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知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

同一の引用例からの進歩性を肯定した場合の平成23年改正前の特許法181条2項の判断

2012-12-09 23:34:03 | 特許法その他
事件番号 平成24(行ケ)10119
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年11月29日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 西理香,知野明
平成23年改正前の特許法181条2項

第3 当裁判所の判断
上記のとおり,本件審決は,無効審判請求を成り立たないものとした審決である。その後,被告から特許請求の範囲を減縮する訂正審判請求がなされたが,当裁判所は,平成23年改正前の特許法181条2項の差戻決定をすることなく審理を継続していたところ,本件訂正審決が確定したことにより,訂正前の特許請求の範囲に基づいてなされた審決は,結果的に発明の要旨認定を誤ったこととなった

 もっとも,特許庁は,本件訂正審決において,本件審決において第1訂正発明と対比された引用例と同一の引用例との対比において独立特許要件が認められると判断している。そうすると,第2訂正発明と上記引用例記載の発明との同一性ないし容易想到性判断についての特許庁の判断は,本件訂正審決により示されており,この点につき特許庁の判断が先行しているものと解する余地がある

 しかし,本件審決と本件訂正審決においては,本件特許に係る発明と引用例との一致点及び相違点の認定,新規性ないし進歩性に係る判断の対象が実質的にも変更されている(別紙1ないし4参照)。
 すなわち,本件審決においては,第1訂正発明における「前記目標値が変化したときに」の意義について,・・・「前回の目標値」と「今回の目標値」を比較し,変化したときと理解できるとして,・・・これを相違点として挙げて,第1訂正発明は,引用発明1と同一の発明ではなく,引用発明2,及び引用例1,甲3ないし5に記載された周知技術に基づき容易に想到できたものとはいえないとして,無効請求は成り立たないとしたものである。
 他方,本件訂正審決では,第2訂正発明において,「今回の目標値」と比較される「比較対象」は,・・・「前回の出力値」であるとして,この点を引用例1,2との相違点とはせず,新たに付加された構成要件について相違点を挙げて,第2訂正発明は,引用発明1と同一の発明ではなく,引用発明1ないし2に基づき容易に想到できたものでもなく,独立特許要件を充足するとして,第2訂正を認めたものである。

 そうすると,本件訂正審決において,本件審決における引用例と同一の引用例との対比において独立特許要件が認められるとの判断がされているとしても,本件無効審判請求について,新たに付加された構成要件も含めて,再度,特許庁の審理を先行させるのが相当であるから,本件審決は取り消されるべきである

特許法101条2号の「日本国内において広く一般に流通しているもの」の適用事例

2012-11-11 22:26:11 | 特許法その他
事件番号 平成23(ワ)6980
事件名 特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成24年11月01日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康,西田昌吾
特許法101条2号

(2) 特許法101条2号
 ・・・
ウ 一方,被告は,ハ号スタイラスにつき,間接侵害(特許法101条2号)の除外要件である「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たる旨主張する。

 確かに,ハ号スタイラスの用途は,これを備え付けた場合に本件特許発明の技術的範囲に属することになるイ号検出器及びロ号検出器に限定されているわけではなく,本件特許発明の技術的範囲に属さない内部接点方式の位置検出器とも適合性を有するものではある(甲2~4)。

 しかし,結局のところその用途は,位置検出器にその接触体として装着することに限定されており,この点,ねじや釘などの幅広い用途を持つ製品とは大きく異なる。また,そのような用途の限定があるため,実際にハ号スタイラスを購入するのは,位置検出器を使用している者に限られると考えられる。
 このような事情を踏まえると,ハ号スタイラスは,市場で一般に入手可能な製品であるという意味では,「一般に流通している」物とはいえようが,「広く」流通しているとは言い難い。また,そもそもこのような除外要件が設けられている趣旨は,「広く一般に流通しているもの」の生産,譲渡等を間接侵害に当たるとすることが一般における取引の安全を害するためと解されるが,上記のように用途及び需要者が限定されるハ号スタイラスにつき,取引の安全を理由に間接侵害の対象から除外する必要性にも欠けるといえる。

