知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

商標法9条の4所定の要旨の変更の判断事例

2010-05-23 17:34:59 | 著作権法
事件番号 平成21(行ケ)10414
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年05月12日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

〔原告の主張〕
 ・・・
 そうすると,「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」との表現で第32類を指定して登録出願した場合,同シロップが第32類に属する商品概念である清涼飲料に含まれる商品として登録出願されたものであると自然かつ一般的に理解できる。
 他方,本件商標の本件補正後の指定商品である「メープルシロップ」は,調味料として第30類に区分され,第32類の「シロップ」とは非類似商品として取り扱われてきた(甲16,17)。


 したがって,「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」との表現で第32類を指定して登録出願された本件商標について,「メープルシロップ」との表現で第30類を指定することとした本件補正は,要旨の変更に当たり,本件商標の出願日は,本件出願日ではなく,本件補正日である平成19年4月11日となる。
 ・・・

第4 当裁判所の判断
1 原告は,本件商標の登録が各引用商標との関係で商標法8条1項に違反して無効であるとの主張の前提として,本件補正が商標法9条の4所定の要旨の変更に当たると主張するが,出願された商標について行われた補正が要旨の変更に当たるか否かは,当該補正が出願された商標につき商標としての同一性を実質的に損ない,第三者に不測の不利益を及ぼすおそれがあるものと認められるか否かにより判断すべきものである

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 そうすると,本件補正に係る「メープルシロップ」は,本件出願に係る「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」との表現を,より一般的な表現に改めただけであって,両者は,その内容において同一の商品を指定するものであったといわなければならない

 したがって,第32類に「シロップ」が含まれているからといって,本件出願に係る「カエデの木から採取した樹液を原料とするシロップ」との表現により一般の需要者及び取引者がこれを清涼飲料に含まれる「シロップ」と誤認するおそれはなく,調味料などとして利用される「メープルシロップ」と理解するのが一般的であるから,本件出願に際して商品区分を第32類と指定したことは,第32類に「シロップ」が含まれていたことにより,その記載を誤ったにすぎないものというべく,本件補正により第32類を第30類とすることは,誤記の訂正の範囲を出ないものといえる。

3 本件補正は,以上のとおりのものであって,そもそも,本件商標について商標としての同一性を何ら損なっていないし,また,それにより第三者に不測の不利益を及ぼすおそれが認められる場合ではないから,商標法9条の4所定の要旨の変更には当たらず,これと結論を同じくする本件審決に誤りはない

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