知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

民法416条の類推適用を受ける「通常生ずべき損害」

2013-03-10 21:01:04 | 特許法その他
事件番号 平成22(ワ)44473
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成25年01月24日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 志賀勝,小川卓逸

 本件JVは,被告方法を使用するに当たり,少なくとも,本件特許権があることを認識することができたにもかかわらず,これを認識することなく,被告方法を使用して本件特許権を侵害したことを推認することができるから,本件JVには,本件特許権の侵害について,過失があったものと認められる。そして,被告は,建築,土木工事等を業とする株式会社であるとともに(弁論の全趣旨),本件JVの構成員であるから,商法511条1項により,被告JVが本件特許権の侵害によって負う不法行為に基づく損害賠償債務につき,連帯債務を負うというべきである(最高裁平成6年(オ)第2137号同10年4月14日第三小法廷判決民集52巻3号813頁参照)。
 ・・・
 これらの事実を総合すれば,本件JVが本件特許権を侵害せずに本件各工事を工期内に完成させるには,技研施工に対して鋼管杭の打込みに係る下請工事を発注するしかなかったものと認められるから,原告技研は,本件JVの不法行為がなければ,技研施工が本件JVから鋼管杭の打込みに係る下請工事を受注し,粗利から変動経費を控除した限界利益の額に相当する技研施工の株式価値の上昇益のうち,本件特許権の共有持分の割合に相当する利益を得ることができたが,本件JVの不法行為により,上記利益を得ることができなかったものである。

 原告技研は,本件各工事全体の限界利益の額に相当する技研施工の株式価値の上昇益の全部が原告技研の逸失利益であると主張する。
・・・
 これらによると,本件発明の作用効果を発揮するのは,構成要件A,D及びEの部分であり,本件特許権の価値も当該部分にあるといえるから,当該部分に対応する鋼管杭の打込工事の限界利益の額に相当する技研施工の株式価値の上昇益のみが民法416条の類推適用を受ける「通常生ずべき損害」に当たるというべきである。また,本件特許権は,原告らの共有に係るから,原告技研は,自己の持分に応じてのみ損害賠償請求権を行使することができるものである(最高裁昭和39年(オ)第1179号同41年3月3日第一小法廷判決・裁判集民事82号639頁参照)。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

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