 したがって,ハ号スタイラスは「日本国内において広く一般に流通しているもの」に当たらず,この点に関する被告の主張は採用できない。

(3) 小括
以上によると,被告によるハ号スタイラスの製造,販売は,本件特許発明との関係において,平成22年12月6日以降,特許法101条2号の規定する間接侵害の要件を満たすものといえる。

間接侵害の成立を認めた事例

2012-11-11 19:35:25 | 特許法その他
事件番号 平成23(ワ)24355
裁判年月日 平成24年10月30日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 上田史,石神有吾
特許法101条2号

(2) 以上のとおり,被告製品1又は被告製品2を装着した原告製プリンタは,本件訂正発明2の技術的範囲に属するところ,被告各製品は,物の発明である本件訂正発明2の「その物の生産に用いる物」であって,共通バス接続方式を採用しつつも,インクタンクの搭載位置間違いを検出するという本件訂正発明2による「課題の解決に不可欠なもの」に該当するといえるから,被告による被告各製品の輸入及び販売について,特許法101条2号の間接侵害が成立するというべきである。

禁反言の法理の適用を否定した事例-最も重要な相違点と付随的な相違点

2012-11-11 19:32:42 | 特許法その他
事件番号 平成23(ワ)24355
裁判年月日 平成24年10月30日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 上田史,石神有吾

 ・・・原告は,本件前訴において,「本件特許発明の構成が備える最も重要な機能」は,「各インクタンクを所定の位置(例えば受光手段の正面位置)で発光させることにより,インクタンクが正しい位置に搭載され,かつ正しく機能していることを確認できること」,すなわち,「光照合処理」(前記(ウ)b)を採用した点にあり,この点が,設定登録時の請求項1及び5に係る各発明あるいは本件各訂正発明と被告主張の引用文献記載の発明との最も重要な相違点であると主張していたものと認められ,「ユーザーへの報知も発光部によって実現する機能」は,「多様な利用価値」の一つとして付随的な相違点として主張していたにすぎないものとうかがわれる。

 したがって,被告が指摘する「原告第1主張書面」ないし「原告第5準備書面」の記載箇所をもって,原告が,本件前訴において,本件訂正後の請求項1及び3の「光」の用語を可視光に限定して解釈すべきことを明示していたということはできないし,また,このような限定解釈を前提に被告が本件前訴で主張した本件特許の無効理由を回避しようとしたということもできない

 以上によれば,原告が本訴において本件訂正後の請求項1の「光」に赤外線も含まれると主張することは禁反言の法理に照らし許されないとの被告の上記主張は,理由がない。

主引用例の変更と防御権の担保

2012-11-03 11:32:09 | 特許法その他
事件番号 平成24(行ケ)10056
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年10月17日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 部眞規子、齋藤巌
特許法159条2項で準用する特許法50条

(4) 主引用例の差替えについて
ア 一般に,本願発明と対比する対象である主引用例が異なれば,一致点及び相違点の認定が異なることになり,これに基づいて行われる容易想到性の判断の内容も異なることになる。したがって,拒絶査定と異なる主引用例を引用して判断しようとするときは,主引用例を変更したとしても出願人の防御権を奪うものとはいえない特段の事情がない限り,原則として,法159条2項にいう「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に当たるものとして法50条が準用されるものと解される。

イ 前記(2)ウ,(3)ウのとおり,本件においては,引用例1又は2のいずれを主引用例とするかによって,本願発明との一致点又は相違点の認定に差異が生じる。
 拒絶査定の備考には,・・・と記載されていることから(甲17),審判合議体も,主引用例を引用例2から引用例1に差し替えた場合に,上記認定の差異が生じることは当然認識していたはずである。

ウ ・・・
 そうすると,引用発明1又は2のいずれを主引用例とするかによって,引用発明2の上記解決課題を考慮する必要性が生じるか否かという点において,容易想到性の判断過程にも実質的な差異が生じることになる。

