徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

映画「捜索者」と今日のアメリカ

2007-08-11 13:58:58 | 映画
 アメリカ映画協会が10年ぶりに発表したベスト100について、納得がいかないというようなことを6月29日に書き込んだ(参照)。実は一つだけ「なるほどな…」と思った順位変動がある。しかもそれは、前回96位から12位へと、今回最も激しくランクアップした作品だ。それは1956年に作られたジョン・フォード監督の「捜索者」だ。なるほどと思ったのは私がジョン・フォードのファンだからではない。数あるジョン・フォード作品の中でも最上位にランクされたが、もし日本人がランキングをしたら、こんなことは絶対ありえないだろう。それをなぜ、なるほどと思ったかというと、この映画の主人公がまさに今日のアメリカを象徴するような人物だからである。映画のあらすじは、先住民(今日ではインディアンと言ってはいけないらしいので、あえてこう呼ぶが…)に兄夫婦の一家を惨殺された男が復讐の鬼と化し、コマンチ族(さしずめアルカイーダ)の酋長スカー(さしずめビンラディン)と拉致された姪を捜して放浪するというものだ。この主人公イーサン・エドワーズ(このキャラクタ名はアメリカではシェーンなどと同じくらい有名だそうだ)を演じるのが、ハリウッドでも超タカ派として知られていたジョン・ウェインだ。フォードはこの、目的を達成するためには手段を選ばないイーサンという男を否定も肯定もしていない。あえて観客がこの男に共感を抱かないように描いているようにも見える。そして、結局、酋長スカーを仕留めるのは先住民との混血で、イーサンと激しく対立する甥のマーティン(ジェフリー・ハンター)だったという皮肉な結末も用意されている。この映画は既に10回以上も観ているが、9.11以降のアメリカのヒステリックな復讐劇を思い起こしながら今一度観てみることにしよう。