が聖霊に満たされ、御霊が語らせるままに、他国のいろいろなことばで話し始めた。

【ユダヤ人】
使徒2:37 人々はこれを聞いて心を刺され、ペテロとほかの使徒たちに、「兄弟たち、私たちはどうしたらよいでしょうか」と言った。
38 そこで、ペテロは彼らに言った。「それぞれ罪を赦していただくために、悔い改めて、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けなさい。そうすれば、賜物として聖霊を受けます
39 この約束は、あなたがたに、あなたがたの子どもたちに、そして遠くにいるすべての人々に、すなわち、私たちの神である主が召される人ならだれにでも、与えられているのです。」
40 ペテロは、ほかにも多くのことばをもって証しをし、「この曲がった時代から救われなさい」と言って、彼らに勧めた。
41 彼のことばを受け入れた人々はバプテスマを受けた。その日、三千人ほどが仲間に加えられた。

【サマリア人】
使徒8:14 エルサレムにいる使徒たちは、サマリアの人々が神のことばを受け入れたと聞いて、ペテロとヨハネを彼らのところに遣わした。
15 二人は下って行って、彼らが聖霊を受けるように祈った。
16 彼らは主イエスの名によってバプテスマを受けていただけで、聖霊はまだ、彼らのうちのだれにも下っていなかったからであった。
17 そこで二人が彼らの上に手を置くと、彼らは聖霊を受けた

【異邦人】
使徒10:24 そして次の日、ペテロはカイサリアに着いた。コルネリウスは、親族や親しい友人たちを呼び集めて、彼らを待っていた。
44 ペテロがなおもこれらのことを話し続けていると、みことばを聞いていたすべての人々に、聖霊が下った
45 割礼を受けている信者で、ペテロと一緒に来た人たちは、異邦人にも聖霊の賜物が注がれたことに驚いた。

 ノンは続けた。
「さっき言ったように、ヨハネ2:11にはガリラヤ人の弟子たちがイエスを信じたことが、ヨハネ2:23にはユダヤ人たちがイエスを信じたことが書かれているでしょ。そして、ヨハネ4章にはサマリア人たちと異邦人たちがイエスを信じたことが書かれているよ。」

ヨハネ4:39 さて、その町の多くのサマリア人が、「あの方は、私がしたことをすべて私に話した」と証言した女のことばによって、イエスを信じた
40 それで、サマリア人たちはイエスのところに来て、自分たちのところに滞在してほしいと願った。そこでイエスは、二日間そこに滞在された。
41 そして、さらに多くの人々が、イエスのことばによって信じた

ヨハネ4:49 王室の役人はイエスに言った。「主よ。どうか子どもが死なないうちに、下って来てください。」
50 イエスは彼に言われた。「行きなさい。あなたの息子は治ります。」その人はイエスが語ったことばを信じて、帰って行った。
51 彼が下って行く途中、しもべたちが彼を迎えに来て、彼の息子が治ったことを告げた。
52 子どもが良くなった時刻を尋ねると、彼らは「昨日の第七の時に熱がひきました」と言った。
53 父親は、その時刻が、「あなたの息子は治る」とイエスが言われた時刻だと知り、彼自身も家の者たちもみな信じた

 ジュンが驚きながら言った。
「ホントだ~!ヨハネの福音書の『イエスを信じた』も、【ガリラヤ人→ユダヤ人→サマリア人→異邦人】になってるね!だから『イエスを信じた=聖霊を受けた』なんだね!」
 エリもうなずいた。
「確かに、そうだね。ヨハネ4章の王室の役人は異邦人で使徒10章のコルネリウスと重ねられているということなんだね。」
 ジュンは大喜びだ。
「これも、すごい新発見だね。すごいよ、ノン!」
「ありがとう、ジュン。」

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連載38 三位立体の書(続編24)

2025-05-07 12:05:39 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(24)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

三位立体の書
 すると、ジュンが唐突に言った。
「三位りったい・・・」
 ノンが聞き返した。
「三位一体?」
「じゃなくて、三位立体だよ。ヨハネの福音書って、父・子・聖霊を立体的に感じることができる書だなって、ふと思ったんだよね。この立体感によって神様の愛の分厚さが感じられるようになっているんじゃないかな?」
「なるほど、三位立体か・・・」
「聖霊は、父と子が天から遣わして、弟子たちの内に住むとヨハネ14章と15章でイエス様が言っているでしょ。」

ヨハネ14:16 「そしてわたしが父にお願いすると、父はもう一人の助け主をお与えくださり、その助け主がいつまでも、あなたがたとともにいるようにしてくださいます。
17 この方は真理の御霊です。世はこの方を見ることも知ることもないので、受け入れることができません。あなたがたは、この方を知っています。この方はあなたがたとともにおられ、また、あなたがたのうちにおられるようになるのです。」

ヨハネ14:26 「しかし、助け主、すなわち、父がわたしの名によってお遣わしになる聖霊は、あなたがたにすべてのことを教え、わたしがあなたがたに話したすべてのことを思い起こさせてくださいます。」

ヨハネ15:26 「わたしが父のもとから遣わす助け主、すなわち、父から出る真理の御霊が来るとき、その方がわたしについて証ししてくださいます。」

 ジュンは続けた。
「だから、モーセやエリヤやエレミヤなど旧約の時代の預言者たちの内にいる聖霊も天の父と子が遣わしたということになるよね。」
「確かに。」
「さっき、ヨハネ2章にはモーセの時代の出エジプトが重ねられているとノンが話したでしょ。」
「うん。」
「このモーセの中には父と子が天から遣わした聖霊がいるんだよね。イエス様と聖霊が内にいるモーセが重なっていることが見えると、ヨハネの福音書が立体的に見えるようになると気付いたんだよ。」
「だから、三位りったいか。」
「そう、三位立体。」
 ジュンとノンの会話を聞いていたエリが、ここで口を挟んだ。
「ちょっと待って。じゃ、ヨハネ2章はモーセの時代よりも、むしろ使徒の時代のペンテコステの日に重ねられているんじゃない?」
「えっ?」
「どういうこと?」
「まず、カナの婚礼の祝祭の場というのが、聖霊が使徒たちに注がれたペンテコステの祝祭にふさわしいでしょ?」
「なるほど。」
「うん。」
「それから、きよめの水をぶどう酒に変えて、そのぶどう酒が前のよりも良いぶどう酒というのは、律法よりも聖霊の方が優れていることを表しているんじゃないかな?」
「確かに。そうかもしれないね。」
 ジュンが同意すると、ノンが言った。
「すると、良いぶどう酒は聖霊ということの他に、イエス様が十字架で流した血とも言えるかもしれないね。」
 うなずきながら、エリが言った。
「じゃあ、ヨハネ2章はモーセの時代よりも使徒の時代だというになるかな?」
 ノンは即座に否定した。
「いや、両方ということで良いんじゃないかな。モーセの時代と使徒の時代の両方だよ。」
 ジュンが何度もうなずいた。
「うん、うん。うん、うん。そうだよね。両方っていうことだよね。三位りったいが、もっと立体的になるよね。」
 エリも納得した。
「そうか~。両方か~。ヨハネの福音書って、本当にすごい書だね。」

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連載37 神様は豊かなお方(続編23)

2025-04-27 10:09:27 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(23)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

