知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

明確性要件を満たしていないとした事例

2013-02-17 21:54:12 | 特許法36条6項
事件番号 平成24(行ケ)10158
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年12月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 井上泰人,荒井章光

 そして,本願発明1に係る特許請求の範囲の記載は,主界面について,「・・・」ものとしており,本願発明が備える「主界面」について,他の構成である「素子」との位置関係及びそれ自体の形状について明確に特定しているものといえる。したがって,本願発明における「主界面」の構成は,本願発明1の特許請求の範囲の記載において明確にされているということができる。
 また,本願発明9に係る特許請求の範囲の記載は,2次界面について,「・・・」ものとしており,本願発明9ないし11が備える「2次界面」について,それ自体の形状について明確に特定しているものといえる。

イ しかしながら,本願発明の特許請求の範囲の記載によれば,「主界面」と「2次界面」とは,同一の形状で特定されているばかりか,本願発明9ないし11に係る特許請求の範囲の記載には,「主界面」と「2次界面」との位置関係が記載されていないため,両者を区別することができず,また,本願発明の属する技術分野における技術常識を参酌しても,「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係は,一義的に明らかであるとはいえない

 そこで,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると,そこには,本願発明における「界面」について,・・・とする旨の記載がある(【0018】前記(1)オ)が,当該記載は,「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係を説明するものではない。また,本願明細書の発明の詳細な説明には,素子の面取りされた側部や素子の端部エッジにもテクスチャ形成を施すことが望ましいとの記載がある(【0034】。前記1キ)が,これらのテクスチャ形成が施される箇所が,本願発明における「主界面」と「2次界面」のいずれに相当するかを特定する記載はない
 さらに,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明9ないし11について記載した箇所もある(【0051】~【0053】。前記1(1)ケないしサ)が,ここには,本願発明9ないし11の特許請求の範囲の記載と同じ内容が記載されているにすぎず,本願発明の「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係を明らかにするものとはいえない

ウ 以上によれば,本願発明にいう「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても明らかではなく,両者を区別することはできないというほかない。
・・・
(3) 小括
 以上によれば,本願発明における「主界面」と「2次界面」との相違及び位置関係は,不明であり,両者を区別することはできないから,本願発明9ないし11に係る特許請求の範囲の記載には,本願発明9ないし11の構成が明確に記載されていないというほかない。
 よって,本件出願は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

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