知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

設計事項の判断事例-技術的意義を有するか

2008-09-11 07:19:42 | 特許法29条2項
事件番号 平成19(行ケ)10327
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年08月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟

a 相違点1について
 原告らは,相違点1に係る本願補正発明の構成は,当業者が容易に想到できた事項であるとはいえないと主張する

しかし,以下のとおり,原告らの主張は失当である。

 引用例発明においても,複数の商品情報(商品カタログのイメージデータ)と商品の標準イメージがCD-ROMに格納され,これらの情報は通信回線を介して利用者に提供されるものであることは,既に検討したとおりである。
 そして,「デジタル化されたイメージを含む複数の商品情報」に「標準イメージ」を組み込んだものを1つのデータとして利用者に提供するかどうかは,通信販売における単なるサービスの仕方の問題であって,当業者が適宜行うことができる設計的事項にすぎないというべきである。

 したがって,相違点1に係る本願補正発明の構成は当業者が容易に想到できたというべきであり,これと同旨の審決の判断に誤りはない。

・・・

c 相違点4について
 原告らは,相違点4に係る本願補正発明の構成は,当業者が容易に想到できた事項であるとはいえないと主張する。
 しかし,以下のとおり,原告らの主張は失当である。

 前記アで検討したとおり,引用例1に記載されたイメージデータの色調・濃淡の補正表示方法と本願補正発明の色補正方法とは,商品カタログの複数のデジタル画像を同じ補正値に基づいて色補正して表示する点では変わるところがないというべきであって,両者が相違するのは,引用例1に記載された方法では,補正値を設定した後に,CD-ROMからデジタル画像を順次読み出し,色補正をした上で表示するようにしているのに対し,本願補正発明では,複数のデジタル画像を表示した状態で,設定した補正値により同時に色補正をしている点である。

 そして,「基準色を示す画像が印刷等により表示された部材と,画面に表示された基準色を示す画像とを目視で比較して,手動で一致させることで色の調整を行う技術」や,「色の補正の対象となる画像と基準色を示す画像を同時に表示させ,前記基準色を示す画像にもとづいて色を調整することで,同時に表示されている画像の色を補正する技術」が,本願の出願前の周知技術であったことに照らせば,相違点4に係る本願補正発明の構成は,技術的には何ら見るべきものがあるとはいえず,単なる色補正のタイミングの問題というべきであって,当業者が適宜行うことができる設計的事項にすぎないというべきである。

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