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徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

荷物にならない伊勢土産

2023-06-11 20:11:37 | 伝統芸能
 今朝の日テレ「シューイチ」では「日本のおみやげ文化」について取り上げていた。そして「おみやげ文化」が始まったのは江戸時代中期から後期にかけて起きた「お伊勢参り」ブームによるものだと解説していた。
 「お伊勢講」によってやって来た参詣者にとって、村に残った人たちへ手ぶらで帰るわけにもいかなかったのだろう。しかし、鉄道が敷かれた明治以降はともかく、江戸時代の移動手段は専ら徒歩。たとえば熊本から「お伊勢参り」へ行くには片道だけでひと月を要する。保存がきかない食べ物は持って帰れないし、乏しい予算では買えるものも限られていただろう。そこで「伊勢暦」などとともに「荷物にならない伊勢土産」としてが喜ばれたのが「伊勢音頭」。伊勢に滞在している間に宿や花街で聞き覚えた「伊勢音頭」を故郷へ持ち帰るのである。こうして「伊勢音頭」は日本全国に伝播し、祝い歌・祭り歌・踊り歌・座興歌・宴席歌・労作歌などとして様々な形に変化しながら唄い継がれた。


歌川広重「伊勢参宮 宮川の渡し」

 この「荷物にならない伊勢土産」である「伊勢音頭」をモチーフに、本條秀太郎さんが俚奏楽として創作したのがこの「俚奏楽 伊勢土産」。

2020.2.2 くまもと森都心プラザホール 第55回熊本県邦楽協会演奏会
三味線・唄 本條秀美
  三味線 本條秀咲・蒲原サヤ子・松本美恵子・高木テイ子・平田三枝子
      立石松子・渡辺幸子・麻生美子・前田璃奈
    唄 原田靖子・斉藤省子


 「伊勢音頭」は数多の民謡の中でも人気が高く、下の映像もアクセス数は常に上位にランクされる。

2012.5.26 熊本城本丸御殿 春の宴
振付:中村花誠
立方:ザ・わらべ
地方:(唄)本條秀美
  (三味線)本條秀美社中
  (囃 子)中村花誠と花と誠の会

牛深ハイヤ節にまつわる話(2)

2023-04-13 22:29:42 | 伝統芸能
 3月25日にNHK九州・沖縄で放送された「キミだけ応援団」で紹介された「牛深ハイヤ」を伝承する牛深高校郷土芸能部の活動をこのブログで取り上げた。番組の中で、高校生を指導する牛深ハイヤ保存会のメンバーが歌詞の意味を教える場面があった。それは
「お前さんに暇状(ひまじょう)はやいもせんが取いもせん」という長囃子の一部だった。これは「あなたに離縁状をやりもしないし、もらいもしない」という意味だと説明していた。意味はわかるのだが、どういう状況なのかの説明はなかった。
 この長囃子には「権現山から後ろ飛びゃするとも」という前段がある。天草の久玉町と魚貫町にまたがる権現山という400㍍くらいの山がある。その山の断崖から飛び降りるという意味。「清水の舞台から後ろ飛び」がもとになったと思われるが、重大な決意をもって行動を起こす時の常套句だ。わが熊本にも「ええもさいさい 百間石垣後ろ飛び」という追い詰められた盗賊が熊本城の百間石垣から飛び降りたという伝説が残っている。この「後ろ飛び」と言うのは、飛込競技で言う「後ろ飛び」ではなく、飛び降りることを大げさに表現したものらしい。
 つまり、「エーサ 権現山から後ろ飛びゃするとも お前さんに暇状はやいもせんが取いもせん」という長囃子は「どんな困難があろうとあなたのことを見捨てませんよ」という意味の比喩表現だと思われる。
 そんな表現が使われる背景は、昭和2年に出版された民俗学者・宮武省三のルポ「習俗雑記~牛深女とその俗謡について」に書かれており、このブログに転載したことがあるので、興味のある方はぜひご一読いただければ幸いである。

