知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許出願の請求項の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定することの適法性

2012-05-27 18:02:05 | 特許法その他
事件番号 平成23(行ケ)10296
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月23日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平

 原告は,審決は請求項1の発明の進歩性についてのみ判断し,請求項2ないし4の発明の進歩性について判断しておらず,不当,違法であると主張する。

 しかしながら,特許法は,一つの特許出願に対し,一つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ,これに基づいて一つの特許が付与され,一つの特許権が発生するという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。このような構造に基づき,複数の請求項に係る特許出願であっても,特許出願の分割をしない限り,当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく,一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし,他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは予定されていない。このことは,特許法49条,51条の文言や,特許出願分割制度の存在自体に照らしても明らかである(最高裁平成20年7月10日第一小法廷判決民集62巻7号1905頁参照)。
 なお,拒絶査定を受けた出願人が不服審判請求をするために請求項の数に応じた手数料を納付しなければならないのは,審判においてすべての請求項につき審理・判断の可能性があることに対応するものであって,出願拒絶についての可分的な取扱いと結び付くものではない

 したがって,審決が請求項2ないし4の発明の進歩性について判断をしなかったとしても違法ではなく,原告が主張する取消事由3は理由がない。

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