知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

周知技術付加する補正の際の反論の機会

2006-03-22 06:15:55 | 特許法29条2項
◆H13. 1.15 東京高裁 平成12(行ケ)2 特許権 行政訴訟事件
特許法29条2項

<概要>
 特許出願に基づく国内優先権を主張して、同年11月20日、特許出願をした(特願平2-314805号)が、平成10年7月31日に拒絶査定を受けたので、同年9月24日、これに対する不服の審判の請求をした。特許庁は、同請求を平成10年審判第15083号として審理した上、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は原告に送達された。
 手続補正書により補正された明細書(以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)の要旨は、補正されていた。

<注目点>
 原告は、拒絶査定に対する不服の審判段階において本件補正が行われたにもかかわらず、拒絶理由通知をすることなく審判請求不成立の審決を行ったのは、特許法159条2項において準用する同法50条の規定又は同法1条の趣旨に違反したものである旨主張するので、まず、同法159条2項に規定する「審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に該当するかどうか判断する。
 審決の理由は、本願発明と引用例記載の発明とを対比し、両者の相違点として「ヘッドガイド部の溝幅」のみを挙げ、当該相違点は設計的事項である旨判断して、本願発明は、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとしたものである。
 他方、本件出願に対する拒絶査定の理由は、引用例には「本願請求項1に係る発明と同様に、カセットハーフの小開口部に挿入されてテープの走行を規制するテープガイド部が、ヘッド取付け台に一体形成されている」との拒絶理由通知書の記載を引用するとともに、「テープガイドの溝幅を磁気テープの幅とほぼ同じ値に設定する点」については周知技術である旨付記して、結論として、本願発明は同法29条2項の規定により特許をすることができないとしたものである。
   そうすると、本件において、審決における審判請求不成立の理由及び拒絶査定の理由は、結局、ともに、本願発明が引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとの同一の理由に基づいて特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとするものであるから、同法159条2項に規定する「審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に該当しないことは明らかであって、同項において準用する同法50条の規定に基づく拒絶理由通知が必要となるものではないから、上記規定を根拠として手続上の違法をいう原告の主張は理由がない。

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