知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

周知例の追加が手続き違背でないとされた事例

2008-02-03 17:51:38 | 特許法29条2項
事件番号 平成19(行ケ)10071
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年01月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

『(2) 手続違背の有無について
 審査段階において,拒絶の理由として特定の技術事項が証拠(文献)とともに示され,出願人に対して意見を述べる機会が与えられている場合において,審決において,当該技術が周知であることを裏付ける証拠(文献)を追加して引用することは,新たな技術事項を示して拒絶理由を変更するものではないから,審判手続において,新たに追加された証拠(文献)について,審判請求人に意見を述べる機会を与える必要はなく,その機会を付与しなかったからといって,手続違背を構成する余地はないというべきである。

 前記(1)イによれば,本件拒絶査定は,引用文献1(引用例1)に,引用文献3(甲3)に記載された技術(「フルオロカーボンポリマーに非フルオロカーボンポリマーを組み合わせて被覆材とする」こと)を適用することは容易想到であることを拒絶の理由としたものと認められる。
 そして,前記(1)ウによれば,審決は,引用発明1に組み合わせるべき技術事項(・・・)については,本件拒絶査定で示したものを変更することなく,この技術事項が周知であることを裏付ける証拠として,本件拒絶査定で示した甲3とともに,甲4を付加して例示したものと認められる。

 そうすると,審決が,原告に意見を述べる機会を与えることなく,周知例として甲4を例示したことをもって,本件審判手続において特許法159条2項において準用する同法50条の規定に反する手続があったものと解することはできない。したがって,原告主張の取消事由2も理由がない。』

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