知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

著名商標を含む商標を付した商品の出所の混同のおそれ

2012-07-22 22:42:02 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10436
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月18日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平
商標法商標法4条1項15号

(2) 上記認定の事実によれば,「BOSS/HUGO BOSS」商標は,フーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして,本件商標登録出願日及び現在において,海外及び我が国で著名となっているものと認められる。
 ここで,「BOSS」の欧文字は,2段に構成された「BOSS/HUGO BOSS」商標中で上段に顕著に表された部分であり,フーゴ・ボスAGが用いる多数のブランドの大部分で共通する部分であり,「BOSS/HUGO BOSS」商標の要部と認められる。「BOSS」の欧文字からは,「ボス」の称呼を生じ,「親分」「上司」の観念を生じる。

(3) 本件商標の取引の実情をみるに,・・・,被告は本件商標を付した小型ファン付き作業服を販売し,その開始は,本件商標の出願とほぼ同時期である。そのパンフレット(甲98)には,上方に大書された「クールボス」の文字の下方に,大きな文字で「涼しい」「作業服」との記載があり,・・・。「涼しい」を英語で「クール」と称することは一般的な認識であるから,この記載を見る者は,「クールボス」の文字中の「クール」の部分が「涼しい」に対応し,「ボス」の部分が「作業服」に対応するとの理解に誘導されることになる。「クール」の文字が説明的で出所表示機能を有しないのに対し,「ボス」の文字は,これから生じる「親分」「上司」の観念が作業服とは結び付かず,作業服を「ボス」と呼ぶこともないことからすると,本件商標からは,前記のように紳士服及び紳士用品の商品分野において著名な「BOSS/HUGO BOSS」商標を想起する可能性が高いといえる。

 このように,「BOSS/HUGO BOSS」商標がフーゴ・ボスAGにかかる紳士服及び紳士用品について使用されるものとして我が国において著名となっていること,作業服の購入者に男性が多いであろうことからからすると,「クールボス」の商標が付された作業服が販売されれば,その作業服がフーゴ・ボスAG又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,出所について混同を生じるおそれがあることになる。

(4) 被告は,「クールボス」の商標が付された作業服とフーゴ・ボスAGの紳士服及び紳士用品は,需要者及び販売経路が異なると主張するけれども,上記認定のとおり「BOSS/HUGO BOSS」商標はカジュアルウェアやスポーツウェアにも付されることからすれば,販売経路が接近する可能性を否定できない。上記認定にかかる「BOSS/HUGO BOSS」商標の著名性に鑑みると,本件商標を指定商品である「通気機能を備えた作業服,洋服,コート」に使用すると,「BOSS/HUGO BOSS」商標との間に混同を生じるおそれがあり,本件商標登録は,15号に違反してされたものと認められる。

最新の画像もっと見る