第3章 福音の奥義
神様は豊かなお方

 エリは感動していた。
「きょうの語り合いのことをとても期待していたけど、期待していた以上に素晴らしい会になったね。」
 ノンも満足そうだ。
「僕もヨハネの福音書に関する新しい発見をエリとジュンと共有できて、本当にうれしいよ。」
 ジュンもうなずきながら言った。
「本当に、そうだね。私も感動しているよ。でも、あまりにたくさんの新しいことがあったから、もう一度復習したいな。」
 エリが言った。
「うん。それも良いけど、このフードコートにはもうだいぶ長い時間いるから、そろそろ場所を変えない?」
 ノンとジュンも場所を変えることに賛成したので、三人はフードコートを出た。そして歩きながら、なおヨハネの福音書について語り合った。
 ジュンは、うっとりとした表情で言った。
「ヨハネの福音書って、『神様は豊かなお方』だってことが本当に良く分かる書だね~」
「どういう所が?」
 エリが聞くと、ジュンはこう答えた。
「だって、ヨハネの福音書って、表面を読んだだけではマタイ・マルコ・ルカと同じようにイエス様の地上生涯を描いた書だって、誰でも思うよね。でも実は、創世記から列王記まで、さらにはエズラ署やマラキ書の時代までが重ねられていて、それらの時代にもイエス様がいたことが示されているんだよ。イエス様は創世記のヤコブと格闘し、またモーセやエリヤなどの預言者たちの内にいて、それぞれの時代の人々に語り掛けていたんだよ。すごいよね~。」
 ノンも応じた。
「何て言うか、すごく厚みを感じる書だよね。イエス様の地上生涯だけだと、そういう厚みを感じないんだけど、旧約聖書の時代が重なっていると思うと、神様の分厚い愛をマタイ・マルコ・ルカの福音書の何十倍も感じる気がするんだよね。」
 エリも納得したようだ。
「あ~、それで『神様は豊かなお方』だということが良く分かる書というわけだね。それなら、ワタシも同意するよ。ヨハネの福音書には豊かな膨らみのようなものを感じるからね。」
 そして、ジュンは霊性について語り始めた。
「こういうのを『霊的』って言うんじゃないかな?霊性は時間を超えたものの中に感じることが多いと思うんだよね。たとえば古いお寺の境内にいると時間を超えた『何か』を感じるでしょ?この『何か』が霊性だと思うんだよね。」
 ノンもうなずきながら言った。
「『霊性』って、どう表現したら良いのか、なかなか適切な言い表し方が見つからない難しさがあることばだよね。『時間を超えた何か』というのは、まさにその通りだと思うな。忙しくて頭を使っている時はまったく感じず、ボーっとしている時に感じやすいものだよね。」
「私もそう思うよ。神様の分厚い愛に包まれてフワフワと無重力の中で浮いているというか、脱力している時にしか感じないものだよね。エリには、この感覚が分かるかな?」
「アメリカはまだ歴史が浅くて日本のような古いお寺がないから、ちょっと分かりにくいね。でも、今朝、蓮永寺を散歩した時は、そんな風な心持ちになったな。そういうのを『霊性』というのは、何となく分かる気がするよ。」

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連載36「まさにイスラエル人です」の謎解き(続編22)

2025-04-14 05:23:20 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(22)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

「まさにイスラエル人です」の謎解き
「さあ、あと残っているのはヨハネ1章だけだね。ヨハネ2章が出エジプト記なら、ヨハネ1章は創世記ということになるのかな?何か手がかりになりそうな聖句はある?」
  エリが言うと、ジュンが応じた。
「1章に登場するナタナエルも、マタイ・マルコ・ルカの福音書には登場しないヨハネの福音書だけの人物だよね。同じくヨハネの福音書だけのサマリアの女がエリヤの時代のやもめと重なり、ニコデモがモーセの時代に律法を授かったイスラエルの民と重なったように、ナタナエルも創世記の誰かと重なっているのかな?ノンは分かる?」
 ノンは答えた。
「うん。ナタナエルは、創世記のヤコブだと思うよ。」
「ヤコブ?どうして?」
 エリも興味津々で聞いた。
「ヘェ~、どうしてヤコブなの?」
 ノンはヨハネ1章と創世記のヤコブとの関係の説明を始めた。
「鍵となる聖句は、ヨハネ1:47だね。」

ヨハネ1:47 イエスはナタナエルが自分の方に来るのを見て、彼について言われた。「見なさい。まさにイスラエル人です。この人には偽りがありません。」

「まず注目すべきは、『ナタナエルが自分の方に来る』とあるように、ナタナエルがイエス様に近づいて行ったことだと思うよ。イエス様がナタナエルの方に行ったのではなく、ナタナエルがイエス様の方に来たんだよ。これはつまり、ナタナエルが神様の方に行ったということだよ。」
「ナタナエルが神様に近づいたことと創世記のヤコブと、どう関係があるの?」
 ジュンが聞くと、ノンが答えた。
創世記のヤコブは神様と格闘したでしょ?あれはヤコブが神様に必死に祈ったのだと言われているよね。」

創世記32:22 その夜、彼は起き上がり、二人の妻と二人の女奴隷、そして十一人の子どもたちを連れ出し、ヤボクの渡し場を渡った。
23 彼らを連れ出して川を渡らせ、また自分の所有するものも渡らせた。
24 ヤコブが一人だけ後に残ると、ある人が夜明けまで彼と格闘した
25 その人はヤコブに勝てないのを見てとって、彼のももの関節を打った。ヤコブのももの関節は、その人と格闘しているうちに外れた。
26 すると、その人は言った。「わたしを去らせよ。夜が明けるから。」ヤコブは言った。「私はあなたを去らせません。私を祝福してくださらなければ。」
27 その人は言った。「あなたの名は何というのか。」彼は言った。「ヤコブです。」
28 その人は言った。「あなたの名は、もうヤコブとは呼ばれない。イスラエルだ。あなたが神と、また人と戦って、勝ったからだ。」

 ノンは続けた。
「ヤコブは兄のエサウが400人を引き連れて自分の所に向かって来ているという情報を聞いて、兄に復讐されるんじゃないかと非常に恐れた。それで神様に祝福を求めて必死に祈った。20年前にヤコブは兄のエサウになりすまして、父のイサクからの祝福を横取りしてしまっていたからね。創世記27章だよ。」

創世記27:18 ヤコブは父のところに行き、「お父さん」と言った。イサクは「おお。おまえはだれかね、わが子よ」と尋ねた。
19 ヤコブは父に、「長男のエサウです。私はお父さんが言われたとおりにしました。どうぞ、起きて座り、私の獲物を召し上がってください。そうして、自ら私を祝福してください」と答えた。

「20年前のヤコブは父に『エサウです』と言って偽ったけど、20年後のヤコブは神様に名前を聞かれた時に『ヤコブです』と正直に答えたでしょ。だから、神様は正直に答えたヤコブを評価してイスラエルという新しい名前を与えたんだよ。」

 ノンが説明すると、ジュンがハッと気付いて言った。
「そっか~!分かった!だからイエス様は近づいて来るナタナエルを見て、『見なさい。まさにイスラエル人です。この人には偽りがありません』と言ったんだね。面白いね~。」
 これを聞いたエリは、初めはキョトンとしていたが、やがて気付いて言った。
「そういうことか~。ワタシもやっと分かったよ。ヨハネ1:47でイエス様がナタナエルを見て言った『見なさい。まさにイスラエル人です。この人には偽りがありません』は、創世記32:27で正直に『ヤコブです』と答えたヤコブに『あなたの名は、もうヤコブとは呼ばれない。イスラエルだ。』と言ってイスラエルという新しい名前を与えたことと重ねられているんだね。へ~、そうか~。」
「そうだと思うよ、エリ。」
「ヨハネ2章が出エジプト記、ヨハネ3章が出エジプト記~サムエル記、ヨハネ4章以降が列王記だから、ヨハネ1章が創世記の筈だよね。だから、ナタナエルが創世記のヤコブというのは順番的にもピッタリだね。」
「でしょ~、エリ。」
 ノンがうれしそうに言うと、ジュンが言った。
「ノンの解き明かしで、ヨハネの福音書がますます好きになったよ。ありがとう、ノン。」

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連載35「女の方、あなたはわたしと何の関係がありますか」の謎解き(続編21)

2025-03-15 04:32:24 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(21)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

「女の方、あなたはわたしと何の関係がありますか」の謎解き
「じゃ、次は2章を見ようか。3章でのニコデモの登場が『モーセの律法の授与』を示すとしたら、2章は何だろうか?2章には『カナの婚礼』でイエス様が水をぶどう酒に変えた奇跡が記されているね。」
 エリが言うと、ノンが応じた。
「水をぶどう酒に変えた記事は、出エジプト記でモーセがナイル川の水を血に変えた記事と関係があるような気がするんだけど・・・」
 するとジュンが反対した。
「え~っ、だってモーセが血に変えたナイル川は臭くなったんでしょ?イエスさまが水をぶどう酒に変えた時は『良いぶどう酒』になったから、それは違うんじゃない?」

出エジプト7:20 モーセとアロンは主が命じられたとおりに行った。モーセはファラオとその家臣たちの目の前で杖を上げ、ナイル川の水を打った。すると、ナイル川の水はすべて血に変わった。
21 ナイル川の魚は死に、ナイル川は臭くなり、エジプト人はナイル川の水を飲めなくなった。

ヨハネ2:9 宴会の世話役は、すでにぶどう酒になっていたその水を味見した。汲んだ給仕の者たちはそれがどこから来たのかを知っていたが、世話役は知らなかった。それで、花婿を呼んで、
10 こう言った。「みな、初めに良いぶどう酒を出して、酔いが回ったころに悪いのを出すものだが、あなたは良いぶどう酒を今まで取っておきました。」

