事件番号 平成23(行ウ)728
事件名 出願取下げを削除する手続補正書却下の処分に対する処分取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月20日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 その他
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 東海林保、裁判官 田中孝一,足立拓人
特許法195条9項,10項,11項
第2 事案の概要
1 本件は,原告らが,自ら行った特許出願について出願取下書を提出した後,特許庁長官に対し,同特許出願の審査請求手数料に係る既納手数料返還請求書を提出し,また,同出願取下書の全文を削除する旨の手続補正書を提出したところ,いずれも特許庁長官から却下処分を受けたことから,これらの処分が違法であると主張して,被告に対し,同手続補正書に係る却下処分の取消し(第1事件)及び同既納手数料返還請求書に係る却下処分の取消し(第2事件)をそれぞれ求める事案である。
・・・
第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件補正書却下処分の適法性)について
(1) 前記第2,2(1)ウのとおり,本件特許出願は,原告らが平成21年9月24日付け本件取下書を提出したことにより取り下げられているから,それに伴って,特許庁における本件特許出願に係る手続は終了したものと解される。
そうすると,その後に,原告らが本件取下書の全文を削除するとして提出した本件補正書は,特許庁に係属していない手続について補正をしようとするものであるから,特許法17条1項本文に反する不適法なものであり,かつ,その補正をすることができないものであったと認められる。
したがって,特許庁長官が特許法18条の2第1項に基づき本件補正書に係る手続を却下した処分(本件補正書却下処分)は,適法というべきであって,同処分の取消しを求める原告らの主張は理由がない。
・・・
2 争点(2)(本件返還請求書却下処分の適法性)について
・・・
(2) この点に関して,原告らは,被告が本件審査請求料を返還しないことが不当利得に該当する旨主張するが,前記(1)のとおり,原告らが納付した本件審査請求料の額は,法定どおりの適正額であったのであるから,その納付が法律上の原因を欠くものとはいえず,被告がこれを収受し,原告らに返還しないことが不当利得に当たるとは認められない。
また,原告らは,原告らが出願取下げに基づく出願審査請求料の返還請求権を過失で行使しなかったことが過誤であるから,過誤納に関する特許法195条11項の規定に基づいて返還請求ができるとも主張するが,同条項の「過誤納」とは,過大な額の手数料が納付された場合や,手数料を納付すべき理由がないのに手数料が納付された場合など,その手数料の納付が当初から法律上の原因を欠き,納付した手数料を被告が収受することが不当利得となるような場合をいうものと解されるところ,前記(1)のとおり,原告らが納付した本件審査請求料は適正額であり,それが不当利得に該当することはないのであるから,これを同条項の「過誤納」に当たると解する余地はない。
このことは,特許法が,過誤納に係る規定(特許法195条11項)とは別に,出願取下げに基づく出願審査請求料の返還請求について,同条9項の規定を設けていることからも明らかである。
事件名 出願取下げを削除する手続補正書却下の処分に対する処分取消請求事件
裁判年月日 平成24年07月20日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 その他
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 東海林保、裁判官 田中孝一,足立拓人
特許法195条9項,10項,11項
第2 事案の概要
1 本件は,原告らが,自ら行った特許出願について出願取下書を提出した後,特許庁長官に対し,同特許出願の審査請求手数料に係る既納手数料返還請求書を提出し,また,同出願取下書の全文を削除する旨の手続補正書を提出したところ,いずれも特許庁長官から却下処分を受けたことから,これらの処分が違法であると主張して,被告に対し,同手続補正書に係る却下処分の取消し(第1事件)及び同既納手数料返還請求書に係る却下処分の取消し(第2事件)をそれぞれ求める事案である。
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第4 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件補正書却下処分の適法性)について
(1) 前記第2,2(1)ウのとおり,本件特許出願は,原告らが平成21年9月24日付け本件取下書を提出したことにより取り下げられているから,それに伴って,特許庁における本件特許出願に係る手続は終了したものと解される。
そうすると,その後に,原告らが本件取下書の全文を削除するとして提出した本件補正書は,特許庁に係属していない手続について補正をしようとするものであるから,特許法17条1項本文に反する不適法なものであり,かつ,その補正をすることができないものであったと認められる。
したがって,特許庁長官が特許法18条の2第1項に基づき本件補正書に係る手続を却下した処分(本件補正書却下処分)は,適法というべきであって,同処分の取消しを求める原告らの主張は理由がない。
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2 争点(2)(本件返還請求書却下処分の適法性)について
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(2) この点に関して,原告らは,被告が本件審査請求料を返還しないことが不当利得に該当する旨主張するが,前記(1)のとおり,原告らが納付した本件審査請求料の額は,法定どおりの適正額であったのであるから,その納付が法律上の原因を欠くものとはいえず,被告がこれを収受し,原告らに返還しないことが不当利得に当たるとは認められない。
また,原告らは,原告らが出願取下げに基づく出願審査請求料の返還請求権を過失で行使しなかったことが過誤であるから,過誤納に関する特許法195条11項の規定に基づいて返還請求ができるとも主張するが,同条項の「過誤納」とは,過大な額の手数料が納付された場合や,手数料を納付すべき理由がないのに手数料が納付された場合など,その手数料の納付が当初から法律上の原因を欠き,納付した手数料を被告が収受することが不当利得となるような場合をいうものと解されるところ,前記(1)のとおり,原告らが納付した本件審査請求料は適正額であり,それが不当利得に該当することはないのであるから,これを同条項の「過誤納」に当たると解する余地はない。
このことは,特許法が,過誤納に係る規定(特許法195条11項)とは別に,出願取下げに基づく出願審査請求料の返還請求について,同条9項の規定を設けていることからも明らかである。