 牛深女とその俗謡について(1)2012.7.7
 牛深女とその俗謡について(2)2012.7.11


牛深港

   6´20″から次の歌詞が歌われます。
ハイヤエー沖の 瀬の瀬にドンと打つ波はエー あれは船頭さんの サーマ 度胸さだめヨー
エーサ 権現山から後ろ飛びゃするともお前さんに暇状はやいもせんが取いもせん

男なら ~女ながらも武士の妻~

2023-03-29 16:28:33 | 伝統芸能
 民謡歌手「水野詩都子」さんと三味線演奏家「﨑秀五郎」さんのコンビ「しずごろう」によるチャンネル「しずごろう民謡わがままチャンネル」の最新アップ曲は山口県民謡「男なら」です。

 この「男なら」は文久3・4年(1863・1864)に攘夷思想にはやる長州藩と英仏蘭米の列強4国との武力衝突事件、いわゆる「馬関戦争」の際、外国船の攻撃に備え、萩の菊ヶ浜に土塁を築いた武家の妻女たちによって唄われた作業唄だと伝えられています。「おなご台場」とも呼ばれるこの土塁を築いた女たちの唄が「男なら」なのです。ですからこの唄はやっぱり女性に唄っていただきたいと思います。

 この唄の節は「二上り甚句」系といわれています。NHKの「民謡魂 ふるさとの唄」では「二上り甚句」系の民謡として次の5曲が挙げられていました。
  • 酒田甚句(山形)
  • 名古屋甚句(愛知)
  • 日高川甚句(和歌山)
  • 男なら(山口)
  • おてもやん(熊本)


毎年2月、萩観光シーズン開きで披露される「男なら」(萩城趾指月公園)


 この「男なら」を僕が初めて聞いたのは、高校3年生だった昭和38年の山口国体の時でした。宿舎となった美祢市の旅館で地元の女性の皆さんが、この唄と踊りを披露されました。それ以来、僕にとって山口県の民謡と言えば「男なら」なのです。
 ところが、10年ほど前、久しぶりに「男なら」を聴きたくなってYouTubeで探したのですが、出てくるのは「よさこいバージョン」ばかり。少々頭にきて、山口県文化振興課に、いったいホンモノの「男なら」はどこで聴けるのか、とクレームまがいのメールを送りました。担当者もこちらの趣旨を理解されたようで、県内の関係団体などを調べ上げた懇切丁寧なお返事のメールをいただきました。そのメールに添付されていたのが上の「萩城趾指月公園」の写真です。


土塁を築いた菊ヶ浜(萩市堀内)


菊ケ浜 御台場の碑

キミだけ応援団 ~牛深高校郷土芸能部~

2023-03-25 20:21:23 | 伝統芸能
 今朝、NHK総合の九州・沖縄で放送された「キミだけ応援団」は郷土の伝統である“牛深ハイヤ”を守る熊本県立牛深高校郷土芸能部の活動にスポットを当てた。
 天草伝統の唄と踊り“牛深ハイヤ”を守る牛深高校郷土芸能部は、全国高校総合文化祭に25回出場し、日本一に輝いたこともある名門。しかし現在は少子化の影響で生徒数が減少し、存続の危機にある。そんな郷土芸能部は、晴れ舞台である全国高校総合文化祭への出場を目指し猛特訓中。熊本県代表選考会に臨むメンバーを、お笑い芸人しゃかりきの二人が応援に訪れる。(初回放送:2023年1月)
 この放送を見ながら、昨年7月29日のブログに次のような記事を投稿したことを思い出した。

 今日の熊日電子版に、3年生が卒業し部員ゼロとなった牛深高郷土芸能部に16人が入部。31日に初舞台を迎えるという記事が載っていた。
 6月2日に行われた熊本県高校総合文化祭パレード・郷土芸能部門の常連である牛深高郷土芸能部と鹿本農高郷土芸能伝承部が妙に寂しかったことが気になっていた。
 牛深高については今日のニュースで事情がわかってホッとした。一方の鹿本農高も31日から東京で始まる「とうきょう総文2022(第46回全国高等学校総合文化祭)・郷土芸能部門」に出場することが決まっているので部員も揃ったのだろう。郷土芸能は伝統を繋いでいくことが大変だと聞く。両校とも頑張ってまた次の世代に繋いでいってほしい。