 エリも首をかしげた。
「ジュンの言う通り、良いぶどう酒臭い水を表すというのは、ちょっと変な気がするね。」
 ジュンとエリに反対されてノンはガッカリしたが、気を取り直して言った。
「じゃ、良いぶどう酒はいったん保留しておいて、イエス様が母のマリアに『女の方』と言った記事はどうかな?僕はすごく気になるんだけど・・・」

ヨハネ2:1 それから三日目に、ガリラヤのカナで婚礼があり、そこにイエスの母がいた。
2 イエスも弟子たちも、その婚礼に招かれていた。
3 ぶどう酒がなくなると、母はイエスに向かって「ぶどう酒がありません」と言った。
4 すると、イエスは母に言われた。「女の方、あなたはわたしと何の関係がありますか。わたしの時はまだ来ていません。」

 ジュンが言った。
「私も、この箇所は聖書を読み始めた頃からずっと気になっていたんだよね。自分の母親に向かって『女の方、あなたはわたしと何の関係がありますか』って、随分と冷たい言い方だという気がするんだよね。イエス様らしくない言葉だなと、ここを読む度に思うんだよね。」
 エリも言った。
「ワタシもイエス様のこの言葉は、以前からずっと気になっているよ。」
 すると、ノンがこの箇所の解説を始めた。
「みんな気になるよね、このイエス様の言葉は。僕は、モーセの境遇を表していると思うな。聖霊を受けたモーセの中にはイエス様がいるわけだから。」
 ジュンが聞いた。
「モーセの境遇って、モーセはヘブル人だけどエジプトの王女の息子になったこと?」
 ノンが答えた。
「さすが、ジュン。その通りだよ。モーセはエジプトの王女の息子になったから、モーセを産んだ実の母親は、母親ではなくなったんだよ。だから、母のマリアに『女の方、あなたはわたしと何の関係がありますか』って言ったんだと思うな。」
 エリが言った。
「う~ん、ノンは面白いことを考えるね。そう言われると、そんな気もするね。」
 ジュンも言った。
「なるほどね。そうなのかな?そうかもしれないね。」
 ノンはうれしそうに言った。
「二人とも、この母親の件は賛成してくれるんだね?じゃ、イエス様が水をぶどう酒に変えた出来事も、モーセがナイル川の水を血に変えたことだということに賛成してほしいな。」
 エリは首を振った。
「う~ん、そっちはまだ賛成できないな。」
 それで、ノンは次の一手を打つことにした。
「じゃ、次へ行くことにするね。『カナの婚礼』の記事の後に、過越(すぎこし)の祭りのことが書いてあるでしょ?」

ヨハネ2:13 さて、ユダヤ人の過越の祭りが近づき、イエスはエルサレムに上られた。

「この『カナの婚礼』と『過越の祭り』は、イスラエル人の出エジプト時の『十の災い』の1番目と10番目、つまり最初と最後を示していると考えられないかな?」
 ジュンが「十の災い」に反応した。そして、出エジプト記を見ながら言った。
「イスラエル人の『十の災い』は、え~っと、①ナイル川の水が血に、②カエル、③ブヨ、④アブ、⑤疫病、⑥腫れ物、⑦雹(ひょう)、⑧イナゴ、⑨暗闇、⑩長子の死、だよね。」
「うん。そして10番目の災いの『長子の死』では、神様はイスラエル人の家を過ぎ越して行ったでしょ。だから、水がぶどう酒に変わった『カナの婚礼』と『過越の祭り』は、『十の災い』の最初と最後だと言えると思うんだよね。」
 これを聞いてエリは考え込んだ。そして、言った。
「そうか~。そうかもしれないね。でも祝福の『カナの婚礼』や『過越の祭り』が災いと重なるというのは、やっぱり引っ掛かるから素直に賛成はできないんだよね。」
 すると、ジュンがノンを支持した。
「エリが言うことも分かるよ。でも、『十の災い』はエジプト人にとっては災いだけど、これらの災いがあったからイスラエル人がエジプトを脱出できたわけでしょ。例えば『長子の死』ではイスラエル人の家を過ぎ越して行ったから、イスラエル人の長子は死ななかったよね。だから、イスラエル人にとっては祝福だと言えるんじゃないかな。私はノンの説に賛成するよ。」
 うなずきながら、エリは言った。
「そうか~。イスラエル人にとっては祝福なのか。確かに、順番的にはヨハネ3章が『モーセの十戒の授与』だから、ヨハネ2章は『エジプト脱出』で良いのかもしれないね。」
 ノンはうれしそうに言った。
「ありがとう。順番の件で、もう一つ付け足しておくと、ヨハネ2章17節は、脱出したイスラエル人を追い掛けたエジプト軍が海の水に飲み込まれた出来事を表しているんだと思うよ。

ヨハネ2:17 弟子たちは、「あなたの家を思う熱心が私を食い尽くす」と書いてあるのを思い起こした。

「え~、そうなの?神様が海の水を二つに割って現れた海底をイスラエル人たちが歩いて渡り、その後ろを追い掛けて来たエジプト軍に対しては海水を元に戻したことで溺れ死んだ出来事のこと?」
「Why? 、なぜ?」
「この『あなたの家を思う熱心が私を食い尽くす』は詩篇69篇からの引用だよね。この詩篇69篇の冒頭には、次のように書かれているよ。」

詩篇69:1 神よ、私をお救いください。水が喉にまで入って来ました。
2 私は深い泥沼に沈み、足がかりもありません。私は大水の底に陥り、奔流が私を押し流しています。

「この大水に飲み込まれている様子は、まさにエジプト軍が海の水に飲み込まれてしまった状況を示していると思うんだよね。10番目の災いの『長子の死』の『過ぎ越し』の後の17節で、このことが書かれているから、順番的にも合っているでしょ。」
 エリは言った。
「もし、ノンの説が本当にその通りだとしたら、こういう風に旧約の時代の出来事を気付きにくい形で仕込んだ記者のヨハネは、すごい人だね。」
 ノンは答えた。
「僕は、これは神様の御業だと思うな。神様がヨハネに霊感を与え、ヨハネがそれを感じて書いたわけだからね。」
 ジュンは言った。
「もう何度も言っているけど、聖書って本当に面白いね~。」

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連載34(続編20)「ニコデモ」の謎解き

2025-02-10 10:14:06 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(20)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

「ニコデモ」の謎解き
 ヨハネ4章のイエスがサマリアの女に言った「あなたには夫が五人いました」は、「アハブ王以前の北王国の歴代の王たち」であるという説にエリも賛成してくれたことで、ノンのテンションがまた一段と上がった。
「ヨハネの福音書って、高い所から俯瞰して読むと新しい発見がたくさんある書だから、つい興奮しちゃうね。でも、僕はちょっとお腹がすいたな。」
 エリも言った。
「ワタシも何か食べたいな。このカフェで食べる?カレーとかがあるみたいだね。」
 ジュンが提案した。
「だいぶ長い時間ここにいるから、場所を変えない?近くの新静岡セノバのフードコートなら、いろいろ選べるよ。話の続きもそこでできると思うし。どう?」
 ノンとエリも賛成したので三人は新静岡セノバ3階のフードコートに移動することにした。

 新静岡セノバのフードコートではラーメン、讃岐うどん、パスタ、オムライス、韓国料理、ハンバーガー、タコ焼きの店があり、アイスクリームの店もある。
 エリは讃岐うどんとタコ焼き、ノンは韓国料理、ジュンはパスタを選んだ。
 エリが言った。
「タコ焼きは三人で食べよう。」
 ジュンが感心して言った。
「エリがタコ焼きを知っていたなんて、意外だな~。」
「去年日本でたまたま食べておいしかったから、今年も食べたいと思っていたんだよ。フードコートにあってラッキーだったよ。」
「静岡おでんはどう?食べたことある?」
「静岡おでんは、まだ食べたことないんだよね。」
 すると、ノンがすぐに反応した。
「じゃ、今夜は静岡おでんを食べようよ。」
「オッケー。」
「いいね~。」
 エリとジュンがすぐに賛成したので、今夜は静岡おでんで決まりだ。

「じゃ、そろそろヨハネの福音書の話の続きをしようか。1章から3章までが残っているけど、どうする?4章に近い3章から見て行こうか?」
 エリが提案すると、ノンが応じた。
「うん。じゃ、3章から見て行こう。3章は14節でイエス様が『モーセが荒野で蛇を上げた』と言っているから、14節は民数記の時代で決まりだね。」