エ 本件において,新たに主引用例として用いた引用例1は,既に拒絶査定において周知技術として例示されてはいたが,原告は,いずれの機会においても引用例2との対比判断に対する意見を中心にして検討していることは明らかであり(甲1,16,20),引用例1についての意見は付随的なものにすぎないものと認められる。
 そして,主引用例に記載された発明と周知技術の組合せを検討する場合に,周知例として挙げられた文献記載の発明と本願発明との相違点を検討することはあり得るものの,引用例1を主引用例としたときの相違点の検討と同視することはできない。
 また,本件において,引用例1を主引用例とすることは,審査手続において既に通知した拒絶理由の内容から容易に予測されるものとはいえない。
 なお,原告にとっては,引用発明2よりも不利な引用発明1を本件審決において新たに主引用例とされたことになり,それに対する意見書提出の機会が存在しない以上,出願人の防御権が担保されているとはいい難い

 よって,拒絶査定において周知の技術事項の例示として引用例1が示されていたとしても,「査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合」に当たるといわざるを得ず,出願人の防御権を奪うものとはいえない特段の事情が存在するとはいえない。

特許請求の範囲の用語の明細書中の定義

2012-10-29 01:25:50 | 特許法その他
事件番号 平成24(ネ)10018
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年10月11日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子

 しかしながら,特許請求の範囲は,特許法施行規則24条の4により様式第29の2により作成しなければならないとされ,様式第29の2において,「用語はその有する普通の意味で使用し,かつ,明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用する。ただし,特定の意味で使用しようとする場合において,その意味を定義して使用するときは,この限りでない。」(備考9)とされているから,請求項に記載された用語(発明特定事項)の意味内容が明細書及び図面において定義又は説明されている場合は,その用語を解釈するに当たってその定義又は説明によることとなる。そして,本件明細書2には,「本明細書において,「上半身部品」とは,腰より上の部分をいい,「下半身部品」とは腰から下の部分(腰部含む)をいうものとする」(【0001】)と記載され,「上半身部品」と「下半身部品」が定義されているから,本件発明2の「上半身部品」及び「下半身部品」の意味は,上記定義によることになる。控訴人の上記主張は,本件明細書2に定義された用語の意味に反するものであり採用することができない。

イ 控訴人は,被控訴人自身が,その広告等(甲48~54)において,「胸部骨格から上の部分に相当する部分(外皮)を「上半身パ-ツ」,腹部骨格から下の部分に相当する部分(外皮)を「下半身パ-ツ」と称していながら,本件訴訟において限定的に解釈すべきであると主張することは,いわゆる禁反言の法理に反し許されないとも主張する。
 被控訴人の上記広告等において,胸部骨格から上の部分に相当する部分(外皮)を「上半身パーツ」,腹部骨格から下の部分に相当する部分(外皮)を「下半身パーツ」と称していることが証拠上認められるが,そうであるからといって,上記アの説示に照らして,本件明細書2を解釈する際に,同広告等における用語の使用例に従わなければならない理由はない。被控訴人の主張が禁反言の法理に反するものということはできず,控訴人の上記主張も理由がない

特許発明の寄与率を10%とした事例

2012-10-28 20:04:49 | 特許法その他
事件番号 平成23(ワ)3850
事件名 特許権侵害差止等請求事件
裁判年月日 平成24年10月11日
裁判所名 大阪地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康,西田昌吾
特許法102条1項

以下の事情からすれば,本件特許発明の寄与率は,10%とするのが相当である。
(1)本件特許発明の有用性
ア 本件特許発明の技術的意義
・・・
そして,前述したところによれば,本件特許発明の本質的特徴は,このような用途を要する補強リブにより突条を保護し,ピンホールの発生を防止したところにあることが認められる。

イ 代替技術の存否
・・・
そうすると,乙10発明は,本件特許発明と同様の課題を解決するための発明であるとはいえるものの,その実施状況や効果について認めるに足りる証拠もないから,本件特許発明を代替するものといえるかは不明である。

ウ 本件特許発明の作用効果
 証拠によれば,原告が原告製品の製造販売を開始した平成8年より前の平成7年度におけるクレーム総数●●●件のうち折り溝部からの漏れは●●件であったこと(甲26),これに対し,平成11年度における折り溝部からの漏れに関するクレームは●件であり,クレーム総数に占める割合は●●●●%であったこと(甲27の2)が認められる。これらのことからすれば,本件特許発明は,ピンホールの発生を防止するという課題解決において,相応の効果を奏するものであることが認められる。
 もっとも,原告製品及び被告製品の1年当たりの販売数量と対比すると,上記クレーム件数は,総数としてみても極めて数が少ないものである。

