知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

商標法56条1項が準用する特許法134条1項の趣旨

2012-03-18 11:03:48 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10184
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年03月08日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

1 本件審判手続における手続違背(取消事由4)について
(1) 本件審判手続の経緯
 原告らは,平成22年6月25日,本件審判を請求した。

 原告ハッピーに対し,特許庁長官は,同年7月8日ころ,本件審判事件の審判番号並びに本件審判事件の審判官及び審判書記官の氏名を(甲32,33),審判長は,同年9月17日,本件審判の審理は書面審理にする旨を(甲34),特許庁長官は,平成23年3月1日ころ,審判官及び審判書記官の変更を(甲35),審判長は,同月30日ころ,審理の終結を(甲36),それぞれ通知した。
 また,原告京都産業に対しては,審判長は,平成23年4月21日ころ,本件審判の審理は書面審理にする旨を(甲37),同月22日ころ,審理の終結を(甲38)それぞれ通知したが,特許庁長官は,本件審判事件の審判番号,本件審判事件の審判官及び審判書記官の氏名,審判官及び審判書記官の変更については,通知しなかった(弁論の全趣旨)。
 被告は,平成22年9月6日ころ,特許庁に答弁書を提出した(甲31)。特許庁は,平成23年5月6日付けで審決をし,同月13日,原告らに対し,審決書謄本と共に答弁書の副本が発送された(甲39の1,39の2,40の1,40の2)。

(2) 判断
 商標法56条1項が準用する特許法134条3項は,審判長は,答弁書を受理したときは,その副本を請求人に送達しなければならないと規定する。同規定は,審判請求手続において,答弁書が提出された場合には,その副本を請求人に送達して,請求人に被請求人の主張の内容を知らせ,請求人にこれに対応する機会を付与するなど,適正な審判手続を実現する趣旨で設けられた規定といえる。
 同項が設けられた上記の趣旨に照らし,本件審判手続の当否を検討すると,平成22年9月6日には被告から答弁書が出されていたにもかかわらず,答弁書副本が原告らに発送されたのは,答弁書提出から8か月を経過した後である平成23年5月13日であり,しかも,審決書謄本と共に発送されている。このような手続は,特許法が答弁書副本の送達を義務づけた上記の趣旨に著しく反した措置というべきであり,同法134条3項に違反する

 もっとも,審判長は,請求人に対し,答弁書に対する再反論等の機会を与えなければならないものではない(商標法56条1項が準用する特許法134条1項参照)。しかし,その点を考慮に入れたとしてもなお,審決書謄本とともに答弁書副本を送達した本件の措置が適法として許されるものとはいえない

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