 今日の番組を見て、牛深高郷土芸能部や鹿本農高郷土芸能伝承部を始め、郷土芸能の伝承に励む各学校の生徒たちを応援しなければという気持がより強くなった。


熊本県代表選考会における牛深高校郷土芸能部


役者寺と熊本能楽の行く末

2023-03-23 21:50:51 | 伝統芸能
 一昨日、花園公民館図書室へ借りていた本を返しに行ったついでに本妙寺の桜の開花状況を見に行った。ソメイヨシノはまだまだの状態だったが、本妙寺大本堂や塔頭・東光院の枝垂桜は見ごろになっていた。桜馬場を歩いていると塔頭・妙心院の本堂に入って行く人が数人見えた。遅れてきた一人の女性に声をかけてみると「彼岸の法要」があるのだという。数年前、この本堂で金春流中村会の仕舞や連吟を見たことを思い出した。
 この妙心院は別名「役者寺」と呼ばれている。その由来について入口の標柱には次のように書かれている。

――当院は、慶長年間に加藤清正公に伴われて来熊した太閤旧家臣で金春流武家能役者中村靭負(五百石)、嫡子同伊織(細川忠利より千石)、分家同作左衛門(二百石)及び江戸時代初期から共に活躍した友枝家、小早川家の菩提寺である。――

 墓地には明治維新後存続の危機にあった肥後の能楽を支えたシテ方喜多流能楽師・友枝三郎の墓や和泉流狂言方・小早川家累代の墓などもある。

 そんなことを考えていると、ふとその前々日に見た熊本城薪能のことを思い出した。この数年、熊本城薪能は観世流が仕切ることになっているようだが、今、熊本の観世流を実質的に支えているのは菊本澄代・美貴の姉妹。たしかにお二人とも上手だとは思うが、見終わってから今一つ物足りなさが残った。7年前に喜多流の狩野琇鵬先生が亡くなられてから熊本の能楽が下火になっているような気がしてならない。


本妙寺大本堂と枝垂桜


妙心院(役者寺)

民謡魂 ふるさとの唄 ~富山県砺波市より~

2023-02-05 21:24:22 | 伝統芸能
 今日の「民謡魂 ふるさとの唄」(NHK-G)は富山県砺波市からの放送。富山県を中心に石川県、福井県の北陸地方の民謡が紹介された。全国的に有名な「越中おわら節」や「こきりこ節」「山中節」など、この地方はまさに民謡の宝庫と言えそうだ。今日演奏された曲目は
 越中おわら節/加賀ハイヤ節/三国節/五箇山追分/チューリップ乙女
 といちんさ節/能登麦屋節/麦屋節/お小夜節/こきりこ
 こきりこ節/山中節/帆柱起こし音頭


 なかでも全国的に郷土芸能の実力校として知られる南砺平高校郷土芸能部の「こきりこ」などが特に印象に残った。

南砺平高校郷土芸能部 五箇山民謡

戻りにゃ本土瀬戸徒歩わたり

2023-02-01 19:21:06 | 伝統芸能
 今日、NHKのローカルニュースで、天草市の本渡道路(天草未来大橋)が完成間近だと言っていた。FBに「市政だより天草」の紹介があったので最新号を天草市のサイトで見てみたら次のように書かれていた。

 熊本都市圏と県内主要都市を90 分で結ぶ「90 分構想」の実現などを目的に進められている熊本天草幹線道路。この区間の一つとして、平成25 年に着手した本渡道路(天草未来大橋)と、それにつながる本渡令和橋が2月25日に開通します。天草上島と下島をつなぐ新しい橋として多方面での効果が期待されています。

 かつて天草市の本渡には仕事で度々、上島と下島を結ぶ天草瀬戸大橋を渡った。熊本天草幹線道路が完成すれば熊本から行きやすくなる。
 ところで天草と言えば「牛深ハイヤ節」だが、この唄の象徴的な長囃子に

