徒然なか話

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漱石俳句あれこれ

2023-08-17 18:20:02 | 文芸
 昨日も夕食後散歩へ。京陵中学校前の漱石記念緑道のベンチでひと休み。
 漱石句碑「すみれ程の小さき人に生れたし」を見るといつの間にかコスモスに覆われ、上半分しか読めない。もう季節は秋を感じる。
 この句と似たような自らを卑下するような句があったことを思い出し、家に帰ってから調べた。
それは
 「能もなき教師とならんあら涼し」という句だった。
 この句は漱石の熊本時代、漱石を主宰に寺田寅彦らが中心となっておこした俳句結社「紫溟吟社」が発行した俳誌「銀杏(いちょう)」に盛んに投句した井上微笑という俳人に宛てた漱石の手紙の中に書かれたものという。日付が明治36年6月17日というから、漱石がロンドン留学から帰国して半年足らず、東京帝大講師としての適性に疑問を感じていた頃と思われる。漱石の覚えめでたかった井上微笑という人は筑前秋月の生まれでこの手紙の当時は熊本県湯前村に住んでいたらしい。漱石の手紙にはこんな句も書かれていたという。
 「蝙蝠(かわほり)に近し小鍛冶が槌の音
 これは謡曲をお題とした漱石の句の一つで、「蝙蝠」は夏の季語で、こうもりが飛んでくるような夏の夕暮れに、鍛冶屋の槌音が響き渡っているという夏の風情を詠んだのだろう。
 今年の正月、Eテレで放送された喜多流の「能 小鍛冶」を録画していたことを思い出し、再見してみようと思った。 


京陵中学校前。漱石句碑



喜多流「能 小鍛冶」より。後シテ稲荷明神の香川靖嗣さんとワキ宗近の飯冨雅介さん


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