知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

顕著な効果の主張と明細書の記載の裏付

2007-11-26 05:58:11 | 特許法29条2項
事件番号 平成18(行ケ)10303
事件名 特許取消決定取消請求事件
裁判年月日 平成19年11月22日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 田中信義

『2 取消事由2(特別顕著な作用効果の看過)について
 原告は,本件明細書の実施例2のヒヨコ漿尿膜(CAM)アッセイにおいて,タキソールが,強力で長期にわたる抗血管形成性を有すること,タキソールが,生体を死滅させる毒性をもたずに生体内で抗血管形成性を有することが示され,実施例16,17で,タキソールが血管形成依存性疾患である腫瘍の成長を阻害することがインビボ(生体内)での実験により実証されていると主張する
 しかしながら,本件明細書には,タキソールで被覆されたステントによる,血管形成術後の再狭窄防止効果を実証する実施例(試験結果)の記載がなく,上記各実施例(実験)があるのみでは,本件発明(タキソールによって被覆されているステント)が,血管形成術後の再狭窄を防止する上で,顕著な効果を奏することが実証されたとすることはできない

 すなわち,本件優先権主張日当時,血管形成術後の再閉塞及び再狭窄が血管形成依存性疾患であることが,一般に知られていなかったことは,原告の自認するところであり,そうであれば,本件明細書において,タキソールが強力で長期にわたり,かつ,生体を死滅させる毒性をもたずに生体内で抗血管形成性を有することが実証されたとしても,血管形成術後の再閉塞及び再狭窄が血管形成依存性疾患であることが実証されていない以上,タキソールで被覆されたステントによる,血管形成術後の再狭窄防止の効果が実証されたとはいえないからである

 また,原告は,冠状動脈狭窄の治療に係る臨床試験(甲第13,第27号証,甲第43号証の1~18)において,本件発明が,従来型のステントに比べて,予想外の顕著な効果を示していると主張するが,上記各臨床試験の結果は,本件明細書に記載されたものではなく,かつ,本件優先権主張日当時の知見でもない

 したがって,本件発明が,顕著な作用効果を奏するとの原告の主張は失当である。』

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