(2) 原告による宣伝広告
 証拠(甲23の1ないし25の2)によれば,原告は,原告製品の販売広告において,折り畳み自在であること,軽量であること,その他容器の信頼性を高める工夫がされていることなどとともに,本件特許発明によるピンホールリスクの低減効果についても相当の割合を割いていることが認められる。
 また,軟質プラスチック折り畳み容器自体は,比較的単純な構造のものであり,原告も約42年間にわたり製造販売を継続してきたこと(甲28)などからすれば,相当に成熟した技術分野であること,そうした状況において他の競合製品と差別化するために,本件特許発明が相応の価値を有することは認められる。
 他方において,上記原告の宣伝広告の内容から明らかなとおり,原告製品又は被告製品の購入に当たっては,ピンホールリスク以外の様々な要因についても考慮されることが認められるし,原告の宣伝広告においても,本件特許発明によるピンホールリスクの低減効果については「細部機能改良」の項に記載されていること及び前記(1)ウで検討したところからすれば,本件特許発明の販売における寄与について,過大に評価することはできないものというべきである。

(3)被告による宣伝広告
 証拠(甲3)によれば,被告が,「20リットル改良品(20A)のご提案について」と題する書面を顧客らに送付したこと,同書面は,被告現行品から本件特許発明に関する構成を備えた被告製品に改良したことを報告し,購入を促す内容のものであることが認められる。
 このことからすれば,被告製品についても本件特許発明の実施による販売への寄与があったものと推認される。
 前記(3)のとおり,原告製品又は被告製品の購入に当たっては,ピンホールリスク以外の様々な要因についても考慮されるものであるとしても,被告製品における本件特許発明の販売における寄与率についても,原告製品における寄与率と同等のものと解するのが相当である。

受験対策本の著作物性、作品の一部についての著作物性の主張

2012-10-21 22:15:50 | 特許法その他
事件番号 平成23(ワ)14347
事件名 著作権侵害停止等請求事件
裁判年月日 平成24年09月28日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大 須 賀 滋、裁判官 小川雅敏,森川さつき

イ 前記(1)ア(ア)ないし(ウ)のとおり,原告書籍は,司法書士試験合格を目指す初学者向けのいわゆる受験対策本であり,同試験のために必要な範囲で民法の基本的概念を説明するものであるから,民法の該当条文の内容や趣旨,同条文の判例又は学説によって当然に導かれる一般的解釈等を簡潔に整理して記述することが,その性質上不可避であるというべきであり,その記載内容,表現ぶり,記述の順序等の点において,上記のとおり民法の該当条文の内容等を簡潔に整理した記述という範囲にとどまらない,作成者の独自の個性の表れとみることができるような特徴的な点がない限り,創作性がないものとして著作物性が否定されるものと解される。
・・・

(ウ) これに加えて,原告は,太字,アンダーライン,付点等による強調,枠囲み,矢印の使用,余白の取り方,イラストの使用等に表現上の特徴があるとも主張する。
・・・
そもそも,ある作品等の一部につき,複製等がされたとして著作権侵害を主張する場合においては,当該作品等の全体が上記の意味における著作物に該当するのみでは足りず,侵害を主張する部分自体が思想又は感情を表現したものに当たり,かつ,当該部分のみから,作成者の個性が表現として感得できるものであることを要するものと解するべきであるから,原告書籍においても,その全体が著作物に該当するのみでは足りず,侵害を主張する部分(原告書籍マーカー部分)について,著作物に該当することを主張すべきものと解される。
・・・

均等論第2要件の判断事例

2012-10-17 22:28:12 | 特許法その他
事件番号 平成24(ネ)10035
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年09月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人、齋藤巌

