知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

相違点に副引用例を適用する理由が十分に検討されていない場合

2007-03-09 00:57:36 | 特許法29条2項
裁判年月日 平成19年02月27日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塚原朋一

『6 取消事由5(審決判断2における相違点1についての判断の誤り)について原告は,引用発明2における「一時的なパスワードとユーザID」をバーコードに置き換えるようなこと(正確には,上記のとおり,「『一時的なパスワードとユーザID』を『バーコードと発信者番号』に置き換えること」であり,対応関係を考慮すれば,「『一時的なパスワード』を『バーコード』に置き換えること」である。)を,当業者が行うとは考え難い旨主張する。

 しかるところ,甲第1号証には,審決が認定するとおり,「・・・」(段落【0113】)との記載があり,この記載によれば,認証用コード(ユーザーコード情報)には,様々な種類があり,かつ,その種類によって入力手段(入力装置)も異なることが認められる。そうすると,当業者がどのような認証用コードを選択するかについては,認証用コードを用いる目的や,それぞれの認証用コードを用いた場合の利害得失,認証用コードを入力する状況(入力者が,認証要求者側であるか,被認証者であるか,入力場所が認証要求者の支配領域であるか,被認証者の支配領域であるか,認証要求者と被認証者が対面しているか否か等)などを考慮して決定されるものであることは明らかであって,これらの点を度外視して,特定の認証用コードが,周知又は公知であるからといって,それを適用することが直ちに容易であるとすることはできない。』

『 甲第3号証には,・・・ との各記載があり,これらの記載によれば,引用発明2は,ネットワークサービスに関する利用者の認証システムであり,認証用コードである「一時的なパスワード」は,例えば「VWXYZ」のような文字メッセージであって,利用者(被認証者)により,利用者のパーソナルコンピュータに入力されるものであることが認められ,また,認証用コードを使用する場所は,利用者の自宅等,被認証者の支配領域内であり,被認証者と認証要求者(ネットワーク資源の提供者)とは対面しておらず,認証用コードは,利用者のパーソナルコンピュータのキーボードという,通常,パーソナルコンピュータに付属し,かつ,汎用性の高い入力機器によって入力されることが示唆されているということができる。

 そうすると,上記甲第2号証の場合において,認証用コードとしてバーコードを利用することを合理的とした事情,とりわけ,店舗内という他の来店客等の目を考えなければならない状況,認証要求者側の者と被認証者が,認証要求者の支配領域内で対面し,認証コードの入力を認証要求者側が,認証要求者の装置で行い得るという不正に対処する上での利点,バーコード読取り装置の汎用性のないという欠点を,多数の来店客について使用することによって補い得ること等は,引用発明2においては存在し得ない条件となるから,これらの点について何ら考慮することなく,甲第2号証に,携帯電話を認証に用いる際,認証用コードとしてバーコードを表示するものが示されているとの理由により,引用発明2に,認証用コードとしてバーコードを適用することが,当業者に容易になし得ることとするのは誤りである。 』

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