ヨハネ3:14 「モーセが荒野で蛇を上げたように、人の子も上げられなければなりません。」

民数記21:9 モーセは一つの青銅の蛇を作り、それを旗ざおの上に付けた。蛇が人をかんでも、その人が青銅の蛇を仰ぎ見ると生きた。

 エリは、二つの聖句を見比べて言った。
「うん。ヨハネ3:14の背後に民数記21:9があることは誰の目にも明らかで否定のしようがないね。じゃ、15節以降はどうだろうか?」
 ジュンが22節を見ながら言った。
「22節に『イエスは弟子たちとユダヤの地に行き』と書いてあるね。これって、もしかしたらモーセの後にリーダーになったヨシュアがヨルダン川を渡った時のことを示しているんじゃないかな?」

ヨハネ3:22 その後、イエスは弟子たちとユダヤの地に行き、彼らとともにそこに滞在して、バプテスマを授けておられた。

 ノンがうなずいた。
「なるほど~。ヨハネ10章はバビロン捕囚のことを『ヨルダンの川向こう』(ヨハネ10:40)で示していたけど、ここではヨシュア記3章のヨルダン渡河の出来事を『イエスは弟子たちとユダヤの地に行き』で示しているという訳だね。」

ヨシュア3:17 主の契約の箱を担ぐ祭司たちは、ヨルダン川の真ん中の乾いたところにしっかりと立ち止まった。イスラエル全体は乾いたところを渡り、ついに民全員がヨルダン川を渡り終えた

 エリもうなずいた。
「確かに。ヨハネ3:22はヨシュアの時代のヨルダン渡河の出来事の可能性が高いね。でも次のヨハネ4章はもう列王記第一の時代だから、ヨハネ3章の22~36節の短い区間にヨシュア記、士師記、ルツ記、サムエル記第一、サムエル記第二が詰まっていることになるね。それで良いのかな?」
 三人は考え込んだ。
 ノンの意見はこうだ。
「ダビデ王は聖書の中でもかなり重要な人物だからサムエル記のことが触れられていないのは、少し変な気がするね。」
 するとジュンが言った。
「この30節がダビデと関係があるんじゃないかな?」

ヨハネ3:30 「あの方は盛んになり、私は衰えなければなりません。」

 ノンが言った。
「これは、バプテスマのヨハネのことばだよね。このことばがダビデと関係あるの?」
「何となく、そんな気がするんだけど…。」
 エリが聖書の引照を調べながら言った。
「バプテスマのヨハネは祭司のザカリヤの息子だから、レビ族の家系だよね。」

ルカ1:5 ユダヤの王ヘロデの時代に、アビヤの組の者でザカリヤという名の祭司がいた。彼の妻はアロンの子孫で、名をエリサベツといった。

アビヤの組の引照には歴代誌第一24:10とあるな…。歴代誌第一の24章は『アロンの子らの組分け』。アロンはモーセの兄だからアビヤは確かにレビ族だね。だからザカリヤの息子のバプテスマのヨハネもレビ族だね。」

Ⅰ歴代誌24:1 アロンの子らの組分け
10 第八はアビヤに、

 ノンがハッと気付いて言った。
「あっ、そうか!サウル王やダビデ王の時代の前はサムエルがイスラエルを治めていたんだよね。確かサムエルはレビ族だったよね。」
 エリが答えた。
「うん。サムエル記第一1章には、このように書いてあるよ。」

Ⅰサムエル1:1 エフライムの山地ラマタイム出身のツフ人の一人で、その名をエルカナという人がいた。

「サムエルは、このエルカナの息子なんだけど、エルカナに付いている引照の歴代誌第一6:27を見ると、エルカナケハテ族で、系図を遡るとケハテ族レビ族と分かるよ。だからノンが言う通り、サムエルはレビ族だよ。」

Ⅰ歴代6:1 レビの子は、ゲルション、ケハテ、メラリ。
・・・・・
22 ケハテ族は、その子アミナダブ、その子コラ、その子アシル、
・・・・・
27 その子エリアブ、その子エロハム、その子エルカナ

 エリの系図の説明を聞いて、ノンが言った。

「つまりヨハネ3:30でバプテスマのヨハネがイエス様を見ながら言った『あの方は盛んになり、私は衰えなければなりません』」は、イスラエルを治める者の家系がレビ族からユダ族のダビデの家系に移った、そういうこと?」
 エリがうなずいた。
「そういうことじゃないかな。」
 ジュンは大喜びだ。
「わ~、じゃ私がヨハネ3:30はダビデと関係あるんじゃない?と言ったのは、その通りだったということだね!」
「うん、そうみたいだね。」
「うん、うん。サムエルの時代からダビデの時代への移行が『あの方は盛んになり、私は衰えなければなりません』ということで良いんじゃないかな。」
 ジュンのテンションが上がった。
「ここまで分かると、ニコデモも分かるね。ニコデモはヨハネの福音書にしか登場しない人で、私にとっては謎の人物だったけど、もう分かるね。」

ヨハネ3:1 さて、パリサイ人の一人で、あの方は盛んになり、私は衰えなければなりませんという名の人がいた。ユダヤ人の議員であった。

 ノンが言った。
「うん。ヨハネ3:14が民数記の時代だったから、ニコデモの登場は『モーセの律法の授与』を表しているんだろうね。」「
 エリもうなずきながら言った。
「そうだね。ニコデモはパリサイ人だから、ここは『モーセの律法の授与』で間違いないだろうね。」
 ジュンは感動していた。
「ヨハネの福音書は私にとって謎だらけの難解な書だったけど、きょう三人で話して随分と分かるようになったよ。うれしいな~。」

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連載33(続編19)「夫が五人」の謎解き

2025-02-06 04:27:16 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(19)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

「夫が五人」の謎解き
 ヨハネの福音書は11章54節で「イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをせず」と記すことで、以後は預言者を通して神のことばが語られることがなくなったことを示している。つまり、ここで旧約聖書の記述が閉じられた。このことをエリ、ノブ、ジュンの3人は互いに確認し合った。
エリが言った。
「これでヨハネの福音書の4章から11章までを大まかに見たことになるけど、この後は、どこを見ようか。1~3章を見ることにする?」
 するとノブが言った。
「1~3章を見る前に、まだ4章の始めの方で気になる箇所があるんだけど…」
 ジュンが聞いた。
「どこ?」
「うん、一つは4章6節。ここにイエス様が【疲れ】ていたことが書かれているでしょ。」

ヨハネ4:1 パリサイ人たちは、イエスがヨハネよりも多くの弟子を作ってバプテスマを授けている、と伝え聞いた。それを知るとイエスは、
2 ──バプテスマを授けていたのはイエスご自身ではなく、弟子たちであったのだが──
4:3 ユダヤを去って、再びガリラヤへ向かわれた。
4 しかし、サマリアを通って行かなければならなかった。
5 それでイエスは、ヤコブがその子ヨセフに与えた地所に近い、スカルというサマリアの町に来られた。
6 そこにはヤコブの井戸があった。イエスは旅の疲れから、その井戸の傍らに、ただ座っておられた。時はおよそ第六の時であった。

「この『イエスは旅の疲れから』が、妙に気になるんだよね。」
 ジュンが言った。
「確かに…、そう言われると何だか気になるね。さっき見たヨハネ11:35の『イエスは涙を流された』の背後には『エルサレムの滅亡』があったから、この『イエスは旅の疲れから』の背後にも何かがありそうな気がするね。」
 ノブが続けた。
「うん、それから、もっと気になるのが、イエス様の『あなたには夫が五人いましたが、今一緒にいるのは夫ではない』ということばだよ。これって、メチャクチャ気にならない?」

ヨハネ4:16 イエスは彼女に言われた。「行って、あなたの夫をここに呼んで来なさい。」
17 彼女は答えた。「私には夫がいません。」イエスは言われた。「自分には夫がいない、と言ったのは、そのとおりです。
18 あなたには夫が五人いましたが、今一緒にいるのは夫ではないのですから。あなたは本当のことを言いました。」

