福音の新発見(18)
~続・クラーク先生と静岡学問所の学生たち~
目次・参考文献
バビロン捕囚からエルサレム復興まで
エリがまた提案した。
「せっかくだからヨハネ10~11章も、もう少し詳しく見てみたいな。まだまだ面白いことが分かりそうな気がするよ。」
ノンが応じた。
「うん、そうしよう。律法の書が見つかったヨシヤ王の時代の後は、また不信仰な悪い時代に逆戻りしちゃったんだよね。」
明るかったジュンの表情が曇った。
「天のイエス様のため息が聞こえて来るような気がするね。イスラエルの王たちは、どうしてこんなにも不信仰なんだろうね。」
「僕もそう思うよ。天の神様は預言者エレミヤを通して王たちに不信仰を改めるように何度も警告したのにね。たとえばエレミヤ7章とか。」
エレミヤ7:1 主からエレミヤにあったことばは、次のとおりである。
2 「主の宮の門に立ち、そこでこのことばを叫べ。『主を礼拝するために、これらの門に入るすべてのユダの人々よ、主のことばを聞け。
3 イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。あなたがたの生き方と行いを改めよ。そうすれば、わたしはあなたがたをこの場所に住まわせる。
4 あなたがたは、「これは主の宮、主の宮、主の宮だ」という偽りのことばに信頼してはならない。
5 もし、本当に、あなたがたが生き方と行いを改め、あなたがたの間で公正を行い、
6 寄留者、孤児、やもめを虐げず、咎なき者の血をこの場所で流さず、ほかの神々に従って自分の身にわざわいを招くようなことをしなければ、
7 わたしはこの場所、わたしがあなたがたの先祖に与えたこの地に、とこしえからとこしえまで、あなたがたを住まわせる。
ジュンが言った。
「それなのに南王国の王たちが不信仰を改めなかったので、天の神様は南王国を滅ぼすことにして、外国人の略奪隊をエルサレムに送ったんだよね。」
Ⅱ列王24:2 主は、カルデア人の略奪隊、アラムの略奪隊、モアブの略奪隊、アンモン人の略奪隊を遣わしてエホヤキムを攻められた。ユダを攻めて滅ぼすために彼らを遣わされたのである。主がそのしもべである預言者たちによって告げられたことばのとおりであった。
ジュンのことばを聞いて、エリが言った。
「あっ、そうか!だからヨハネ10章1節のイエス様のことばは、エレミヤの叫びなんだね。」
ヨハネ10:1 「まことに、まことに、あなたがたに言います。羊たちの囲いに、門から入らず、ほかのところを乗り越えて来る者は、盗人であり強盗です。」
ジュンが言った。
「うん、うん。エルサレムは門を閉めて防御を固めていたけど、外国人の略奪隊は門から入らずに城壁を乗り越えて囲いの中に侵入して略奪したんだね。」
ノンも言った。
「この列王記第二24章2節にあるエホヤキム王というのも、とんでもなく不信仰な悪王だったみたいだね。エレミヤを通して語られた神のことばを口述した巻物をエホヤキム王は暖炉の火ですべて燃やしてしまったとエレミヤ36章には書いてあるからね。」
36:1 ユダの王、ヨシヤの子エホヤキムの第四年に、主からエレミヤに次のようなことばがあった。
2 「あなたは巻物を取り、わたしがあなたに語った日、すなわちヨシヤの時代から今日まで、わたしがイスラエルとユダとすべての国々について、あなたに語ったことばをみな、それに書き記せ。
3 ユダの家は、わたしが彼らに下そうと思っているすべてのわざわいを聞いて、それぞれ悪の道から立ち返るかもしれない。そうすれば、わたしも、彼らの咎と罪を赦すことができる。」
4 それでエレミヤは、ネリヤの子バルクを呼んだ。バルクはエレミヤの口述にしたがって、彼に語られた主のことばを、ことごとく巻物に書き記した。
21 王はユディに、その巻物を取りに行かせたので、彼はそれを書記エリシャマの部屋から取って来た。ユディはそれを、王と王の傍らに立つすべての首長たちに読んで聞かせた。
22 第九の月であったので、王は冬の家の座に着いていた。彼の前には暖炉の火が燃えていた。
23 ユディが三、四段を読むごとに、王は書記の小刀でそれを裂いては暖炉の火に投げ入れ、ついに、巻物をすべて暖炉の火で焼き尽くした。