イ 第2要件
 前記のとおり,本件発明1は,従来方法では,各視線上に位置するボクセル毎の色度及び不透明度を互いに積算する演算過程の高速化を図るために,一部のボクセルに関するデータを間引いて演算を行っていたため,可視化した画像において,生体組織間の微妙な色感や不透明感を表現することができなかったことに鑑みて発明されたものである。本件発明1は,・・・「全ての前記平面座標点毎の色度および不透明度を該視線毎に互いに積算する」ことにより,・・・,生体組織間の微妙な色感や不透明感を表現しつつ,相異なる生体組織を明確に区別することが可能な可視画像を生成し得る医療用可視画像の生成方法を提供することを目的とするものである。

 これに対し,被告方法においては,・・・積算処理は・・・閾値に達した時点で打ち切られるため,生体組織間の微妙な色感や不透明感を表現する観点からは,画質に対して悪い影響を与えるものである。被告方法による可視画像の生成は,本件発明1の方法によるほど生体組織を明確に区別するという作用効果を奏するものとはいえないものと解される。

 したがって,被告方法は,本件発明1の目的を達し,同一の作用効果を奏するとまではいえないものであるから,均等の第2要件を欠くものである。

均等論第5要件の判断事例

2012-10-17 22:23:05 | 特許法その他
事件番号 平成24(ネ)10035
事件名 特許権侵害差止等請求控訴事件
裁判年月日 平成24年09月26日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 部眞規子、裁判官 井上泰人、齋藤巌


ウ 第5要件
(ア) 前記(1)のとおり,本件明細書によれば,従来技術は一部のボクセルに関するデータを「間引いて」演算を行っていたため,可視化した画像において,生体組織間の微妙な色感や不透明感を表現することができなかったことから,上記課題を解決する手段として,本件発明1は,「全ての」前記平面座標点毎の前記色度及び前記不透明度を該視線毎に互いに積算し,当該積算値を当該各視線上の前記平面座標点に反映させることを特徴とするものである(【0006】~【0008】)。

 仮に控訴人が主張するように,従来技術に係る「間引いて」の反対語が「間引かずに」ということであれば,出願人において特許請求の範囲に「間引かずに」と記載することが容易にできたにもかかわらず,本件発明1の特許請求の範囲には,あえてこれを「全て」と記載したものである。このように,明細書に他の構成の候補が開示され,出願人においてその構成を記載することが容易にできたにもかかわらず,あえて特許請求の範囲に特定の構成のみを記載した場合には,当該他の構成に均等論を適用することは,均等論の第5要件を欠くこととなり,許されないと解するべきである。
(イ) 以上のとおりであるから,仮に控訴人の主張を前提とすると,客観的にみて,意識的に「全て」に限定したものと解され,均等の第5要件も充足しないこととなる。

先使用による通常実施権を認めた事例

2012-10-14 19:11:56 | 特許法その他
事件番号 平成23(ワ)29049
事件名 特許権に基づく製造販売差止等請求事件
裁判年月日 平成24年09月20日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 志賀勝、高野輝久
特許法79条

(4) サンテック用スカーフカッターに係る発明は,本件発明と同一の発明であると認められるところ,その発明をした被告の従業員を具体的に特定することはできないものの,被告はその発明をした従業員からこれを知得して,本件特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしていたものである。そして,被告が当時本件発明の内容を知っていたこと窺わせるような証拠は全くないから,このことに鑑みれば,被告は,本件発明の内容を知らないでその発明をした従業員からこれを知得したものと認められる。
そうすると,被告は,本件特許権について,先使用による通常実施権を有する。

特許を受ける権利の発生時点、従業員の退職と特許を受ける権利の帰属

2012-10-08 10:21:13 | 特許法その他
事件番号 平成23(ワ)40316
事件名 職務発明の再譲渡請求事件
裁判年月日 平成24年09月12日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大須賀滋、裁判官 小川雅敏、森川さつき
特許法35条

1 争点(1)(原告は,本件発明につき特許を受ける権利を有するか。)につい
て。
 ・・・
(3) この点に関し,原告は,特許庁における特許権設定登録前の時点においては,特許を受ける権利の承継予約が可能であるにすぎず,発明者である従業者が会社都合により退職した時点で上記承継予約は無効となる旨主張する。

