知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

特許発明の記載要件の判断例

2007-03-08 06:42:40 | 特許法36条6項
事件番号 平成15(ワ)16924
事件名 損害賠償等請求事件
裁判年月日 平成19年02月27日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 設樂隆一


『10 本件明細書の発明の詳細な説明の記載が改正前特許法36条4項及び5項2号の規定する要件を満たしているか(争点9)。
 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は,本件訂正後の請求項1の記載と比べ,本件各特許発明の特徴的部分である,搬送部の伸縮のための制御についての記載がないことから,「発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項」とはいえず,改正前特許法36条5項2号に違反にしているとみることも可能であるとしても,その無効理由は本件訂正により解消されているものというべきである。また,被告が主張する改正前特許法36条違反の無効理由がいずれも理由がないことは,次に述べるとおりである。

(1) 共通駆動部の左右のアームを単一部材で構成する旨の記載の欠如と改正前特許法36条4項及び5項2号違反について
 前記5(2)ウb)認定のとおり,本件各特許発明の特許請求の範囲の請求項1及び6の記載及び本件明細書から,本件各特許発明の共通駆動部は,回動中心の左右のアーム全体が一体的に回動される部材であると解される。
 そして,本件明細書の実施例において開示されている「共通駆動部」は,いずれも回動中心の左右のアームが単一の部材であり,全体が一体的に回動される部材であるから,本件明細書について改正前特許法36条4項の規定違反がないことは明らかである。
 また,本件明細書の請求項1及び6においては,「共通駆動部」について,左右のアームが一体的に回動されるとの記載はないものの,「共通駆動部」の技術的意義が一義的に明らかではないことから,その発明の詳細な説明を参酌してこれを解すべきことは前記のとおりであり,その「共通駆動部」の技術的意義として,左右のアームが一体的に回動制御される部材であると解すべきことも前記のとおりである。したがって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1及び6における「共通駆動部」についての記載が,被告主張の理由により,改正前特許法36条5項2号に違反するものとまでいうことはできない。

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