事件番号 平成21(行ケ)10055
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年12月21日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明
第5 当裁判所の判断
1 はじめに
商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」については,当該商標の構成に,非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字,図形等を含む商標が,これに該当することは明らかである。
また,当該商標の構成に,そのような文字,図形等を含まない場合であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,
① 法律によって禁止されていたり,
② 社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反していたり,
③ 特定の国若しくはその国民を侮辱したり,国際信義に反することになるなど特段の事情が存在するときには,当該商標は同法4条1項7号に該当すると解すべき余地がある。
ただし,
① 商標法は,同法4条1項7号の外に,同項各号の規定によって,公益との調整,既存の商標権者や既に同一又は類似の商標を使用している者との利益調整など,さまざまな政策的な観点から,登録されるべきでない商標を具体的かつ網羅的に列挙していること,
② 公の秩序又は善良の風俗を害するか否かの判断は,社会通念によって変化し,客観的に確定することが困難であること
等に照らすならば,当該商標の構成それ自体ではなく,当該商標を使用することが,いわゆる公序良俗に反するとして同法4条1項7号に該当するとされる場合は,自ずから限定して解釈されるべきものといえよう。
特に,商標法4条1項15号,19号等の各規定が置かれている趣旨に照らすと,単に,他人の業務に係る商品や役務と混同を生ずるおそれがある場合,他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするもののような場合は,それぞれ同法4条1項15号,19号等に規定された各要件を充足するか否かによって,同法4条1項所定の不登録事由の成否を検討すべきであって,そのような事実関係が存在することをもって当然に同法4条1項7号の不登録事由に該当すると解するのは妥当とはいえない。
なお,同法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するか否かの判断は,登録査定時(拒絶査定不服審判の審決時)を基準とすべきである。
上記の観点を前提として,本件商標の同法4条1項7号該当性について,検討する。
2 「テディベア」の語の意味及び逸話を理由とする本件商標の商標法4条1項7号該当性について
原告は,「テディベア」の語及びセオドア・ルーズベルトに関連する逸話は,本件商標の登録査定時(昭和61年11月28日)において,我が国で周知であったから,本件商標登は,商標法4条1項7号に該当すると主張する。
しかし,以下の証拠(当審において提出された証拠を含む。)によっても,本件商標の登録査定時に,我が国において,「テディベア」の語及びセオドア・ルーズベルトに関連する逸話が一般に広く知られていたと認めることはできないから,原告の本件商標登録が,商標法4条1項7号に該当するとの原告の主張は,主張の前提を欠き,採用できない。
平成21年12月21日 平成21(行ケ)10057 飯村敏明裁判長 も同趣旨
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年12月21日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明
第5 当裁判所の判断
1 はじめに
商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」については,当該商標の構成に,非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字,図形等を含む商標が,これに該当することは明らかである。
また,当該商標の構成に,そのような文字,図形等を含まない場合であっても,当該商標を指定商品又は指定役務について使用することが,
① 法律によって禁止されていたり,
② 社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳的観念に反していたり,
③ 特定の国若しくはその国民を侮辱したり,国際信義に反することになるなど特段の事情が存在するときには,当該商標は同法4条1項7号に該当すると解すべき余地がある。
ただし,
① 商標法は,同法4条1項7号の外に,同項各号の規定によって,公益との調整,既存の商標権者や既に同一又は類似の商標を使用している者との利益調整など,さまざまな政策的な観点から,登録されるべきでない商標を具体的かつ網羅的に列挙していること,
② 公の秩序又は善良の風俗を害するか否かの判断は,社会通念によって変化し,客観的に確定することが困難であること
等に照らすならば,当該商標の構成それ自体ではなく,当該商標を使用することが,いわゆる公序良俗に反するとして同法4条1項7号に該当するとされる場合は,自ずから限定して解釈されるべきものといえよう。
特に,商標法4条1項15号,19号等の各規定が置かれている趣旨に照らすと,単に,他人の業務に係る商品や役務と混同を生ずるおそれがある場合,他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするもののような場合は,それぞれ同法4条1項15号,19号等に規定された各要件を充足するか否かによって,同法4条1項所定の不登録事由の成否を検討すべきであって,そのような事実関係が存在することをもって当然に同法4条1項7号の不登録事由に該当すると解するのは妥当とはいえない。
なお,同法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するか否かの判断は,登録査定時(拒絶査定不服審判の審決時)を基準とすべきである。
上記の観点を前提として,本件商標の同法4条1項7号該当性について,検討する。
2 「テディベア」の語の意味及び逸話を理由とする本件商標の商標法4条1項7号該当性について
原告は,「テディベア」の語及びセオドア・ルーズベルトに関連する逸話は,本件商標の登録査定時(昭和61年11月28日)において,我が国で周知であったから,本件商標登は,商標法4条1項7号に該当すると主張する。
しかし,以下の証拠(当審において提出された証拠を含む。)によっても,本件商標の登録査定時に,我が国において,「テディベア」の語及びセオドア・ルーズベルトに関連する逸話が一般に広く知られていたと認めることはできないから,原告の本件商標登録が,商標法4条1項7号に該当するとの原告の主張は,主張の前提を欠き,採用できない。
平成21年12月21日 平成21(行ケ)10057 飯村敏明裁判長 も同趣旨