 しかし,特許を受ける権利は,当該発明の完成と同時に発生し,当該発明の発明者に原始的に帰属するものであって,使用者等は,その発明が職務発明である場合には,契約や勤務規則その他の定めにより,予め,当該発明につき特許を受ける権利が使用者等に承継される旨を定めることができると解されるところ,本件において,沖電気が,「従業員等の発明取扱規程」において,職務発明につき特許を受ける権利を承継する旨定めていること及び本件発明につき特許を受ける権利が,上記定めに従い,原告から沖電気に承継されたことは前記(1)及び(2)でみたとおりである。本件発明につき特許を受ける権利の譲渡(承継)は,上記時点で完了しているものと解されるのであって,特許法35条の趣旨を考慮しても,上記譲渡(承継)が,発明者の退職によって無効となるものと解することはできない
 ・・・

2 争点(2)(不法行為の成否及び損害額)について
(1) 争点(1)に関する当裁判所の判断のとおり,本件発明につき特許を受ける権利は,原告から沖電気に有効に譲渡されたものと認められるところ,前記前提事実(2)カのとおり,被告は,沖電気から本件発明につき特許を受ける権利を承継し,特許庁に出願人名義変更届を提出したものであり,これにより,本件発明につき特許を受ける権利及び特許出願人たる地位は,被告に帰属したものと認められる。

 そうすると,被告は,本件発明に関し特許を受ける権利の権利者として,その管理処分を任意に行うことができるものというべきであり,特許法35条等の趣旨を勘案しても,被告が,その従業員の退職に当たり,当該従業員の職務発明につき,特許を受ける権利を返還したり,当該従業員を出願手続に関与させたりするべき義務は認められず,また,この点に関する定めを就業規則におくべき義務が被告にあるものとも認められない
 そうすると,被告の就業規則に原告の主張するような不備は認められず,また,本件発明の特許出願手続における前置報告書,審尋,拒絶理由通知書等を通読させ,これらにつき意見を述べる機会を設けなかったとしても,原告との関係で,違法性を有するものとは認められない。

特許法159条2項,50条に定める手続違背の違法

2012-09-30 20:22:35 | 特許法その他
事件番号 平成23(行ケ)10315
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年09月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗、古谷健二郎
特許法159条2項,特許法50条、特許法29条2項

 審判段階では,本件拒絶理由通知書(甲7)によって,本願発明は下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨の通知がされた。
 ・・・
この拒絶理由通知では,刊行物1(甲16)に記載された発明が主引用発明であり,刊行物2(甲10)に記載された発明は副引用発明として主引用発明への組み合わせが検討され,刊行物3,4は周知例として引用されている。
 本件拒絶理由通知書においても,特開2000-243132号公報(甲13)は示されておらず,突起部間の距離及び突起部の高さに関しては,「凸部間の距離をどのような値とするのかは,必要とされる導電接続の安定性,導電性粒子の直径,凸部の高さ等を考慮して当業者が適宜決定し得たものである。」と述べるにとどまる
 ・・・
(5) 相違点3に関する判断について
 審決が主引用発明として刊行物記載の発明を認定した刊行物(甲10)には,突起部を有する導電性粒子が記載されているが,甲10にはこの粒子の突起部間の距離に関しては記載されていない。そして,審決は,突起部間の距離の具体的数値に関して,甲13の記載のみを引用し,仮定に基づく計算をして容易想到性を検討,判断している。

 審決は,「回路部材の接続構造の技術分野において,隣接する突起部間の距離を1000nm以下とすることは,以下に示すように本件出願前から普通に行われている技術事項である。例えば」,として,甲13の記載を技術常識であるかのように挙げているが,その技術事項を示す単一の文献として示しており,甲13自体をみても,回路部材の接続構造の技術分野において,隣接する突起部間の距離を1000nm以下とすることが普通に行われている技術事項であることを示す記載もない
 ・・・
 してみると,審決は,新たな公知文献として甲13を引用し,これに基づき仮定による計算を行って,相違点3の容易想到性を判断したものと評価すべきである。