このエレミヤ36章の記述を読んで、エリが言った。
「そうか!じゃ、ヨハネ10章のイエス様が
冬の日に『
聖書が廃棄されることはあり得ない』と言ったのは、エホヤキム王が暖炉の火で巻物を燃やしてしまったことを指しているんだね!」
ヨハネ10:22 そのころ、エルサレムで宮きよめの祭りがあった。時は冬であった。
23 イエスは宮の中で、ソロモンの回廊を歩いておられた。
34 イエスは彼らに答えられた。「あなたがたの律法に、『わたしは言った。「おまえたちは神々だ」』と書かれていないでしょうか。
35 神のことばを受けた人々を神々と呼んだのなら、聖書が廃棄されることはあり得ないのだから、
ジュンのテンションがまた上がった。
「すご~い。前から私はこのイエス様の『
聖書が廃棄されることはあり得ない』が気になっていたんだよね。この『
廃棄』ということばに唐突感を覚えていたんだけで、そっか~、これはエホヤキム王の『巻物焼き尽くし事件』のことを指していたんだね。」
エリが言った。
「そうして、さっきノンとジュンが言ったように、南王国の人々は
ヨルダンの川向こうのバビロンに捕囚として引かれて行ったんだね[連載28]」。
ヨハネ10:40 そして、イエスは再びヨルダンの川向こう、ヨハネが初めにバプテスマを授けていた場所に行き、そこに滞在された。
エリは続けた。
「『預言者のことば=イエス様のことば』だから、ここはエゼキエルだね。」
エゼキエル1:1 第三十年の第四の月の五日、私がケバル川のほとりで捕囚の民とともにいたとき、天が開け、私は神々しい幻を見た。
2 それはエホヤキン王が捕囚となってから五年目の時であった。
ノブのテンションも再び上がって来た。
「ヨハネ11章でラザロが病気で死んだことは明らかにエルサレムの滅亡のことだけど、イエス様はラザロが死ぬまで
川向こうにとどまっていたよね。これって、
『バビロン捕囚→エルサレム滅亡』
の順番としっかり合致しているね。」
ジュンが聞いた。
「史実は『エルサレム滅亡→バビロン捕囚』じゃなくて、『バビロン捕囚→エルサレム滅亡』ということだね?」
「うん、そうだよ。列王記第二は、
バビロン捕囚は24章に、書いてあって、
エルサレム滅亡は25章に書いているからね。」
【バビロン捕囚】
Ⅱ列王24:11 バビロンの王ネブカドネツァルが都にやって来たとき、彼の家来たちは都を包囲していた。
12 ユダの王エホヤキンは、その母、家来たち、高官たち、宦官たちと一緒にバビロンの王に降伏したので、バビロンの王は、その治世の第八年に、彼を捕虜にした。
13 バビロンの王は、主の宮の財宝と王宮の財宝をことごとく運び出し、主の神殿の中にあるイスラエルの王ソロモンが作ったすべての金の用具を切り裂いた。主が告げられたとおりであった。
14 彼はエルサレムのすべて、すなわち、すべての高官、すべての有力者一万人、それに職人や鍛冶もみな、捕囚として捕らえ移した。貧しい民衆のほかは残されなかった。
15 彼はさらに、エホヤキンをバビロンへ引いて行き、王の母、王の妻たち、その宦官たち、この国のおもだった人々を、捕囚としてエルサレムからバビロンへ行かせた。
16 バビロンの王は、すべての勇士たち七千人と、職人、鍛冶千人からなる勇敢な戦士たちすべてを、捕囚としてバビロンへ連れて行った。
【エルサレム滅亡】
Ⅱ列王25:8 第五の月の七日、バビロンの王ネブカドネツァル王の第十九年のこと、バビロンの王の家来、親衛隊の長ネブザルアダンがエルサレムに来て、
9 主の宮と王宮とエルサレムのすべての家を焼き、そのおもだった建物をことごとく火で焼いた。
10 親衛隊の長と一緒にいたカルデアの全軍勢は、エルサレムを取り巻く城壁を打ち壊した。
ノンは続けた。
「ラザロが病気で死にそうだと聞いたイエス様だったけど、すぐにはユダヤに戻らなかった。」
ヨハネ11:1 さて、ある人が病気にかかっていた。ベタニアのラザロである。ベタニアはマリアとその姉妹マルタの村であった。
2 このマリアは、主に香油を塗り、自分の髪で主の足をぬぐったマリアで、彼女の兄弟ラザロが病んでいたのである。
