知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

周知技術を適用する動機付けを否定した事例

2009-10-04 18:56:34 | 特許法29条2項
事件番号 平成20(行ケ)10431
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年09月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

 このように,引用刊行物に記載された技術的事項は,2次コイルとして,環状コイルを用いることを前提としたものであって,引用刊行物には,相互インダクタンス電流トランスジューサーの2次コイルを環状コイル以外のものとする可能性を示唆する記載はない。引用発明は,電流感知トランスジューサーの従来技術を前提としながら,環状コイルにおけるシンメトリー構造の実現という課題を,環状コイルを多重層構造とすることによって解決しようとしたものである

 引用発明と本願発明は,課題解決の前提が異なるから,引用発明の解決課題からは,コイルを多層基板上に形成するための動機付けは生じないものといえる。

 なお,引用刊行物には,相互インダクタンス電流トランスジューサーを小型化するという課題も記載されているが,環状コイルを前提としたものであって,本願発明における小型化とは,その解決課題において共通するものではない。

 以上のとおり,引用発明には,環状コイルに代えて,多層基板上に形成されたプリントコイルによりトランスを構成する前記周知技術を適用する解決課題や動機は存在しないというべきであり,したがって,当業者が本願発明の相違点2に係る構成を想到することが容易であったとはいえない。

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