知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

相違点中のビジネスの方法的要素の扱い

2007-05-27 09:20:56 | 特許法29条2項
事件番号 平成19(行ケ)10003
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成19年05月24日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

『(4) 引用例1発明は,本願発明とは,
本願発明では,処理手段が売上額を累計する売上額累計手段を備え,処理手段が売上額の累計が特典を発生させる条件を満たしたときに特典の内容を付与するのに対し引用例1発明では,処理手段が来客者をカウントして累計人数を計算する手段を備え,処理手段が来客者の累計人数が特典を発生させる条件を満たしたときに特典の内容を付与する点」において相違する(相違点3)。

 しかし,前記2のとおり,引用例2には,売上金額を累計し,その累計額が一定の条件を満たした場合に所定の処理を行うことが記載されている。引用例2に記載されているのは,前記2(1)のとおり,商品販売データ処理装置であるが,本願発明の「サーバ」も,売上額を累計するものであるから,商品販売データを処理する点において引用例2に記載されている装置と同じである

 そうすると,引用例1発明と引用例2に記載されている事項により,「処理装置が売上金額を累計し,売上金額の累計額が購入条件テーブルに格納されている予め設定したボーナスポイントを発行する条件を満足したときには,処理装置が購入者に対してボーナスポイントを発行する点数管理システム」を,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)は,容易に想到することができるというべきである。したがって,相違点3に係る本願発明の構成については,引用例1と引用例2から容易に想到することができる。』

(感想)
 所定の処理をボーナスポイントの発行とすること、については引用文献1,2には記載されていない。しかし、この点はビジネス手法としてありふれたもので適宜採用し得るものにすぎない。したがって、この判断は支持できると思う。
 思うに、進歩性について評価する場合、発明は技術思想の創作なのであるから、構成要素中の技術的意義を見いだせない純粋ビジネス要素については、原則として、実質的な相違点とするべきではなく、設計事項として処理されるべきであろう。

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