知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

同一の技術分野の置換可能な技術的手段、「程度の差」と阻害要因

2012-10-28 19:19:35 | 特許法29条2項
事件番号 平成24(行ケ)10023
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子,齋藤巌
特許法29条2項 動機付け、阻害要因

 そして,引用発明と引用例2に記載された発明は,いずれも,本件発明と技術分野が同一又は相互に関連する発明であるから,その一の発明に置換可能な技術手段があるときは,他の発明に当該技術手段を適用しようと試みることは,当業者の通常の創作能力の発揮ということができ,前記のとおり,引用発明において,切断片の取り出し除去作業を容易にする等の目的で,カッターとして引用例2に記載された回転円弧状又は球面状のカッターを採用することは,当業者が容易に想到し得ることである。

原告は,引用例1は,復旧面積内に埋め込む材料を少なくすることが,その技術的思想の1つとされているから,円筒状の切り込みを与える円形カッターを用いる場合よりも復旧面積がより広くなる引用例2記載の回転円弧状のカッターを採用することは,むしろ阻害要因があるというべきである旨を主張する。
 しかしながら,引用発明は,復旧面積を極限まで狭くすることによって達成されているものではないし,引用発明における円形カッターに代えて,引用例2に記載された回転円弧状又は球面状カッターを使用したときに,その復旧面積が当然に広くなるというものではなく,仮に広がるとしても程度の差にすぎないと解される。当業者は,使用するカッターの性質や作業性等を適宜勘案し,その現場の要請に則して妥当な復旧面積を決定し,マンホール蓋枠取替え工法を実施するものであるところ,復旧面積の広狭は,その現場に合ったマンホール蓋枠取替え工法を実施しようとすれば,その現場ごとに,一定程度,変動するものであるから,復旧面積が仮に広がるとしても,その一事をもって,引用発明に引用例2に記載されたカッターを採用することに,阻害要因があるとまでは認められない

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