 ジュンが言った。
「ここは、サマリアの女の不幸な境遇のことが語られることが多いけど、『夫が五人』は多すぎるような気もするね。」
「でしょ~!」
 エリも言った。
「確かに気になるね。じゃ、まず『イエスは旅の疲れから』から検討しようよ。」
 そう言って、エリはまず4章~6章の流れを復習した。
「ヨハネ4章のイエス様は北王国の預言者エリヤで、6章のイエス様はエリシャだったね[連載27(続編13)]。そうすると、ヨハネ4章でイエス様が疲れていたのはサマリアの女と会う前だから、エリヤが登場する前の北王国の状況を示しているのかもしれないな…」
 ノンがうなずいた。
「なるほど…。ダビデの息子のソロモン王が死んだ後、イスラエルの王国は北王国と南王国の2つに分裂した。ソロモン王の不信仰が原因だったけど、分裂後の北王国は、さらにヒドイことになったんだよね。北王国の人々が南のエルサレム神殿に行けないように初代王のヤロブアムがしたことで、不信仰がどんどん増して行った。そうしてアハブ王の時代には最悪の状態になって、それで天の神様は預言者エリヤを遣わしたんだよね。」
 ジュンもうなずいた。
「そうすると、ヨハネ4:6の『イエスは旅の疲れから』は天の神様が北王国の不信仰を心配していたことを示しているのかもしれないね。イスラエルの王国が南北に分裂して北王国の不信仰が加速していた。神様が心配するのも当然だよね。そして、最悪のアハブ王の時にエリヤが遣わされた…。ヨハネ4章は、そういう筋書きなのかな…?」
 ここで、ノンがハッと気付いて言った。
「そっかー、分かった、分かった!じゃ、ヨハネ4:18の『あなたには夫が五人いました』は、アハブ王の前の北王国の王様たちのことを指しているんじゃない?」
「オ~!」
「ワ~!」
 エリとジュンが同時に歓声を上げた。そして、エリが列王記第一を開いて北王国の歴代の王たちを調べ始めた。
「えっと~、初代がヤロブアム、次がナダブ、バアシャ、エラ、ジムリ、オムリ、そうしてオムリの子がアハブ王だね。」
 エリは今あげた王を数えた。
「一、二、三、四、五、六.あれ、ヤロブアムからオムリまで六人いるよ。『夫が五人』と数が合わないね。」
 ノンが残念がった。
「そうか~、『夫が五人』はアハブ王の前の北王国の王たちだと思ったけど、見込み違いだったか~。残念!」
「待って!」
 ジュンが言った。
「ここにジムリのことが書いてあるよ。」

Ⅰ列王16:15 ユダの王アサの第二十七年に、ジムリが七日間ティルツァで王となった。そのとき、兵はペリシテ人のギベトンに対して陣を敷いていた。
16 陣を敷いていたこの兵は、「ジムリが謀反を起こして王を打ち殺した」と言われるのを聞いた。すると、全イスラエルはその日、その陣営で軍の長オムリをイスラエルの王とした。
17 オムリは全イスラエルとともにギベトンから上って来て、ティルツァを包囲した。
18 ジムリは町が攻め取られるのを見ると、王宮の高殿に入り、自ら王宮に火を放って死んだ。

ジムリが王だったのは七日間だけで、しかも全イスラエルはジムリを王としては認めていなかったから、ジムリはカウントしなくても良いんじゃない?」
 残念がっていたノンがまた元気になった。
「ホントだ~!ジムリをカウントしなければ『夫が五人』と数が合うね!エリはどう思う?」
 エリは慎重だった。
「ウ~ン、都合よく解釈し過ぎているような気がするな…。じゃ、18節の続きの『今一緒にいるのは夫ではない』は、どう解釈するの?」
 ノンは少し考えて言った。
「それは…。サマリアの女は列王記第一17章のやもめだよね。やもめだから、今一緒にいるのは夫ではないとか、かな?」

Ⅰ列王17:10 彼はツァレファテへ出て行った。その町の門に着くと、ちょうどそこに、薪を拾い集めている一人のやもめがいた。そこで、エリヤは彼女に声をかけて言った。「水差しにほんの少しの水を持って来て、私に飲ませてください。」

 ジュンは別のことを言った。
「ツァレファテは北王国に含まれないから、アハブ王は夫ではないということかもしれないよ。」
 ノンが言った。
「あ~、確かに。そっちかもしれないね、ジュン。」
 ノンがまたエリに聞いた。
「ね~、エリ。『夫が五人』は、アハブ王の前の五人の王たちということで良いんじゃない?」
「ハハハ、ワタシたちは聖書学者じゃないからね。それでも良いかもしれないね。じゃ、ワタシも『夫が五人』は、アハブ王の前の北王国の歴代の王たちという説に一票入れるよ。」
「やったー!」

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連載32(続編18)バビロン捕囚からエルサレム復興まで

2025-02-03 04:45:44 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(18)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

バビロン捕囚からエルサレム復興まで
 エリがまた提案した。
「せっかくだからヨハネ10~11章も、もう少し詳しく見てみたいな。まだまだ面白いことが分かりそうな気がするよ。」
 ノンが応じた。
「うん、そうしよう。律法の書が見つかったヨシヤ王の時代の後は、また不信仰な悪い時代に逆戻りしちゃったんだよね。」
 明るかったジュンの表情が曇った。
「天のイエス様のため息が聞こえて来るような気がするね。イスラエルの王たちは、どうしてこんなにも不信仰なんだろうね。」
「僕もそう思うよ。天の神様は預言者エレミヤを通して王たちに不信仰を改めるように何度も警告したのにね。たとえばエレミヤ7章とか。」

エレミヤ7:1 主からエレミヤにあったことばは、次のとおりである。
2 「主の宮の門に立ち、そこでこのことばを叫べ。『主を礼拝するために、これらの門に入るすべてのユダの人々よ、主のことばを聞け。
3 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたがたの生き方と行いを改めよ。そうすれば、わたしはあなたがたをこの場所に住まわせる。
4 あなたがたは、「これは主の宮、主の宮、主の宮だ」という偽りのことばに信頼してはならない。
5 もし、本当に、あなたがたが生き方と行いを改め、あなたがたの間で公正を行い、
6 寄留者、孤児、やもめを虐げず、咎なき者の血をこの場所で流さず、ほかの神々に従って自分の身にわざわいを招くようなことをしなければ、
7 わたしはこの場所、わたしがあなたがたの先祖に与えたこの地に、とこしえからとこしえまで、あなたがたを住まわせる。

 ジュンが言った。
「それなのに南王国の王たちが不信仰を改めなかったので、天の神様は南王国を滅ぼすことにして、外国人の略奪隊をエルサレムに送ったんだよね。」

Ⅱ列王24:2 主は、カルデア人の略奪隊、アラムの略奪隊、モアブの略奪隊、アンモン人の略奪隊を遣わしてエホヤキムを攻められた。ユダを攻めて滅ぼすために彼らを遣わされたのである。主がそのしもべである預言者たちによって告げられたことばのとおりであった。

 ジュンのことばを聞いて、エリが言った。
「あっ、そうか!だからヨハネ10章1節のイエス様のことばは、エレミヤの叫びなんだね。」

ヨハネ10:1 「まことに、まことに、あなたがたに言います。羊たちの囲いに、門から入らず、ほかのところを乗り越えて来る者は、盗人であり強盗です。」

 ジュンが言った。
「うん、うん。エルサレムは門を閉めて防御を固めていたけど、外国人の略奪隊は門から入らずに城壁を乗り越えて囲いの中に侵入して略奪したんだね。」
 ノンも言った。
「この列王記第二24章2節にあるエホヤキム王というのも、とんでもなく不信仰な悪王だったみたいだね。エレミヤを通して語られた神のことばを口述した巻物をエホヤキム王は暖炉の火ですべて燃やしてしまったとエレミヤ36章には書いてあるからね。」

36:1 ユダの王、ヨシヤの子エホヤキムの第四年に、主からエレミヤに次のようなことばがあった。
2 「あなたは巻物を取り、わたしがあなたに語った日、すなわちヨシヤの時代から今日まで、わたしがイスラエルとユダとすべての国々について、あなたに語ったことばをみな、それに書き記せ。
3 ユダの家は、わたしが彼らに下そうと思っているすべてのわざわいを聞いて、それぞれ悪の道から立ち返るかもしれない。そうすれば、わたしも、彼らの咎と罪を赦すことができる。」
4 それでエレミヤは、ネリヤの子バルクを呼んだ。バルクはエレミヤの口述にしたがって、彼に語られた主のことばを、ことごとく巻物に書き記した。

