知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

審決書の理由記載において留意すべき事柄

2008-02-03 17:50:56 | Weblog
事件番号 平成19(行ケ)10247
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成20年01月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官飯村敏明

『5 付言
 本件において,原告は,「第3 原告の取消事由」の2に記載したとおりの理由によって,審決には違法があることを強く主張している。
 確かに,本件審決書を見ると,「理由」中の「2.当審の拒絶理由」欄では,審判体における拒絶理由(すなわち審判体における論理過程)は何ら記載されず,審判の過程で発した本件拒絶理由通知の全文のみが記載されているので,この点は妥当を欠くか,少なくとも誤解を招く記載であるといえる。

 そもそも,意匠登録出願に係る拒絶査定に対する不服審判の審理の対象は,意匠法17条所定の意匠登録を拒絶すべき事由が存在するか否かであって,審査又は審判の過程で発せられた「拒絶理由の通知」の当否ではない
 そして,審決は,文書をもって,審決の結論及び理由を記載することを要するから(意匠法52条,特許法157条),仮に,審理の結果,審判体において,拒絶査定不服審判の請求が成り立たないとの結論に至った場合には,審決書の「理由」として,意匠法17条所定の条項のいずれか(本件では意匠法3条1項)に該当すると判断した論理過程,すなわち根拠となる要件及び同要件を充足すると判断した論理過程を,記載することが求められる

 他方,どのような内容の拒絶理由通知を発したかは,特段の事情のない限り,結論に至る論理に影響を与えることはなく,審決の論理とは関係のない事項であるから,審決書の理由として記載すべきではない。

 本件において,取消事由2のような事由により原告から争われた原因は,審決書において,本件拒絶理由通知の内容が,審判体が結論を導いた論理であるとの誤解を与えるような体裁で,「2.当審の拒絶理由」欄に記載されたことにあるといえる(もっとも,本件では,「理由」の「4.当審の検討」欄において,審判体における論理過程が述べられているので,審決に理由不備の瑕疵はないというべきである。)。以上の点は,一般の審決書における理由記載においても留意を要すべき事柄といえよう〔知的財産高等裁判所平成19年12月26日判決・平成19年(行ケ)第10209号,10210号審決取消請求事件参照〕。』

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