 すなわち,甲10を主引用発明とし,相違点3について甲13を副引用発明としたものであって,審決がしたような方法で粒子の突起部間の距離を算出して容易想到とする内容の拒絶理由は,拒絶査定の理由とは異なる拒絶の理由であるから,審判段階で新たにその旨の拒絶理由を通知すべきであった。しかるに,本件拒絶理由通知には,かかる拒絶理由は示されていない。
 そうすると,審決には特許法159条2項,50条に定める手続違背の違法があり,この違法は,審決の結論に影響がある。

発明の容易想到性を判断する前提としての発明の要旨認定

2012-09-04 23:17:49 | 特許法その他
事件番号  平成23(行ケ)10317
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年08月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 岡本岳,武宮英子
特許法70条1項、特許法70条2項、特許法29条2項

 発明の容易想到性を判断する前提としての発明の要旨認定は,原則として特許請求の範囲の記載に基づいてされなければならないところ,その用語は,その有する普通の意味で使用し,かつ,明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用しなければならない(特許法施行規則24条の4様式第29の2)。

 本件審決は,「嵌着」の意味を,広辞苑に記載された「嵌める」の意味とともに,訂正請求2による訂正後の明細書(以下,「訂正後明細書」という。甲54の2)段落【0033】の記載を参酌して,「くぼみに入れて固定し着ける」ことを意味すると解釈したものであるが,その解釈の方法は,「嵌着」の用語が「嵌めて着ける」ことを意味することは文言上明らかであるところ,同文言上の意味が上記段落【0033】から読み取れる「嵌着」の意味「くぼみに入れて固定し着ける」と整合することを確認したものと理解することができ,妥当なものというべきである。
 そして,甲13の3,4及び甲17の3,4には,内部の骨格に外皮を単に被せる構成しか開示されていないから,原告の主張は理由がない。


特許法施行規則24条の4
第二十四条の四  願書に添付すべき特許請求の範囲は、様式第二十九の二により作成しなければならない。

発明の要旨の認定(特許法70条1項)

2012-08-21 23:07:14 | 特許法その他
事件番号 平成23(ネ)10057
事件名 特許権侵害差止請求控訴事件
裁判年月日 平成24年08月09日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明,裁判官 八木貴美子,小田真治
特許法70条1項,2項

(1) 発明の要旨の認定について
ア 特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定について,特許法70条1項は「特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない」と,同条2項は「前項の場合においては,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする」と,規定する。
 特許権侵害を理由とする差止請求又は損害賠償請求が提起された場合にその基礎となる特許発明の技術的範囲を確定するに当たっては,「特許請求の範囲」記載の文言を基準とすべきである。特許請求の範囲に記載される文言は,特許発明の技術的範囲を具体的に画していると解すべきであり,仮に,これを否定し,特許請求の範囲として記載されている特定の「文言」が発明の技術的範囲を限定する意味を有しないと解釈することになると,特許公報に記載された「特許請求の範囲」の記載に従って行動した第三者の信頼を損ねかねないこととなり,法的安定性を害する結果となる。
 本件のように「物の発明」に係る特許請求の範囲にその物の「製造方法」が記載されている場合,当該発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物に限定されるものとして解釈・確定されるべきであって,特許請求の範囲に記載された当該製造方法に限定されることなく,他の製造方法をも含むものとして解釈・確定されることは許されない。

 もっとも,本件のような「物の発明」の場合,特許請求の範囲は,物の構造又は特性により記載され特定されることが望ましいが,物の構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときには,発明を奨励し産業の発達に寄与することを目的とした特許法1条等の趣旨に照らして,その物の製造方法によって物を特定することも許され,同法36条6項2号にも反しないと解される場合もある。そして,上記のような事情が存在することが立証された場合にあっては,発明の技術的範囲は,特許請求の範囲に特定の製造方法が記載されていたとしても,特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,「物」一般に及ぶと解釈され,確定されると解すべきである。

 そして,これを,特許権侵害訴訟における立証責任の分配の観点から整理すると,物の発明に係る特許請求の範囲に,製造方法が記載されている場合,特許請求の範囲は,その記載文言どおりに解釈するのが原則であるから,「発明の技術的範囲が特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されない」旨を主張する者において,「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難である」ことについての立証を負担すべきであり,その旨の立証を尽くすことができないときは,発明の技術的範囲を特許請求の範囲の文言に記載されたとおりに解釈・確定すべきことになる。