〽エーサ 牛深三度行きゃ三度裸
  鍋釜(なべかま)売っても酒盛りゃしてこい
   戻りにゃ本土瀬戸(ほんどせと)徒歩(かち)わたり

 この最後の「戻りにゃ本土瀬戸 徒歩わたり」というフレーズがずっと気になっていたのだが、「市政だより天草」の中に「せど橋今昔物語」というページがあり、橋ができるまでの「徒歩わたり」の様子が写真付きで解説されていて「牛深ハイヤ節」の歌詞も納得した。






今年の能・狂言は…

2023-01-17 22:21:35 | 伝統芸能
 昨年はとうとう能を見る機会がなかった。仕舞や舞囃子は何度か見たのだが、装束を着けた正式な能は見ることができなかった。今年も正月の松囃子は藤崎八旛宮の初詣の時に見たのだがどうなることやら。
 今月は大江幸若舞や久留米座能など見たい催しが続くのだが、百歳の母が目を離せない状態なので行けそうもない。
 今思えば、2021年3月に水前寺成趣園能楽殿で行われた「翁プロジェクト」は、コロナ禍の中、よくやってくれたなと思う。「翁」は前から最も見たかった演目で、これまで一度も見たことがなく、生きているうちに見るチャンスはあるだろうかと思っていたので「翁プロジェクト」が予定通り開催されたことは何よりも嬉しかった。
 コロナ禍もいまだ油断できない状態が続いているし、先の見とおしも予断を許さないが、せめて1年に一番でも能を見ることができれば嬉しいのだが。


小鍛冶のはなし。

2023-01-04 20:04:52 | 伝統芸能
 元日の早朝、Eテレで「新春能狂言 能『小鍛冶 白頭』~喜多流~」が放送された。起きる自信がなかったので録画しておき今日になって見た。「小鍛冶」を全編通して見たのは初めて。前シテ童子、後シテ稲荷明神を香川靖嗣さん、ワキ宗近を演じるのが飯冨雅介さん。実は、僕が能を見始めて10数年になるが、その間、最も多く見ているのがワキ方高安流の飯冨雅介さんだ。この方が登場すると何だか安心感が湧く。物語は

 平安時代の刀匠として名高い三条宗近は帝の霊夢により新たな剣を作ることを命じられるが、しかるべき相槌を打つ者がいないことに困り、氏神の稲荷明神に祈願する。 現れた稲荷明神の化身である狐の力を借り名刀・小狐丸を作り上げる。稲荷明神の化身を白髪・白装束にし、「狐足」という独特の足運びを見せるという小書き(特殊演出)。

 非常にシンプルなお話で分かりやすかった。見た後ふと、夏目漱石の謡曲俳句の中に「小鍛冶」もあったことを思い出した。
 「蝙蝠(かわほり、こうもり)に近し小鍛冶が槌の音」
 「蝙蝠」は夏の季語なので、こうもりが飛んでくるような夏の夕暮れに、鍛冶屋の槌音が響き渡っているという夏の風情を詠んだのだろう。


後シテ稲荷明神の香川靖嗣さんとワキ宗近の飯冨雅介さん

今年も「敦盛」が強かった!

2022-12-28 20:56:58 | 伝統芸能
 YouTubeマイチャンネルの今年の最多再生回数動画は、昨年に引き続き「幸若舞 敦盛」(12月27日現在 33,953回)になることがほぼ確定した。2015年に初めてアップして数年の間、再生回数は毎月数回にとどまっていたことがウソのようだ。
 幸若舞は中世芸能の一つで、舞とはいえ単純な動作の繰り返しで、語りがとても重要な芸能。中でも最も人気の高い「敦盛」の字幕版を2017年にアップしたことが再生回数の大幅増加につながったと思われる。幸若舞の詞章を記した「舞の本」が公開されているのは大いに助かった。
 今日では福岡県みやま市瀬高町に唯一残る幸若舞は、毎年1月20日に大江天満神社幸若舞堂で奉納が行われる。


大江幸若舞(大江天満神社幸若舞堂)

