知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

請求項の用語の意義の解釈

2008-07-27 12:27:10 | 特許法29条2項
事件番号 平成19(ワ)32525
事件名 特許権侵害差止請求事件
裁判年月日 平成20年07月24日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎
・・・
ウ 上記ア及びイの認定事実を総合すれば,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の「接続信号中の応答メッセージ」(構成要件C)は,「電話を発信したときに発信側に返戻される信号音」のうち,交換機から応答されて回線網を経て通知される「音声メッセージ」,すなわち,「音声(可聴音)として一定の意味内容を認識できる伝言情報」を意味するものと解するのが相当である
 そして,本件発明においては,音声(可聴音)として一定の意味内容を認識できる伝言情報である「応答メッセージ」に基づいて,「新電話番号を案内している電話番号,新電話番号を案内していない電話番号,一時取り外し案内しているが新電話番号を案内していない電話番号」の「3種類の番号に仕分け」していること(構成要件C)が理解される。
・・・
(3) 原告の主張に対する判断
ア 原告は,「メッセージ」は,「任意の量の情報。その始めと終りは定義されているかあるいは暗黙にある。」を意味し,合目的的な情報のまとまりであり,被告装置の「切断メッセージ中の理由番号」は,本件発明の構成要件Cの「接続信号中の応答メッセージ」に相当する旨主張する。
 しかし,前記(1)ウで説示したとおり,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の「接続信号中の応答メッセージ」(構成要件C)は,「電話を発信したときに発信側に返戻される信号音」のうち,「音声メッセージ」すなわち「音声(可聴音)として一定の意味内容を認識できる伝言情報」を意味するものである。

 加えて,
 本件発明は,「無効となった電話番号」を「接続信号中の応答メッセージに基づいて・・・3種類の番号に仕分けして」(請求項1)おり,構成要件Cの「応答メッセージ」は3種類の番号に仕分けするよりどころとなるものでなければならないが,原告の主張を前提とすると,「応答メッセージ」には,「応答情報あるいはその情報のまとまり」であれば,いかなる情報も含まれることになって,3種類の番号を仕分けするよりどころとならない情報をも含むものと解釈せざるを得なくなること,
 また,前記(1)イ(イ)及び(ウ)認定のとおり,本件明細書には,本件発明は,接続信号中の「音声メッセージ」に基づいて3種類の電話番号に仕分けすることが記載されている一方で,「音声メッセージ」以外の接続信号に基づいて3種類の電話番号の判別・仕分けを行うことができることについての記載も示唆もないこと
 に照らすならば,被告装置の「切断メッセージ中の理由番号」が,構成要件Cの「接続信号中の応答メッセージ」に相当するとの原告の主張は採用することができない。


<控訴審>
事件番号 平成20(ネ)10065
事件名 特許権侵害差止請求控訴事件
裁判年月日 平成21年02月18日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明
では侵害認定。
「①本件特許の特許請求の範囲(構成要件C)には,「接続信号中の応答メッセージ」と記載され,可聴音に限定する記載はないこと,②したがって,本件発明は,その技術思想として「応答メッセージ」によって無効電話番号を判別する技術が開示されていると解されること,③証拠(甲16,17)によれば,本件特許出願時において,既にISDN技術が存すること,ISDNの網から応答される情報を取得し,同情報に基づいて電話番号の有効性を判別することが知られていたことからすれば,本件明細書に接した当業者としては,本件発明においては,ISDN技術を除外して,上記の技術思想が開示されていると認識することはないというべきである。したがって,仮に本件明細書における実施例が音声メッセージによって無効電話番号を判別する技術に関するものであっても,それはあくまで実施例として示されたにすぎないと解すべきであるから,本件発明の技術的範囲が音声メッセージに限定されるものではない。」
なお、ISDN技術は控訴審で初めて主張されたもののよう。

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