21 王はユディに、その巻物を取りに行かせたので、彼はそれを書記エリシャマの部屋から取って来た。ユディはそれを、王と王の傍らに立つすべての首長たちに読んで聞かせた。
22 第九の月であったので、王は冬の家の座に着いていた。彼の前には暖炉の火が燃えていた。
23 ユディが三、四段を読むごとに、王は書記の小刀でそれを裂いては暖炉の火に投げ入れ、ついに、巻物をすべて暖炉の火で焼き尽くした

 このエレミヤ36章の記述を読んで、エリが言った。
「そうか!じゃ、ヨハネ10章のイエス様が冬の日に『聖書が廃棄されることはあり得ない』と言ったのは、エホヤキム王が暖炉の火で巻物を燃やしてしまったことを指しているんだね!」

ヨハネ10:22 そのころ、エルサレムで宮きよめの祭りがあった。時は冬であった。
23 イエスは宮の中で、ソロモンの回廊を歩いておられた。

34 イエスは彼らに答えられた。「あなたがたの律法に、『わたしは言った。「おまえたちは神々だ」』と書かれていないでしょうか。
35 神のことばを受けた人々を神々と呼んだのなら、聖書が廃棄されることはあり得ないのだから、

 ジュンのテンションがまた上がった。
「すご~い。前から私はこのイエス様の『聖書が廃棄されることはあり得ない』が気になっていたんだよね。この『廃棄』ということばに唐突感を覚えていたんだけで、そっか~、これはエホヤキム王の『巻物焼き尽くし事件』のことを指していたんだね。」

 エリが言った。
「そうして、さっきノンとジュンが言ったように、南王国の人々はヨルダンの川向こうのバビロンに捕囚として引かれて行ったんだね[連載28]」。

ヨハネ10:40 そして、イエスは再びヨルダンの川向こう、ヨハネが初めにバプテスマを授けていた場所に行き、そこに滞在された。

 エリは続けた。
「『預言者のことば=イエス様のことば』だから、ここはエゼキエルだね。」

エゼキエル1:1 第三十年の第四の月の五日、私がケバル川のほとりで捕囚の民とともにいたとき、天が開け、私は神々しい幻を見た。
2 それはエホヤキン王が捕囚となってから五年目の時であった。

 ノブのテンションも再び上がって来た。
「ヨハネ11章でラザロが病気で死んだことは明らかにエルサレムの滅亡のことだけど、イエス様はラザロが死ぬまで川向こうにとどまっていたよね。これって、

『バビロン捕囚→エルサレム滅亡』

の順番としっかり合致しているね。」
 ジュンが聞いた。
「史実は『エルサレム滅亡→バビロン捕囚』じゃなくて、『バビロン捕囚→エルサレム滅亡』ということだね?」
「うん、そうだよ。列王記第二は、バビロン捕囚は24章に、書いてあって、エルサレム滅亡は25章に書いているからね。」

バビロン捕囚
Ⅱ列王24:11 バビロンの王ネブカドネツァルが都にやって来たとき、彼の家来たちは都を包囲していた。
12 ユダの王エホヤキンは、その母、家来たち、高官たち、宦官たちと一緒にバビロンの王に降伏したので、バビロンの王は、その治世の第八年に、彼を捕虜にした。
13 バビロンの王は、主の宮の財宝と王宮の財宝をことごとく運び出し、主の神殿の中にあるイスラエルの王ソロモンが作ったすべての金の用具を切り裂いた。主が告げられたとおりであった。
14 彼はエルサレムのすべて、すなわち、すべての高官、すべての有力者一万人、それに職人や鍛冶もみな、捕囚として捕らえ移した。貧しい民衆のほかは残されなかった。
15 彼はさらに、エホヤキンをバビロンへ引いて行き、王の母、王の妻たち、その宦官たち、この国のおもだった人々を、捕囚としてエルサレムからバビロンへ行かせた。
16 バビロンの王は、すべての勇士たち七千人と、職人、鍛冶千人からなる勇敢な戦士たちすべてを、捕囚としてバビロンへ連れて行った。

エルサレム滅亡
Ⅱ列王25:8 第五の月の七日、バビロンの王ネブカドネツァル王の第十九年のこと、バビロンの王の家来、親衛隊の長ネブザルアダンがエルサレムに来て、
9 主の宮と王宮とエルサレムのすべての家を焼き、そのおもだった建物をことごとく火で焼いた。
10 親衛隊の長と一緒にいたカルデアの全軍勢は、エルサレムを取り巻く城壁を打ち壊した。

 ノンは続けた。
「ラザロが病気で死にそうだと聞いたイエス様だったけど、すぐにはユダヤに戻らなかった。」

ヨハネ11:1 さて、ある人が病気にかかっていた。ベタニアのラザロである。ベタニアはマリアとその姉妹マルタの村であった。
2 このマリアは、主に香油を塗り、自分の髪で主の足をぬぐったマリアで、彼女の兄弟ラザロが病んでいたのである。
3 姉妹たちは、イエスのところに使いを送って言った。「主よ、ご覧ください。あなたが愛しておられる者が病気です。」
4 これを聞いて、イエスは言われた。「この病気は死で終わるものではなく、神の栄光のためのものです。それによって神の子が栄光を受けることになります。」
5 イエスはマルタとその姉妹とラザロを愛しておられた。
6 しかし、イエスはラザロが病んでいると聞いてからも、そのときいた場所に二日とどまられた。

「そうして、ラザロが死んでからイエス様はユダヤに戻ったんだよ。」

ヨハネ11:14 そこで、イエスは弟子たちに、今度ははっきりと言われた。「ラザロは死にました。
15 あなたがたのため、あなたがたが信じるためには、わたしがその場に居合わせなかったことを喜んでいます。さあ、彼のところへ行きましょう。」

 ジュンは感動していた。
「そうか~。ヨハネ11章のイエス様がすぐにラザロの家に行かなかったのは、エルサレムはまだ滅亡していなかったからなんだね。ヨハネの福音書って、本当に芸が細かいね。」
 エリのテンションも上がった。
「う~ん、そうなんだね。だから、イエス様は『霊に憤りを覚えたんだね。やっと分かったよ。』

ヨハネ11:32 マリアはイエスがおられるところに来た。そしてイエスを見ると、足もとにひれ伏して言った。「主よ。もしここにいてくださったなら、私の兄弟は死ななかったでしょうに。」
33 イエスは、彼女が泣き、一緒に来たユダヤ人たちも泣いているのをご覧になった。そして、霊に憤りを覚え、心を騒がせて、
34 「彼をどこに置きましたか」と言われた。彼らはイエスに「主よ、来てご覧ください」と言った。

 ノンは何度もうなずきながら言った。
「僕もやっと分かったよ。天の父とイエス様はエレミヤを通して南王国の王たちに不信仰を改めるように何度も警告したのに従わなかった。それで結局はエルサレムを滅ぼさざるを得なかった。『霊に憤りを覚え』は、そういう時空を超えた憤りのことを示しているんだね。」
 ジュンは目に涙を浮かべながら言った。
「神殿が焼け落ち、城壁も壊されてエルサレムが廃墟になってしまったことは、天の父とイエス様にとっても本当につらいことだったんだね。それでイエス様は涙を流したんだろうね。」

ヨハネ11:35 イエスは涙を流された。

 エリも何度もうなずいた。
「そうして、エズラの時代に神殿が再建され、ネヘミヤの時代に城壁が修復されて、エルサレムは復興した。それがラザロの復活だね。」

ヨハネ11:43 イエスは大声で叫ばれた。「ラザロよ、出て来なさい。」
44 すると、死んでいた人が、手と足を長い布で巻かれたまま出て来た。彼の顔は布で包まれていた。イエスは彼らに言われた。「ほどいてやって、帰らせなさい。」

 ノンが言った。
「エルサレムが復興したことは素晴らしいことだったけど、旧約聖書の最後のマラキ書は、人々がまた不信仰に陥っていることを記しているよね。」

マラキ1:1 宣告。マラキを通してイスラエルに臨んだ主のことば。
2 「わたしはあなたがたを愛している。──主は言われる──しかし、あなたがたは言う。『どのように、あなたは私たちを愛してくださったのですか』と。

 ため息をついて、ノンは続けた。
「ハー、ひどいね。エルサレムの人々は形式的には律法を守るようにはなったけど、天の神様の愛がぜんぜん分かっていなかったということだね。そうして、ヨハネの福音書は、イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをせずと書いて旧約聖書がマラキ書で終わったことを示している。」

ヨハネ11:54 イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをせず、そこから荒野に近い地方に去って、エフライムという町に入り、弟子たちとともにそこに滞在された。

