虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

父親たちの星条旗(2006/アメリカ)

2006年10月31日 | 映画感想た行
FLAGS OF OUR FATHERS
監督: クリント・イーストウッド
出演: ライアン・フィリップ    ジョン・“ドク”・ブラッドリー
   ジェシー・ブラッドフォード     レイニー・ギャグノン
   アダム・ビーチ      アイラ・ヘイズ
   ジェイミー・ベル     ラルフ・“イギー”・イグナトウスキー
   バリー・ペッパー     マイク・ストランク

 日本軍との激戦の地、硫黄島で星条旗をたてた6人のアメリカ兵の写真が有名になり、生き残った3人の兵士はアメリカへ帰り戦時国債の売り込みキャンペーンに使われる。

「我等の生涯の最良の年」は暖かくて純朴なドラマだった、と思い出した。
 今のアメリカの抱えている戦争と違って、太平洋戦争は実際「よい戦争」で正義が勝ったはずのものだ。しかしどちらも実際戦っているものたちには不条理で圧倒的な暴力である。

 痛ましい思いの疼きと、涙が止められない2時間だった。
 実際、私の知っている戦争に行った人は、戦場のことを語らなかった。そして息子を戦争で無くした曾祖母は、靖国に行ったことはなかったが、戦後数十年経ったある日勲章が届き、号泣していた。もちろん一片の骨さえ帰ってはこなかったのだが。そばにいた者にも、その悲しみの奥底までは知ることは出来ないのだろう。
 兵士はなぜ戦えるのか、なぜ進んでいくことができるのか、現場に行くことが無いものにはすべては分からないのだろう、今アフガンやイラクで問われていることも現場にいなくてはわからない何かがあるのだろうなどと、凄惨な戦場シーンにすくみながら、でも安全な場所であくまでエンタテインメントとして見ていることをどこかで考えてしまいました。だってこの映画見ながらずっと泣いていたけど、やっぱり後味の悪い涙じゃない。主人公を都合のいいように利用する国とか軍隊とか、当面のヒーローを無理やり求める大衆に対してはともかく、人間性についての信頼はあまりガタガタしない。

 それにしてもイーストウッドは歯軋りしたいくらい老獪な監督であると思う。この映画は素材も撮りかたもオーソドックスで、フラッシュバックや、アイスクリームの上のイチゴソースの色など言ってみれば手垢がついた、お定まりのやり方だと思ってもなお乗せられてしまう。音も実に息があう、という感じがする。132分が短い。

 美しいアダム・ビーチがおっさんに差し掛かってたのが少し悲しかった。

 12月の日本側からの映画「硫黄島からの手紙」で栗林中将にもっと関心が集まるといいのに、と期待している。以前「散るぞ悲しき」という中将についての本を読んで感動した。日本人はケネディ大統領に上杉鷹山の日本での知名度を上げてもらったそうだが、イーストウッドがこの映画を撮ることになって良かったと思う。もっと日本人に知ってほしい人。