知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許発明の寄与率を10%とした事例

2012-10-28 20:04:49 | 特許法その他
事件番号 平成23(ワ)3850
事件名 特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成24年10月11日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康,西田昌吾
特許法102条1項

以下の事情からすれば,本件特許発明の寄与率は,10%とするのが相当である。
(1)本件特許発明の有用性
ア 本件特許発明の技術的意義
・・・
そして,前述したところによれば,本件特許発明の本質的特徴は,このような用途を要する補強リブにより突条を保護し,ピンホールの発生を防止したところにあることが認められる。

イ 代替技術の存否
・・・
そうすると,乙10発明は,本件特許発明と同様の課題を解決するための発明であるとはいえるものの,その実施状況や効果について認めるに足りる証拠もないから,本件特許発明を代替するものといえるかは不明である。

ウ 本件特許発明の作用効果
 証拠によれば,原告が原告製品の製造販売を開始した平成8年より前の平成7年度におけるクレーム総数●●●件のうち折り溝部からの漏れは●●件であったこと(甲26),これに対し,平成11年度における折り溝部からの漏れに関するクレームは●件であり,クレーム総数に占める割合は●●●●%であったこと(甲27の2)が認められる。これらのことからすれば,本件特許発明は,ピンホールの発生を防止するという課題解決において,相応の効果を奏するものであることが認められる。
 もっとも,原告製品及び被告製品の1年当たりの販売数量と対比すると,上記クレーム件数は,総数としてみても極めて数が少ないものである。

(2) 原告による宣伝広告
 証拠(甲23の1ないし25の2)によれば,原告は,原告製品の販売広告において,折り畳み自在であること,軽量であること,その他容器の信頼性を高める工夫がされていることなどとともに,本件特許発明によるピンホールリスクの低減効果についても相当の割合を割いていることが認められる。
 また,軟質プラスチック折り畳み容器自体は,比較的単純な構造のものであり,原告も約42年間にわたり製造販売を継続してきたこと(甲28)などからすれば,相当に成熟した技術分野であること,そうした状況において他の競合製品と差別化するために,本件特許発明が相応の価値を有することは認められる。
 他方において,上記原告の宣伝広告の内容から明らかなとおり,原告製品又は被告製品の購入に当たっては,ピンホールリスク以外の様々な要因についても考慮されることが認められるし,原告の宣伝広告においても,本件特許発明によるピンホールリスクの低減効果については「細部機能改良」の項に記載されていること及び前記(1)ウで検討したところからすれば,本件特許発明の販売における寄与について,過大に評価することはできないものというべきである。

(3)被告による宣伝広告
 証拠(甲3)によれば,被告が,「20リットル改良品(20A)のご提案について」と題する書面を顧客らに送付したこと,同書面は,被告現行品から本件特許発明に関する構成を備えた被告製品に改良したことを報告し,購入を促す内容のものであることが認められる。
 このことからすれば,被告製品についても本件特許発明の実施による販売への寄与があったものと推認される。
 前記(3)のとおり,原告製品又は被告製品の購入に当たっては,ピンホールリスク以外の様々な要因についても考慮されるものであるとしても,被告製品における本件特許発明の販売における寄与率についても,原告製品における寄与率と同等のものと解するのが相当である。

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