知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特定の実施例の作用効果と発明の構成に基づく効果

2012-05-27 17:31:10 | 特許法29条2項
事件番号 平成23(行ケ)10199
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月16日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

 以上によれば,本件明細書に記載された本件発明の実施例(本件実施例)が達成した8%というEL効率は,発光層のホスト材料としてCBPを採用し,かつ,BCPからなる励起子阻止層を採用した場合に限って得られるものであって,発光層に「芳香族配位子を有するリン光性有機金属イリジウム錯体」を採用したことによって当然に得られるものとは認められず,したがって,当該イリジウム錯体に含まれるfac-Ir(thpy)3を発光層に採用したとしても,そのことによって上記の8%というEL効率が達成されるものとは認められない。

 以上のとおり,本件発明のうち,特定の実施例(本件実施例)が顕著な作用効果(8%というEL効率)を示しているとしても,当該作用効果は,本件発明の構成に基づいて得られたものとは認められないから,本件明細書は,それ自体,本件発明がその構成によって顕著な作用効果を有していることや,ましてfac-Ir(thpy)3を発光層に採用した場合に顕著な作用効果を発揮することを明らかにしているとはいい難い
 ・・・
 よって,本件発明の容易想到性の評価に当たって,本件実施例の有する作用効果を参酌することはできないというほかない。

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