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脚本家・橋本忍が語る黒澤明~“七人の侍”誕生の軌跡~

2008-08-29 14:50:16 | 映画
 昨夜BS-2で放送された「没後10年 黒澤明特集 脚本家・橋本忍が語る黒澤明~“七人の侍”誕生の軌跡~」は、今、脚本を勉強している自分にとっても学ぶことの多い番組だった。橋本忍さん(90歳)は「羅生門」「生きる」「七人の侍」など黒澤明監督の作品のうち8本のシナリオを共同執筆した人で、今や数少ない黒澤監督および黒澤作品の生き証人である。「ある侍の一日」の企画に始まり、「日本剣豪列伝」を経て「七人の侍」の企画にいたるプロセスの話や、小国英雄さんを含めた3人での共同執筆の進め方の話、微に入り細を穿った黒澤監督の人物設定の話、撮影が延びに延びて会社から資金をストップされた時の対応の話などをとおして、黒澤監督がモットーとした「悪魔のように細心に!天使のように大胆に!」の意味が徐々に明らかになっていった。偶然か、その前日、昨年11月にハイビジョンで放送された「100年インタビュー 山田洋次監督」の再放送を見たが、その中で、晩年の黒澤監督と親しかった山田監督が、ある時黒澤監督の自宅を訪問したら、小津安二郎の「東京物語」のビデオを一人で一生懸命見ていたというエピソードが紹介された。全く作風の異なる小津作品も研究していたのだろう。
 橋本さんは、山田監督とも「砂の器」や「霧の旗」などで一緒に仕事をしているのでひょっとしたら、山田監督の「たそがれ清兵衛」は、黒澤監督や橋本さんが実現できなかったリアリスティックな「ある侍の一日」の話にインスパイアされたのではないかと勝手に推測した。
 昨夜の会場には映画づくりを目指している学生数十名が参加していたが、橋本さんへの質問が、ジェームズ・リプトンのアクターズ・スタジオ・インタビューに出てくるアメリカの学生より質問のレベルが低いように感じられた。最後に橋本さんが脚本づくりの秘訣として「とりあえず書き上げるまでは、自分の中にある批判力を消しなさい!」というアドバイスは、今行き詰っている自分にとって光明が見えた気がした。
(付記)
 米映画制作会社ザ・ワインスタイン・カンパニーが『七人の侍』をリメイクすると発表しているがどうなることやら。
 ちなみに、スティーブン・スピルバーグ監督が映画づくりの原点に戻る時、必ず見るのは次の4本だそうだ。
 ・七人の侍(黒澤明、1953)
 ・捜索者(ジョン・フォード、1956)
 ・アラビアのロレンス(デヴィッド・リーン、1962)
 ・素晴らしき哉、人生!(フランク・キャプラ、1946)


七人の侍(1953)

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