   ▼2022年・2021年の最多再生回数動画「幸若舞 敦盛」


   ▼2020年最多再生回数動画「ひえつき節」

熊本城と能「白田村」

2022-12-08 20:09:34 | 伝統芸能
 文化庁は日本の文化芸術の振興を図り、その魅力を発信するため、能楽協会とともに、“能楽を通した日本の再発見”をコンセプトとしたデジタルコンテンツ「能楽を旅する」の企画として、「日本の名城 × 能楽」をテーマとした特設サイトを公開している。
 その中には「熊本城 × 能楽」も含まれているが、近く能楽の映像として喜多流の能「白田村」が公開される。「白田村」は物語は「田村」と同じだが、シテである坂上田村麻呂の神格化を一層際立たせるため、白を基調とした装束にするという喜多流特有の小書き(特別演出)なのだそうだ。「田村」はこれまで何度も見た能で馴染みもあり、個人的にはわが父の思い出の曲でもあるので、「白田村」のイメージがどう変わるのか楽しみだ。


上の画像をクリックすると「能楽を旅する」のサイトへジャンプします。



わが父が幼い頃、思い出の曲「田村」に出会った細川家立田別邸(泰勝寺跡)

金春流の「田村」

四海波からの~阿蘇神社

2022-12-06 21:42:00 | 伝統芸能
 RKK熊本放送で再放送中の「水戸黄門」は今日、第1部の最終話「水戸の白梅」を放送した。黄門様は東野英治郎、格さんは横内正、助さんは杉良太郎という初期メンバー。話は諸国漫遊から水戸に帰った御老公一行、御老公は大日本史の編纂に勤しむ。助さんは城代家老の引退騒動に巻き込まれたりしながら、格さんは城代家老の娘との婚礼が行われる。助さんは「四海波」の謡で祝う、といった内容。
「四海波」というのは謡曲「高砂」の一節で、天下泰平を言祝ぐ詞章なので婚姻や祝賀の席で謡われることが多い。一般的には「四海波」の少し後に謡われる「高砂や この浦船に帆を上げて」の方が婚礼などでお馴染みだが、こちらは阿蘇神社の神主友成一行の道中を謡っていて特に言祝ぎの詞章ではない。
 ところで阿蘇神社といえば、来年末にシンボルである楼門の再建完成を待つのみとなった。既に他の社殿等は復旧を終えており、全面復旧が待ち遠しい。


今年9月の阿蘇神社楼門上棟祭

   ▼謡「四海波」

   ▼能「高砂」より「高砂や」

没後10年 中村勘三郎

2022-11-30 17:52:11 | 伝統芸能
 明日から早くも師走。今年の一年もあっという間に過ぎ去りそうだ。
 12月5日は十八代目中村勘三郎さんの没後10年。近頃、あらためてその存在が大きかったことを感じる。といってもナマの舞台を見たのは1回しかない。2004年、勘三郎を襲名する前、「五代目中村勘九郎名跡最後の錦秋特別公演」が熊本市民会館で行われた時だった。しかし、勘三郎さんほど、子役時代から大役者となるまで見続けた歌舞伎役者は他にいない。出演された数々の映画やドラマが思い出される。


熊本公演でも演じられた「連獅子」

勘九郎・勘太郎・七之助の親子共演による「連獅子」

 勘三郎さんが残した忘れられない言葉がある。それは常に斬新な視点から歌舞伎に取り組んだ彼の言葉だった。

 「もし、江戸時代にギターやヒップホップがあったら、間違いなく歌舞伎に取り入れているよ。歌舞伎ってそういうものなんだよ」

 大正11年出版の「江戸時代創始期」(西村真次著)という古書に書かれた「歌舞伎踊りの発生」によれば、今日の歌舞伎の原点である出雲阿国が始めたと伝えられる歌舞伎踊りに、既に欧羅巴(ヨーロッパ)の影響が見られると書かれている。
 歌舞伎というのは、「傾き(かぶき)踊り」と呼ばれ、初代中村(猿若)勘三郎が活躍していた草創期から、新しいものを積極的に取り入れる体質があり、そのDNAは今なお受け継がれているということなのだろう。


映画「やじきた道中てれすこ」(2007年)

▼テレビドラマの代表作 大河ドラマ「元禄繚乱」(1999年)

「かっぽれ」が結ぶ縁(再掲)