 ジュンもため息をついた。
「神様の愛は聖霊が与えられなければ、分からないということだね。イエス・キリストが天から遣わされて父のことを弟子たちに教えた。そうして十字架で死んで復活した。そのイエス様を信じて聖霊が与えられて、ようやく神様の愛が分かるようになるということだね。」

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連載31(続編17)イエスの公的な言動を記した旧約聖書

2025-01-30 11:19:52 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(17)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

イエスの公的な言動を記した旧約聖書
「あっ、分かった!私も分かったよ!そうか~、そういうことだったのか~。」
 今度はジュンがまた何かを発見したらしい。
「何が?」
「何が分かったの?」
 エリとノンが聞いた。
「以前から私は『公(おおやけ)』ということばがヨハネの福音書の何箇所かで使われているのが気になっていたんだよね。たとえば次の3箇所なんだけど…」

ヨハネ7:3 そこで、イエスの兄弟たちがイエスに言った。「ここを去ってユダヤに行きなさい。そうすれば、弟子たちもあなたがしている働きを見ることができます。
4 自分での場に出ることを願いながら、隠れて事を行う人はいません。このようなことを行うのなら、自分を世に示しなさい。」

ヨハネ7:10 しかし、兄弟たちが祭りに上ったとき、イエスご自身も、にではなく、いわば内密に上って行かれた。(新改訳第3版)

ヨハネ 11:54 そのために、イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをせず、そこから荒野に近い地方に去って、エフライムという町に入り、弟子たちとともにそこに滞在された。

 ジュンは続けた。
「3番目のヨハネ11:54が分かりやすいと思うけど、『イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをせず』って、ヨハネ8章でイエス様が献金箱に隠れた状況と似ているんじゃないかな。マナセ王とアモン王の時代には預言者が殺されて律法の書も失われていたから、神のことばが何も語られていなかったでしょ?」
「うん。」
「うん。」
「同じように、マラキ書が書かれた後はバプテスマのヨハネとイエス様が現れるまでの約400年は神のことばが語られていなかったでしょ?だから、ヨハネ11:54の『イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをせず』は、旧約聖書の記述がマラキ書で終わったことを示しているんじゃないかな。」
「うん、うん。」
「うん、うん。」
「そうすると、ヨハネ7章3~4節でイエス様の兄弟たちが『ここを去ってユダヤに行きなさい。そうすれば、弟子たちもあなたがしている働きを見ることができます』と言ったことも、6章で北王国が滅びた後は旧約聖書が北について何も記述していないことを指しているんだよね。北王国が滅びた後も預言者たちは北に残っていて神のことばを語っていたと思うんだけど、そういうことは旧約聖書には書かれていないからね。」
「なるほど。」
と、エリがうなずくとノンがジュンに聞いた。
「じゃ、この10節の『イエスご自身も、にではなく、いわば内密に上って行かれた』は、預言者たちが北から南へ移動した、ということ?」
「ハッキリしたことは言えないけど、そういうことじゃないかな。北王国が滅びた後、預言者たちの多くが南王国に移動したみたいだからね。ただし、聖書には預言者たちの北から南への移動については書いていないから、『内密に上って行かれた』とうことじゃないかな~。」
 エリが何度もうなずきながら言った。
「きょうは次々と新しい発見あるね~。ヨハネの福音書って、まだまだよく知られていないことが、たくさんあるんだね。」
 ノンも感動に浸りながら言った。
「きょうの三人の語り合いは本当にすごく面白い会になったね。こんなに新しい発見が次々とあるなんて、ぜんぜん予想していなかったよ。」
 ジュンが言った。
「私は何となく、そんな気がしていたよ。ヨハネの福音書って。高い所から全体を見るといろいろなことが分かる書なんだね。」

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連載30(続編16)献金箱に隠れたイエス

2025-01-29 06:24:07 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(16)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

献金箱に隠れたイエス
 「預言者を通して語られた天の神様のことばは、すべてイエス様のことばだった」とノンが言ったのを聞いて、今度はエリが言った。
「そうか!分かったよ!ワタシもやっと分かったよ!」
 ノンとジュンが聞いた。
「何が分かったの?」
「以前からワタシは8章の『献金箱』が気になってたんだよね。どうして唐突に『献金箱』が出て来るのか、ずっと不思議に思っていたんだよ。」

ヨハネ8:20 イエスは、宮で教えていたとき、献金箱の近くでこのことを話された。

「それが、ノンが預言者のことば=イエス様のことばと言ったことで分かったよ。この直後の8章21節でイエス様は『わたしは去って行きます。…わたしが行くところに、あなたがたは来ることができません』って言ったでしょ。これって、イエス様が献金箱の中に入って隠れたということじゃない?」

ヨハネ8:21 イエスは再び彼らに言われた。「わたしは去って行きます。あなたがたはわたしを捜しますが、自分の罪の中で死にます。わたしが行くところに、あなたがたは来ることができません。

 ジュンが聞いた。
「どうしてイエス様が献金箱の中に入るの?」
 エリが答えた。
「イエス様はことばだからだよ。つまり、イエス様は律法の書ということでもあるんだよ。悪魔のマナセ王とアモン王の時代には神殿が荒れ果てて律法の書も失われていたでしょ。そして、ヨシヤ王の時代になって発見されたんだけど、それは神殿に保管されていた過去の献金を、荒れた神殿の修理の資金にしようと取り出した時に発見されたんだよ。それはつまり、律法の書が献金の中に紛れ込んでいたということでしょ。」

Ⅱ列王22:3 ヨシヤ王の第十八年に、王は、メシュラムの子アツァルヤの子である書記シャファンを主の宮に遣わして言った。
4 「大祭司ヒルキヤのもとに上って行き、主の宮に納められていた金、すなわち、入り口を守る者たちが民から集めたものを彼に計算させよ。
5 彼らが主の宮で工事をしている監督者たちにそれを手渡すようにせよ。そして、監督者たちは、神殿の破損の修理をするために、主の宮で工事をしている者たちにそれを渡すようにせよ。
6 大工、建築する者、石工に渡し、神殿の修理のための木材や切り石を買わせよ。
7 ただし、彼らの手に渡した金の精算がなされる必要はない。彼らは忠実に働いているからである。」
8 そのとき、大祭司ヒルキヤは書記シャファンに、「主の宮で律法の書を見つけました」と言った。そしてヒルキヤがその書物をシャファンに渡したので、彼はそれを読んだ。
9 書記シャファンは王のもとに行って、王に報告した。「しもべたちは、神殿にあった金を取り出して、これを主の宮で工事している監督者たちの手に渡しました。」
10 さらに書記シャファンは王に告げた。「祭司ヒルキヤが私に一つの書物を渡してくれました。」シャファンは王の前でそれを読み上げた。
11 王は律法の書のことばを聞いたとき、自分の衣を引き裂いた。

 エリは続けた。
「だから、ヨハネ9章5節でイエス様が言った『わたしが世の光です』は、ヨシヤ王の時代に律法の書が発見されたことと重なっているんだね。イエス様はヨハネ9章で、盲目で生まれた人の目を開いて見えるようにしたでしょ。これは、ヨシヤ王の時代の人々がモーセの律法に目が開かれたことを示しているんだね。」

ヨハネ9:5 わたしが世にいる間は、わたしが世の光です。」
6 イエスはこう言ってから、地面に唾をして、その唾で泥を作られた。そして、その泥を彼の目に塗って、
7 「行って、シロアム(訳すと、遣わされた者)の池で洗いなさい」と言われた。そこで、彼は行って洗った。すると、見えるようになり、帰って行った。

「エエエ???そうなの???」
 ジュンは思わず大きな声を出してしまった。カフェの他の客たちが驚いてジュンの方を向いたので、ジュンは「すみません」と頭を下げた。
 ノンも驚いた顔をして言った。
「だとしたら、ヨハネって面白過ぎるね。イエス様が献金箱の中に隠れるなんて、シュールというかユーモラスというか、何とも言えない味わいがあるね~。ヨハネの福音書って、本当に面白いね。」

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連載29(続編15)預言者のことば=イエスのことば(4)

2025-01-28 05:13:38 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(15)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

