知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許請求の範囲の明確性要件の判断

2011-11-06 23:33:54 | 特許法36条6項
事件番号  平成22(行ケ)10297
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年09月21日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

イ 取消事由2(特許法36条6項2号違反[本件発明1の「ストレート形状」についての判断は除く,無効理由2])の有無について

(ア) 本件発明1の「0.45≦R1/R2≦0.65」との記載では,R1,R2の各下限,上限が不明瞭であるとの点につきa 原告は,吸引ルーメンの最小内径R2,コアワイヤの最大外径R1の各上限値及び下限値が不明であり,いずれにしても,構成Fに係る数値範囲の全てで訂正明細書に記載された所望の効果が得られるとすることとの関係で,R1,R2の上限値及び下限値は不明であると主張する

しかし,本件発明1の吸引カテーテルは,血管に挿入されるものであるから,吸引ルーメンの外径は,血管の太さに基づいて適宜選択されるものであるところ,本件発明1の吸引カテーテルの「R1」及び「R2」は,血管の太さに関係なく「0.45≦R1/R2≦0.65」の条件を満たすものであるから,本件発明1は十分に明確であり,本件発明1において,R1及びR2の上限値及び下限値が不明であるからといって,本件発明1が不明確であるとはいえない。

b そもそも,特許請求の範囲の明確性要件の判断は,特許請求の範囲の記載がそれ自体で明確であるかどうかに尽き,解決課題や作用効果いかんに左右されるものではないというべきである。

(所感) b.の部分は、特許請求の範囲の記載が言語解釈で不明確な部分(この事例ではR1,R2の上限、下限は確かに不明。)があっても、技術常識や文言解釈(明細書の記載の参酌)によって(技術的に)明確である(技術的には血管の太さも考慮して決める設計事項。)と言える場合があるから、言語解釈で不明確であっても明確でないとは言えない場合があるという意味か。

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