知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

標章にまつわる事情に商標権行使の目的を併せ考慮して商標権の行使を権利の濫用とした事例

2012-02-12 19:33:56 | 商標法
事件番号 平成22(ワ)32483
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成24年01月26日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 阿部正幸

3 争点4(原告の本件商標権の行使が権利の濫用に当たり許されないか)について
 被告標章4及び5について,被告に法32条1項の先使用権が認められないことは,上記2説示のとおりである。
 しかしながら,
(1) 社会通念上同一の標章と認められる「KAMUI」の標章をゴルフクラブ及びその関連用品であるキャディバッグへ使用することについては,上記2のとおり,被告に法32条1項の先使用権が認められ,また,上記2(1)の認定事実によれば,
(2) 原告と被告は,カムイクラフトの共同事業を解消した後は,原告は「KAMUITOUR」(カムイツアー),「ASIRI」(アシリ),被告は「KAMUIPRO」(カムイプロ),「TYPHOONPRO」(タイフーンプロ),「KAMUI」(カムイ)の名称でそれぞれゴルフクラブを販売し,日本国内では互いの名称について異議を述べたことは認められないこと,
(3) 被告が卑弥呼からCAMUI商標について使用許諾を得て,平成12年ころから被告のゴルフクラブに「KAMUI」の標章を使用し始め,被告のゴルフクラブに被告標章1,3等の「KAMUI」単独の標章を付すようになったこと,
(4) 原告は,被告が「KAMUI」単独の標章を使用していることをその使用開始から程なくして認識していたものの,本件商標が登録されるまで,その使用について特段異議を述べることはなかったこと,
(5) 原告は,本件商標が登録されるまで,日本国内で製造・販売するゴルフクラブに「KAMUI」単独の標章を使用することはなかったこと,
(6) 雑誌等においても,原告のゴルフクラブを「カムイ」のゴルフクラブとして扱うものは平成9年から平成11年までのものがほとんどで,「KAMUI」や「カムイ」の単独の表記が原告の標章として浸透していなかったこと
が認められる。
 そして,・・・総合すれば,原告が被告による「KAMUI」単独の標章の使用の事実を知りながら,あえて卑弥呼のCAMUI商標の取消審判を得た上で,本件商標を登録し,被告に対し本件商標権を行使したのは,韓国で被告が原告の「KAMUITOUR」の商標を付したゴルフクラブの取扱いの中止を各販売店に要請したことに報復する目的があったためであることが認められる。

 上記(1)ないし(6)の事情に原告の本件商標権の行使の目的を併せて考慮すれば,原告が被告に対し,本件商標(KAMUI)と類似すると認められる被告標章4(「KAMUI TyphoonPro」の標章)及び5(「KAMUI」と「PRO」から成る二段表記の標章)をゴルフクラブに使用する行為について,本件商標権を行使することは,正当な権利行使とは認められず,権利の濫用として認められないというべきである。

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