知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

達成すべき結果による物の発明の特定

2012-09-30 21:05:44 | 特許法29条2項
事件番号 平成23(行ケ)10402
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子、田邉実
特許法29条2項、特許法36条6項2号

 また,原告は,本件発明の構成F(生産能力を3000本/h+300本/h(・・・中略・・・)としたこと)における「生産能力」は,ゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置の効果そのものであって,公知発明が達成できなかった構成そのものであり,公知発明を実施するに際して,設計上当然に適当な数値を与えなければならないような構成ではないと主張する。
 しかし,生産能力がゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置の効果であるとするならば,本件発明において,この構成Fは達成すべき結果による物の発明の特定である。そして,このような結果を得るためには,本件発明が特定する「胴部サイズが少なくとも85mm角~95mm角の範囲内の1サイズの紙容器に対して処理可能なゲーベルトップ型紙容器の充填シール装置において,前記搬送装置の搬送ピッチを115~105mm」とするのみならず,間欠搬送の移動/停止の分割割合や,加減速度の特性等も関係するところ,これらについて様々な態様があることは明らかである。
 一方,公用発明2は,搬送ピッチを127mm としているが,それのみならず,間欠搬送の移動/停止の分割割合,加減速度の特性等について特定の態様とすることで,3000本/hの生産能力を実現したゲーベルトップ型紙容器であると考えられる。

 そうすると,本件特許の出願時において,3000本/hの生産能力を得るために間欠搬送の移動/停止の分割割合,加減速度の特性等について特定の態様とすることは当業者が通常行っていた事項であるということができ,さらに3000本/hの生産能力を3000本/h+300本/h(ただし,3000本/hを除く。)の生産能力とすることにより,物の発明として特定される事項に格別の相違があるとはいえないから,公用発明1において3000本/h+300本/h(ただし,3000本/hを除く。)の生産能力を得るために,加減速度等,必要な特定の事項を得ることは,当業者が容易になし得たことであるというべきである。(なお,3000本/hの生産能力を得るための態様が本件の訂正明細書(特に段落【0011】~【0015】)に記載されたものに限定されるのであれば,達成すべき結果による特定ではなく,当該結果を得るための手段を特許請求の範囲で特定すべきであり,特許法36条6項2号(発明の明確性の要件)違反になる可能性がある。)

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