預言者のことば=イエスのことば(4)
 ヨハネの福音書10~11章のイエスの東西方向の行き来は南王国の民のバビロン捕囚エルサレム帰還のことだと分かったことを受けて、エリが言った。
「ヨハネ10章の終わりがバビロン捕囚だということは、その手前のヨハネ7章~10章には、6章で北王国が滅んだ後の、今度は南王国が滅亡へと進んで行く過程が重ねられているということだよね。次は、そちらを考えることにしようか。」
 ノブが答えた。
「オッケー。その時代の南王国の王たちは、ヒゼキヤ王、マナセ王、アモン王、ヨシヤ王、エホアハズ王、エホヤキム王、エホヤキン王、ゼデキヤ王だね。」
 エリがうなずいた。
「うん、ヒゼキヤ王とヨシヤ王は宗教改革を行った善い王だね。その他の王たちは悪い王で、特にマナセ王は極悪の王と言われているね。」
 ジュンが言った。
「ヒゼキヤ王とヨシヤ王の宗教改革って、偶像を取り除いてモーセの律法に立ち返るようにしたことだよね。だから、ヨハネ8:12と9:5の2つの『世の光』は、ヒゼキヤ王とヨシヤ王の時代がモーセの律法の光に照らされていたことを示しているんじゃないかな?」

ヨハネ8:12 イエスは再び人々に語られた。「わたしは世の光です。わたしに従う者は、決して闇の中を歩むことがなく、いのちの光を持ちます。」

ヨハネ9:5 わたしが世にいる間は、わたしが世の光です。」

 ノンが言った。
「なるほど~!きょうのジュンは冴えてるね~、」
「へへへ、きょう三人でゆっくり話ができることを私はすごく楽しみにしていたからね。」
 エリが言った。
「じゃ、この2つの『世の光』に挟まれているのが悪王のマナセ王とその息子のアモン王の時代だということになるね。マナセ王はホントに極悪の王だったみたいだね。たとえば列王記第二21章には、このように書いてあるよ。」

Ⅱ列王21:16 マナセは、ユダに罪を犯させて、主の目に悪であることを行わせた罪だけでなく、咎のない者の血まで多量に流したが、それはエルサレムの隅々に満ちるほどであった。

 ノンが言った。
「預言者のイザヤはマナセ王に殺されたという伝承もあるね。ヘブル書の『のこぎりで引かれ』た者とは、イザヤのことだという説もあるみたいだよ。」

ヘブル11:36 また、ほかの人たちは嘲られ、むちで打たれ、さらに鎖につながれて牢に入れられる経験をし、
37 また、石で打たれ、のこぎりで引かれ、剣で切り殺され、羊ややぎの皮を着て歩き回り、困窮し、圧迫され、虐待されました。

 ジュンが言った。
「マナセ王は偶像を礼拝していただけでなく、預言者たちをたくさん殺していたんだね。悪魔のような王だね。」
 ジュンが「悪魔」と言ったのを聞いて、ノンが言った。
「あ、そうか。じゃ、ヨハネ8章の『悪魔』は、たぶんマナセ王のことだね。」

ヨハネ8:44 「あなたがたは、悪魔である父から出た者であって、あなたがたの父の欲望を成し遂げたいと思っています。悪魔は初めから人殺しで、真理に立っていません。彼のうちには真理がないからです。悪魔は、偽りを言うとき、自分の本性から話します。なぜなら彼は偽り者、また偽りの父だからです。」

 ノンはつぶやいた。
悪魔のマナセ王が預言者のイザヤを殺したという伝承は確かに有り得る話だな…」
 そして、ノンのテンションが再び上がり始めた。
「そうか!分かったぞ!やっと分かった~!」
 エリとジュンが同時に聞いた。
「何が?」
「僕は以前から、ヨハネ7章のイエス様の『大きな声で言われた』という記述を不思議に思っていたんだよ。わざわざ『大きな声で』と書いてあるのは、何か理由があるんじゃないかな~と思っていたんだよね。」

ヨハネ7:28 イエスは宮で教えていたとき、大きな声で言われた。「あなたがたはわたしを知っており、わたしがどこから来たかも知っています。しかし、わたしは自分で来たのではありません。わたしを遣わされた方は真実です。その方を、あなたがたは知りません。」

ヨハネ7:37 さて、祭りの終わりの大いなる日に、イエスは立ち上がり、大きな声で言われた。「だれでも渇いているなら、わたしのもとに来て飲みなさい。」

「このヨハネ7章の『大きな声で言われた』イエス様って、きっとイザヤのことだよ。イザヤ書には『叫ぶ』ということばが多く出て来るでしょ。たとえばイザヤ40章。」

イザヤ40:3 荒野で叫ぶ者の声がする。「主の道を用意せよ。荒れ地で私たちの神のために、大路をまっすぐにせよ。」

叫ぶって大きな声で言うことだから、ヨハネ7章のイエス様はイザヤなんだね。4章のイエス様は預言者のエリヤに重ねられ、6章ではエリシャに重ねられていたけど、7章ではイザヤに重ねられているんだね。」
「うん、うん」
 エリとジュンは興味津々でノンの次のことばを待った。
「それって、つまり『預言者のことば=イエス様のことば』って、ことじゃないかな?ヨハネは1章の冒頭で書いているでしょ。」

ヨハネ1:1 初めにことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。

「『ことば=イエス様』だから、預言者を通して語られた天の神様のことばは、すべてイエス様のことばだったということになるんじゃないかな?」
 エリがうなずきながら言った。
「そうか~。うん、そうかもしれないね。いや、きっとそうだよ。ヨハネ10章でイエス様は、『わたしと父とは一つです』と言ってるもんね。」

ヨハネ10:30 「わたしと父とは一つです

 ジュンのテンションもまた上がった。
「面白いね~。ヨハネの福音書は『初めにことばがあった』で始めることで、預言者を通して語られた神様のことばは、すべてイエス様のことばだったと伝えているんだね。何だか感動するね~。」

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連載28(続編14)預言者のことば=イエスのことば(3)

2025-01-27 06:09:10 | クラーク先生と静岡学問所の学生たち
福音の新発見(14)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~

目次・参考文献

預言者のことば=イエスのことば(3)
 ジュンは言った。
「ノンが言ったように、ヨハネ7章から10章の終わり頃までイエス様はずっと南のエルサレムにいる。それは、6章の終わりに北王国が滅亡してしまったからなんだね。ここまで分かると、また続々と新しい発見がありそうだね!」
 エリはコーヒーを一口飲んでから言った。
「何だかスゴイことになって来たね。でも、ここは落ち着いて、もう1度リストの1番を見てみようよ。」

1. マタイ・マルコ・ルカのイエスは北のガリラヤで宣教を開始し、その後南下してエルサレムに入って十字架で死んだのでイエスの旅路は「北→南」の一方通行。それに対してヨハネの福音書のイエスは東西南北を何度も行き来していて、エルサレムには三度行った。

 エリは続けた。
「イエス様は東西南北を何度も行き来しているでしょ。南北の動きについては旧約聖書の列王記の北王国と南王国の出来事と重なっているらしいことが分かったけど、東西の動きについては、どうなのかな?」
 ノンが言った。
「イエス様は10章の終わりで『ヨルダンの川向こう』に行ったよね。」

ヨハネ10:40 そして、イエスは再びヨルダンの川向こう、ヨハネが初めにバプテスマを授けていた場所に行き、そこに滞在された。

「それから、イエス様は11章でまたヨルダン川のこちら側に戻っているね。」

ヨハネ11:7 それからイエスは、「もう一度ユダヤに行こう」と弟子たちに言われた。

 ジュンがノンに聞いた。
「エルサレムがあるユダヤはヨルダン川の西側にあるから、ヨルダンの川向こうというのは、ヨルダン川の東側ということ?」
「うん、そうだよ。だからイエス様はヨハネ10章では西→東、11章では東→西に移動したんだね。」
 ジュンがつぶやいた。
「ヨルダン川のだったら、ユダヤから遠く離れたバビロンでも良いのかな・・・」
 ノンがハッと気付いたように、言った。
「そうか!そうだよね!これはバビロン捕囚のことだよね!」
 エリは感動していた。
「う~ん、ヨハネの福音書って本当に面白いね。ヨルダンの川向こうと書いてあるからワタシはヨルダン川からあまり離れていない地域を思い浮かべていたけど、遠く離れたバビロンが重なっているとはね。まさにホール4階の高い所でピアノの演奏を聴いている感じだね。」
 自分のバビロンのつぶやきにノンとエリが大きく反応したことで、ジュンは勇気づけられた。
「そうすると、ヨハネ11章のイエス様の「もう一度ユダヤに行こう」は約70年後のエルサレム帰還のことだね。表向きはイエス様がヨルダンの川向こうにいたのは数日間だけど、それが何十年もの歳月と重ねられているなんて、ヨハネの福音書のスケールの大きさはスゴイね~。」

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