徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

最近読んだ本

2017-09-23 21:28:04 | 文芸
◆生死の境を歩む(狩野琇鵬)
 昨年7月、79歳で他界されたシテ方喜多流能楽師の狩野琇鵬さんが、生前、熊本日日新聞のコラム「わたしを語る」シリーズで連載された「生死の境を歩む」をまとめて単行本としたもの。新聞連載の内容に加えて、多くの写真が掲載されている。新聞連載も読んだのだが、こうしてまとめて読むと、しかも画像情報が加わるとまた違った新しさを感じ、一気に読了した。江戸時代初期から続いた細川家お抱えの絵師の家が、琇鵬さんの父上の代から能楽師に転じ、今日では熊本喜多流を支える狩野家を確立されるまでの様々なご苦労が綴られている。タイトルの「生死(しょうじ)の境を歩む」には、能の世界は生者と死者のはざまを描いている作品が多いことや、自らが生死の境に立たされた大病のご経験があることなどの意味が込められているようだ。僕が能に興味を持って観るようになった時、琇鵬さんはおからだの具合で既に第一線を退いておられたので、仕舞を舞われるのを2回ほど拝見しただけなのが残念でならない。

◆眩くらら(朝井まかて)
 NHKでドラマ化されて先日放送されたので原作を読みたくなった。読んでみてドラマとはまた違った印象を受けた。先に映像化されたものを見てしまっているので、どうもその印象をフィルターにしているようだ。ドラマでは葛飾応為の画風である光と影を強調するような映像づくりが行われていたが、原作を読んだだけではそうした色の濃淡が感じられないのでどうしても平板な表現に見えてしまう。やっぱり原作を先に読むべきだったかな。
 直木賞作家・朝井まかての作品は初めて読んだが、江戸の市井の人々を活き活きと丹念に描いているあたりは確かな力を感じる。このリアリティは、よほどしっかりした史料調査や時代考証を行なっているのだろう。直木賞を受賞した「恋歌」など他の作品も読んでみたい。また、この長編を70数分のドラマにまとめた大森美香の脚本も大したものだ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。