今日は朝から京陵中学校へ行って参議院選挙の投票を済ませた。帰り道、京陵中に沿った漱石記念緑道のベンチに座って漱石の句
「すみれ程の小さき人に生まれたし」
を眺めながら、テレビの俳句番組で有名な夏井いつきさんの漱石句評を思い出した。
――漱石の俳句でいちばん好きなのは、熊本時代に詠んだ「菫程な小さき人に生まれたし」です。こういう独白が作品になりうることと、そのかれんな心根に、衝撃を受けました。澄み切った感性が漱石という人間をぴーんと貫く核だったのかと思うと、猫でも坊っちゃんでもない漱石像が見え、惚れ直しました。――
これは2016年の「漱石記念年」に当り、熊日新聞に掲載された「熊本の漱石」と題するコラムに夏井いつきさんが寄稿された文の一部である。

漱石記念緑道(京陵中学校前)の漱石句碑
それはさておき、漱石の「草枕」のモチーフとなった小天温泉への山越えの道を、妻と二人で歩いてからもう16年の月日が流れた。もう一度チャレンジしたい気持はあったのだが、いかんせん体力は落ちる一方。車と歩きを併用しないと無理なようだ。
その「草枕」のベースとなった小天温泉への旅行だが、実は漱石は三度、小天温泉を訪れている。小説では主に、二度目の明治30年(1897)の暮れから31年の正月にかけての旅をもとに描かれているといわれる。
最後の三度目は、同じく明治31年の初夏、夏みかんが実る頃で、この時は早朝から日帰りで、いつも一緒の山川信次郎を含む5人連れ。小天湯の浦で昼食をとり、前田案山子の本宅を訪れた後、前田卓(那美さんのモデル)の案内で岩戸観音がある霊厳洞や鼓ヶ滝を見物し、鎌研坂を通って熊本に帰ったという。この三度目の小天旅行をうかがわせる話は今のところ「草枕」や他の小説にも見出せない。

鎌研坂(中間点)

岩戸観音が鎮座する霊厳洞

鼓ヶ滝
「すみれ程の小さき人に生まれたし」
を眺めながら、テレビの俳句番組で有名な夏井いつきさんの漱石句評を思い出した。
――漱石の俳句でいちばん好きなのは、熊本時代に詠んだ「菫程な小さき人に生まれたし」です。こういう独白が作品になりうることと、そのかれんな心根に、衝撃を受けました。澄み切った感性が漱石という人間をぴーんと貫く核だったのかと思うと、猫でも坊っちゃんでもない漱石像が見え、惚れ直しました。――
これは2016年の「漱石記念年」に当り、熊日新聞に掲載された「熊本の漱石」と題するコラムに夏井いつきさんが寄稿された文の一部である。

漱石記念緑道(京陵中学校前)の漱石句碑
それはさておき、漱石の「草枕」のモチーフとなった小天温泉への山越えの道を、妻と二人で歩いてからもう16年の月日が流れた。もう一度チャレンジしたい気持はあったのだが、いかんせん体力は落ちる一方。車と歩きを併用しないと無理なようだ。
その「草枕」のベースとなった小天温泉への旅行だが、実は漱石は三度、小天温泉を訪れている。小説では主に、二度目の明治30年(1897)の暮れから31年の正月にかけての旅をもとに描かれているといわれる。
最後の三度目は、同じく明治31年の初夏、夏みかんが実る頃で、この時は早朝から日帰りで、いつも一緒の山川信次郎を含む5人連れ。小天湯の浦で昼食をとり、前田案山子の本宅を訪れた後、前田卓(那美さんのモデル)の案内で岩戸観音がある霊厳洞や鼓ヶ滝を見物し、鎌研坂を通って熊本に帰ったという。この三度目の小天旅行をうかがわせる話は今のところ「草枕」や他の小説にも見出せない。

鎌研坂(中間点)

岩戸観音が鎮座する霊厳洞

鼓ヶ滝