3 姉妹たちは、イエスのところに使いを送って言った。「主よ、ご覧ください。あなたが愛しておられる者が病気です。」
4 これを聞いて、イエスは言われた。「この病気は死で終わるものではなく、神の栄光のためのものです。それによって神の子が栄光を受けることになります。」
5 イエスはマルタとその姉妹とラザロを愛しておられた。
6 しかし、イエスはラザロが病んでいると聞いてからも、そのときいた場所に二日とどまられた。
「そうして、ラザロが死んでからイエス様はユダヤに戻ったんだよ。」
ヨハネ11:14 そこで、イエスは弟子たちに、今度ははっきりと言われた。「ラザロは死にました。
15 あなたがたのため、あなたがたが信じるためには、わたしがその場に居合わせなかったことを喜んでいます。さあ、彼のところへ行きましょう。」
ジュンは感動していた。
「そうか~。ヨハネ11章のイエス様がすぐにラザロの家に行かなかったのは、エルサレムはまだ滅亡していなかったからなんだね。ヨハネの福音書って、本当に芸が細かいね。」
エリのテンションも上がった。
「う~ん、そうなんだね。だから、イエス様は『
霊に憤りを覚えたんだね。やっと分かったよ。』
ヨハネ11:32 マリアはイエスがおられるところに来た。そしてイエスを見ると、足もとにひれ伏して言った。「主よ。もしここにいてくださったなら、私の兄弟は死ななかったでしょうに。」
33 イエスは、彼女が泣き、一緒に来たユダヤ人たちも泣いているのをご覧になった。そして、霊に憤りを覚え、心を騒がせて、
34 「彼をどこに置きましたか」と言われた。彼らはイエスに「主よ、来てご覧ください」と言った。
ノンは何度もうなずきながら言った。
「僕もやっと分かったよ。天の父とイエス様はエレミヤを通して南王国の王たちに不信仰を改めるように何度も警告したのに従わなかった。それで結局はエルサレムを滅ぼさざるを得なかった。『
霊に憤りを覚え』は、そういう時空を超えた憤りのことを示しているんだね。」
ジュンは目に涙を浮かべながら言った。
「神殿が焼け落ち、城壁も壊されてエルサレムが廃墟になってしまったことは、天の父とイエス様にとっても本当につらいことだったんだね。それでイエス様は涙を流したんだろうね。」
ヨハネ11:35 イエスは涙を流された。
エリも何度もうなずいた。
「そうして、エズラの時代に神殿が再建され、ネヘミヤの時代に城壁が修復されて、エルサレムは復興した。それがラザロの復活だね。」
ヨハネ11:43 イエスは大声で叫ばれた。「ラザロよ、出て来なさい。」
44 すると、死んでいた人が、手と足を長い布で巻かれたまま出て来た。彼の顔は布で包まれていた。イエスは彼らに言われた。「ほどいてやって、帰らせなさい。」
ノンが言った。
「エルサレムが復興したことは素晴らしいことだったけど、旧約聖書の最後のマラキ書は、人々がまた不信仰に陥っていることを記しているよね。」
マラキ1:1 宣告。マラキを通してイスラエルに臨んだ主のことば。
2 「わたしはあなたがたを愛している。──主は言われる──しかし、あなたがたは言う。『どのように、あなたは私たちを愛してくださったのですか』と。
ため息をついて、ノンは続けた。
「ハー、ひどいね。エルサレムの人々は形式的には律法を守るようにはなったけど、天の神様の愛がぜんぜん分かっていなかったということだね。そうして、ヨハネの福音書は、
イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをせずと書いて旧約聖書がマラキ書で終わったことを示している。」
ヨハネ11:54 イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをせず、そこから荒野に近い地方に去って、エフライムという町に入り、弟子たちとともにそこに滞在された。
ジュンもため息をついた。
「神様の愛は聖霊が与えられなければ、分からないということだね。イエス・キリストが天から遣わされて父のことを弟子たちに教えた。そうして十字架で死んで復活した。そのイエス様を信じて聖霊が与えられて、ようやく神様の愛が分かるようになるということだね。」