知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

引用例の別の実施例の参照(反論の機会)

2006-03-26 20:23:07 | 特許法29条2項
平成14年(行ケ)第109号 特許取消決定取消請求事件
特許法29条2項

<注目点>
 取り消し理由通知で、引例1の図7に示される実施例から、引用発明1を認定した場合に、異議決定において、引用発明1を評価する際に、他の図面に示される他の実施例を参照することは許されるか。

<判示>
 取消理由通知の内容と比べると,(異議決定は)引用発明2を周知技術の一つとして例示するにとどめたこと,及び,引用発明1の解釈に当たって,刊行物1の第8図に記載された実施例を参酌したこと,の2点において変更されている,ということができる。

 第2の点については,引用発明1に引用発明2に例示される周知技術を適用することについて,これを困難にする事情があるかどうか,すなわち,引用発明1が,拘束部材が埋設された中空円筒形のゴム体を弾性支持体の孔の内周に加硫接着することとは相いれない内容の発明であるかどうかとの問題である。

 したがって,この点は,引用発明1の技術内容に関するものであるから,刊行物1に記載された発明である引用発明1の技術内容の判断に当たって,刊行物1の記載全体を参酌することができることは当然であり,刊行物1に記載された他の実施例である,第1図ないし第6図の各実施例及び第8図の実施例とその余の記載を参酌した上で,この点を判断することは,何ら問題はないところである。

 取消理由通知において,刊行物1を引用し,その第7図に記載された発明を引用発明1として明示している以上,決定が,刊行物1のその余の実施例についての記載も参酌して,引用発明1の内容を認定することは,特許権者に意見陳述の機会を保障した特許法の前記規定の趣旨に何ら反するものではないというべきである。

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