2022-11-28 20:42:13 | 伝統芸能
 今日は、何年たっても忘れない記事の第2回。
 3年前になりますが、舞踊団花童が踊る「かっぽれ」の映像と音源が静岡県掛川市のお祭りでお役に立ったということがありました。遠く離れた地域との芸能を通じた交流は忘れられない思い出になりました。

「かっぽれ」が結ぶ縁(2019.7.29)

 盆踊りのシーズンになりました。東海地方のある町からこんな依頼が来ました。
-- YouTubeにアップされている舞踊団花童の「かっぽれ」を地区の盆踊りに使いたい。ついては音源を提供いただきたい。--
というものです。ご依頼主は花童の隠れファンのようです。さっそく音源を作成された中村花誠先生にお願いして音源をコピーしていただき、提供することになりました。既にYouTubeの映像を見ながら振りもだいぶ練習されているようです。4年前、細工町の西光寺で行われたはつ喜月若さんの名取披露で撮影した映像が、遠く離れた町の盆踊りでお役に立っていることに不思議な感動を覚えました。

「かっぽれ」が結ぶ縁(その後)(2019.10.17)

 YouTubeにアップされている舞踊団花童の「かっぽれ」を地域の祭りで踊りたいので音源を提供いただきたい、という依頼があったのは7月下旬のことでした。静岡県掛川市のKさんからのご依頼でした。さっそく音源を作成された舞踊団花童の中村花誠先生にお願いして音源をコピーしていただき、Kさん宛て送付したのは8月に入った頃でした。実はその前からYouTubeの映像を見ながら振りの練習を始めておられたようですが、オリジナルの音源が届いてから本格的なグループ練習が始まったようです。「かっぽれ」を披露する本番となる祭りが予定されていたのは10月11・12・13日でしたが、静岡県はちょうど台風19号が通過するコース。祭の開催はおそらく難しいだろうと思っていましたが、なんと踊りを披露する13日には天気に恵まれ、Kさんの伊達方地区の皆さんは3ヶ月にわたり重ねてきた練習の成果を発表できたそうです。その時の映像(下記参照)を拝見しますと、皆さんがよく練習を積まれたことがわかり感動します。こういう形で遠く離れた町との文化交流ができたことは貴重な体験となりました。

《Kさんからのお便り》
 台風19号も通りすぎ、東日本では大きな被害がでていますが静岡県は他県に比べると被害も少なく、11日・12日・13日の三日間のお祭りのうち最終日の13日の踊りを披露するお祭り広場を開催する事ができました。8月から練習を始めて10月までの3ヶ月間本格的な踊りに戸惑い、はじめは皆この踊りの振付を覚えるのに精一杯で曲のスピードに全くついていけませんでした。しかし練習を重ねると少しずつスピードにもついていけるようになり、何とか踊りを踊れるようになりました。今回台風で祭典自体開催が危ぶまれた中、何とか自地区には災害がなっかったので無事に祭典が開催できました。花童さんには及びませんが地区民で精精一杯踊りましたYouTubeに動画をアップロードしたので見てください。今回は本当にありがとうございました。

   ▼縁を結んだ映像
2015年10月、細工町の西光寺で行われたはつ喜月若さんの名取披露における「かっぽれ」

静岡県掛川市伊達方地区の皆さんによる「かっぽれ」練習の成果

梅林天満宮秋季例大祭

2022-11-25 20:58:16 | 伝統芸能
 今日は玉名市の「梅林天満宮例大祭」が行われました。四百年の歴史を持つといわれる「鏑流馬」(熊本県指定重要無形民俗文化財)や、太宰府天満宮の巫女舞や地元の神楽保存会による神楽などが奉納されました。
 今年は妹夫婦の住む地区が節頭区と呼ばれる祭の世話役のため準備が大変だったようです。また、甥は鏑流馬の「仲間(ちゅうげん)」役として他の関係者とともにしきたりの「精進小屋」に入ったり、祭本番では四百㍍の馬場を何往復も駆けなければならなかったりと大変だったようです。


五穀豊穣、万民息災を祈念する天長地久の儀


射手が狙う的の向こうには新幹線が走る


太宰府天満宮の巫女舞


今年は西向きに舞台が設えられ、背景に木葉山に連なる山々が